30代ではまった若手俳優の沼、気づけば10人に…「推し」が溶かしてくれた「自己肯定感」の呪い

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2021年05月31日 07:00  ウィズニュース

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写真横川さんの持っている写真集。「いい芝居をしている俳優がいるなぁと思うと、チップ感覚で買ってしまいます。ほら、写真集って俳優本人に入る収入も良さそうじゃないですか…知らんけど」と笑います=本人提供
横川さんの持っている写真集。「いい芝居をしている俳優がいるなぁと思うと、チップ感覚で買ってしまいます。ほら、写真集って俳優本人に入る収入も良さそうじゃないですか…知らんけど」と笑います=本人提供

SNSに流れてくる友人たちの近況、仕事の成果、結婚や転職の報告――。ついついチェックしては、自分の現状と比較してしまう。そんな環境に息苦しさを感じることもあるなか、自分の大好きなものに没頭できる「推し」が救いになる人がいます。他者に愛情を注ぐ喜びに気づき、「自分のことを好きにならなきゃ」という呪縛を解きほぐしてくれた「推し」。自己肯定感にまつわる悩みから、「推し」の効用について考えます。(withnews編集部・水野梓)

〈Key Issue(キーイシュー)〉めまぐるしく変わる時代のトレンドを「Z世代」「メディア」「子育て」「健康」などの分野で取材を続ける専門記者が読み解きます。

【画像】写真集はチップ感覚、円盤はご祝儀、劇中で着ていた衣装も…イケメン俳優沼のオタクのグッズ

SNSで自分と誰かを比較してしまう
友人の結婚や出産、仕事の成果の報告は本当におめでたいこと。でも、自分の仕事やプライベートがうまくいっていなかったり、落ち込んだりしているタイミングでは、心から「いいね」できない時があるのも事実です。
SNSで常時、誰かとつながっていることが当たり前になって、自分の現状とキラキラした誰かの成功を「比較」してしまう。それが新たな悩みになってしまう現実があります。

2021年1月に『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)を著したライターの横川良明さんも、そんな一人でした。

【横川良明(よこがわ・よしあき):1983年生まれ、大阪府出身。番組制作会社のAD、求人広告の営業を経て、2011年よりフリーランスのライターとして独立。現在、ドラマ、演劇、映画を中心に多数のインタビューやコラムを手掛けている。2021年1月に『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)を出版。Twitterは「@fudge_2002」。】

「人の成功をひがんで妬んでいた」
「自己肯定感」という言葉を朝日新聞のデータベースで調べると、1993年の関西の紙面に講演名として初めて登場します。
内閣府は2013(平成25)年、日本を含めた7カ国の満13〜29歳の若者を対象とした意識調査をおこなっています。結果は「諸外国と比べて、自己を肯定的に捉えている者の割合が低い」と報告されています。
この調査について識者は、「自分への満足感」には「自分は役立つ存在であるか否か」といった自己認識が関係していると指摘します。その後、「日本人の自己肯定感が低い」根拠としてこの調査結果が広く引用されていきます。

今は「推し」のおかげで日々を忙しく楽しんでいる横川さんですが、数年前は「とにかく人の成功をひがんで、妬んでばかりいました」と振り返ります。
仲のよかった友人たちが一気に結婚したり出産したりして、昔のように遊びにいく回数が減り、「時間ができて、SNSで幸せそうな人を見て落ち込んでしまう。ライターなので、バズってる記事を見ても呪いたい気持ちになって、その人は全く悪くないのに『なんでこんな記事が』と嫉妬にまみれていました」。

当時の30代前半という「年齢による焦り」みたいなものもあったそうです。
「『こんな年齢になったんだから何か名を成さないといけないんじゃないか』というプレッシャーもあって、本来嫉妬する必要もないはずの全く違う畑のライターにも悶々とした思いを抱えていました」

「沼に落ちた」のは数年前
小さな頃は香取慎吾さんが大好きだったという横川さん。5年ほど前、普段から「かっこいいな」と思っていた俳優の舞台を観にいって、「若手俳優の沼に完全に落ちた」といいます。
「今だから言える話ですが、以前はイケメンが出る舞台に対しネガティブな偏見を持っていたんです。けれど、今の推しが出ている舞台を観て、その才能に引きずり込まれ、心の底から火を付けられた感じでした」

「推しの友達は推し」というマインドから、どんどんと「推し」が増えていき……タイの俳優沼にハマったことも。「写真集は必ず買う&生の舞台を必ず観にいく」という推しは現在、10人ほどいるそうです。

「自己肯定感が大事」がしんどかった
「推し」に出会う前の横川さんは、「自己肯定感が大事」「自分を好きに」といった言葉を見かけるたびに「自分のことを好きになれない自分はダメなんだ」としんどく感じていたといいます。

国立青少年教育振興機構の「高校生の心と体の健康に関する意識調査―日本・米国・中国・韓国の比較」(2017年度)でも、「私は価値のある人間だと思う」「私はいまの自分に満足している」といった「自己肯定的な項目に対し、『そうだ』『まあそうだ』と回答した割合が米・中・韓に比べて低く、しかもその差が顕著である」と指摘されています。

雑誌に「自分を好きになるために」と紹介されていた丁寧な生活をしてみたり、「好きなところ・嫌いなところを10個挙げる」を実践してみたりしましたが、「それでも僕は自分のことは好きになれなかった。好きじゃないものを好きになるって苦行ですよ」。好きになれない自分を否定して、さらに悪循環に陥ったといいます。

そういう筆者も「自分で自分のことを否定しないでほしい」という思いを込めた記事をたくさん書いてきました。苦しんでいる人に少しでも楽になってほしい思いだったとはいえ、同様の声が集まるほど、それが「唯一の正解」のように感じられてプレッシャーになることも……。
横川さんは「『自分を好きにならなきゃ現象』って本当に大きなお世話きわまりないです(笑)」と言います。

落ち込んでる暇があれば推しに費やす
「オタク」を巡るイメージは大きく変わってきました。KDDI総合研究所が2018年に出した「オタクのコンテンツ消費の行動と心理調査」では「オタクのネガティブイメージの希薄化を受け、現在では、オタクはもはやマイナーな存在ではなくなっている」と指摘します。
8000人を超える18〜34歳の男女にスクリーニング調査をすると、自分を「とてもオタクだと思う」「ややオタクだと思う」と回答した人は、男性が44.5%、女性が35.5%でした。
オタクと自覚する男女1000人の調査では、コンテンツ消費時間として多かったのは平日「1〜2時間」で、休日は「2〜3時間」。平日に「6時間以上」という人も5.2%いて、休日「6時間以上」の人は14.2%でした。

横川さんは、ある頃からか「ネガティブなことを考える時ってだいたい暇な時」と気づいたといいます。
夢中になっているものがあると、人のSNSを見て嫉妬にもだえている暇はありません。「そんな時間があったら推しのブロマイドを見ている方が楽しい」

さらに、以前は「自信がないタイプ」と言っていた「推し」と仕事で会ったとき、「そういうのはやめにした。誰かに応援してもらったり好きと言ってもらったりしているのに、そんな自分が自分を否定していたら、申し訳ないし、失礼だから」と言われたそうです。

「僕だって、少ないけれど友達もいて、家族も親も愛してくれている。自分のことをダメとか嫌いってアピールしたり公言したりするのは、そろそろ卒業しようと思うようになりました」
会社員時代に「読め」と言われた自己啓発本は全く響きませんでしたが、「推し」の言葉はスッと刺さったそうです。

推しは推すけど、依存はしない
「自分よりも推しが褒められると嬉しい」という横川さんですが、一方で、「誰かの人生に乗っかっていると言われたらそれまで。バランスに気をつけながらやればいい」と冷静に言います。なぜ「推し」の存在に依存してはいけないと感じるのでしょうか。
「推しだけではなく、家族や友達もそう。自分の責任を取ってくれない相手に全身を預けたら、その人がいなくなった瞬間に大ゴケしてしまいます。自分の足で立っておかなければ、というリスクヘッジの感覚ですね」

これまでの恋愛経験もふまえて、「この人がいなければ生きていけない」という重度の依存体質だということも影響しているといいます。
「だから、『推し』がいいなと思うのは、一方的に好きでいられるところです。こっちも一方的に推しているし、こっちの都合で勝手に降りることもできる」
その気安さが、人間関係が得意ではない横川さんにとって「ラク」だといいます。

そして30歳を過ぎてからオタクになったことも大きいと指摘します。
「10代って他者との境界線を見誤りやすい。大人になってからの『推し活』は、バランスよくやれるのがいいですね」

「推し」のおかげで日々の生活に彩り
このように同じ「推し活」でも、それぞれのスタイルがあるのが現代の特徴でもあります。
芥川賞で話題になった『推し、燃ゆ』(宇佐見りんさん著)で描かれる女性は、推しと自身をかなり同一視しています。

「『推しが背骨』という気持ちも分かる」といいますが、「自分は根本がオタクじゃなくて、ギアをチェンジしている感じ。自分の人生を明るくしたり、日々の中に彩りを見つけたり、自分で自分を楽しませるための推し活だと思っています」と分析します。

それぞれの「推し」を尊重する
それぞれの「推し」を尊重する傾向も広がっています。著者累計で55万部のヒットとなる、つづ井さんのエッセー漫画「裸一貫!つづ井さん」でも、「アラサーオタク女子」の日常が描かれ、「前世からの友」と呼ぶ友人たちと互いにそれぞれの「推し」を尊重しあっています。

横川さんも、「推し」と出会ったことで、何かハマっているものや好きなものがある人との会話が変わったそうです。
「これまでは、誰かの好きなものをディスる話芸を使っていました。たとえば童顔な芸能人を好きな人に対して『え、子どもじゃん』とちゃかすとか。当時は、相手が場を壊さないように笑って済ませてくれましたが、本当に申し訳ないことをしたし、タイムマシンがあったら自分を殴りにいきたいです」
今では、相手の「推し」や「好きなもの」も最大限に尊重するようになりました。

SNSで推しの名前に「君」をつけて検索し、どんな風にみんなが「推し」を褒めているかを眺めるのが好きといいます。
「こういうご時世なので、SNSって怒りの言葉が多い。社会がよりよくなるために必要な批判はあるし、怒り自体は否定しないんですが、そればかりを浴びているとメンタルがやられることがあるんです。そういうときは、優しい言葉、愛情ある言葉を見ているほうがいいなぁと」

好きなものにかける熱量もそれぞれ
自分よりも重度のオタクはたくさんいるので、自分が「推し」を語る人として登場するのはおこがましいという気持ちもあるという横川さんですが、「でも好きだったらみんな『推し』って言ってよくない?遠慮したり未熟者って言う必要なくない?って思っています」とも言います。
私の方が好きだから、詳しいからとマウントを取ってくる人からは「逃げろ!」とアドバイスします。
職場やママ友といったコミュニティーでは、合わない人がいてもなかなか逃げ出せません。でも「推し活をしている人同士は、生活をシェアしていません。『この人は無理』と思ったら一瞬で縁を切る気安さがあっていいと思います」と横川さんは言います。

「競争意識を持ってしまう気持ちは分かりますが、好きなものにかける熱量は人それぞれ。ちょうどいい温度感の合う人とやればいい。オタクは楽しくやってなんぼだし、サードプレイスという感覚でいた方がいいですよ」

推していたら、自分の背中も押された
今でも、自分を100%肯定できてはいないという横川さん。「でも、もうそれでいいかなって。人間に100の愛情があるとして、ある人は50:50で自分と他者に振り分けるのかもしれませんが、僕は自分に愛情がひとつも向かない。だからといって愛を知らないわけじゃない。他者にあげる方が楽しいし、生きがいを感じるんです」

太陽のように輝く「推し」の光を反射して、自分もちょっとだけキラキラできる。
その反射の光がなくなったら、舞台やブロマイド、動画再生で「推し」をチャージしにいくそうです。

横川さんは著書で、こんな風に「推し」を表現しています。

<心の胸ポケットに「推し」のお守り
自分では推しているつもりが、気づいたら推しが自分を推してくれていた>

横川さんにとっては、「推し」は「推薦する」よりも、その人の背中を「押す」の方が感覚として近いといいます。
SNSや記事を通して「推し」のことを書いていたら、自分の背中を押してくれる人も現れる。誰かの背中を押すことで、誰かに推してもらえる人になれる――。
横川さんは「僕の職業に限らず、一生懸命やっていたら誰かが見てくれていることってある気がするんです。夢中になったり誰かを好きになったりする力の絶大さって、まわりに伝播しますよね。僕は、人の悪口やグチを言っていたころより、今の環境の方が単純に好きだな、と思っています」。

それぞれのお守りを、互いに大切に
誰かと自分を比べてしまって落ち込むことや、結婚や出産といった社会の「こうあるべき」というプレッシャーから「推し」の存在が救ってくれた――。横川さんのお話を聞いて、「好きなこと」が突き動かす力に改めて心を動かされました。
ただ「自分はそこまで没頭できることがないから、うらやましいなぁ……」と思ってしまうあたりが、筆者もまだまだ「他者との比較」から抜け出せていないんだろうと思います。

しかし、「推し」という呼び方ではなくても、自分を支えてくれる「胸ポケットのお守り」のような存在って、それぞれに持っているのでしょう。「オタク」への認識が変化した今、それぞれのお守りを互いに「いいね」と思える社会へ、さらに近づいていけばいいなと思います。

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  • グッズまだ集めて、服までかった���顼�áʴ��� (-_-;)天月さんファン、知ってる人しかわからんはず https://mixi.at/a8zqlrC
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  • 他人の趣味にとやかく言う物じゃ無い!(自身のお金でやりくりしてるなら)
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