バンドウイルカと一緒に泳ぐ、ヒレナガゴンドウクジラの赤ちゃん(画像は『Far Out Ocean Research Collective 2021年5月18日付Facebook「Our pilot whale adoption observations made the news!」(stuff.co.nz)』のスクリーンショット) ニュージーランドの沖合で、大人のバンドウイルカとゴンドウクジラの赤ちゃんが寄り添って泳ぐ不思議な光景が撮影された。バンドウイルカは時に他種の子を育てることがあるというが、成長すると自分よりも大きくなる種の子を受け入れるのは大変珍しく、専門家は「自分の子を亡くし、クジラの子に母性本能が働いたのだろう」と見解を明かし、驚いている。『Stuff.co.nz』などが伝えた。
海洋保護・研究を行う団体「Far Out Ocean Research Collective」が、ニュージーランド北島にあるベイ・オブ・アイランズにてイルカとクジラの赤ちゃんが一緒に泳ぐ珍しい親子の組み合わせを目撃した。
同団体は、Facebookにてこのように記した。
「ニュージーランド北東部の沖合で、大人のバンドウイルカとヒレナガゴンドウクジラの赤ちゃんが一緒にいる姿を発見しました。このイルカはゴンドウクジラや他のイルカのグループの中で一緒に泳いでいましたが、数時間後にゴンドウクジラがこのグループから離れた際に撮影されたものです。」
この海域ではイルカやクジラたちが一緒に泳ぐ姿をよく目撃すると言い、今回ゴンドウクジラの一行がグループを去った際に、ゴンドウクジラの赤ちゃんはその場に残って1頭のイルカと寄り添うようにして泳いでいたのだ。
同団体は「私たちは写真の解析を進めていますが、このクジラの赤ちゃんがイルカを母親と認識してその場に残っていたとしたら、大変興味深い発見です」とも述べている。
海洋研究者のヨッヘン・ジーシュマーさん(Jochen Zaeschmar)は「バンドウイルカは他の種の子どもを育てることがあると知られており、通常はサイズや色が似ているイルカを育てることが確認されています。自分よりも大きい種の子を受け入れるのはとても珍しいことです」とバンドウイルカの面白い習性を明かし、今回の発見に驚いている。
成体のバンドウイルカは体長3〜4.2メートル、体重は約500キロ、一方でヒレナガゴンドウクジラが成長すると体長は5.8〜7.6メートル、体重は1.3〜2.2トンにもなる。ゴンドウクジラは小型種と言えど、バンドウイルカに比べて体重は倍以上の差が生まれる。
なぜバンドウイルカが他の種の子を育てるのか、その理由は未だ明らかになっていないそうだ。ヨッヘンさんは今回の発見について「恐らくイルカが自身の子どもを何らかの理由で亡くし、クジラの子に母性本能が働いて盗んだのでしょう。きっと近くに怒ったクジラの母親がいるかもしれません」と話す。
続けて「イルカが他種の子を育てるのは、一般的に数週間ほどしか続きません。他の種と生息域が被っているので、遭遇した際に本当の母親と合流するのです」と見解を明かした。
同団体は5月17日にFacebookにて、3月6日に撮影されたイルカとクジラの写真を4月12日に撮影したものと比較して「同じ個体とみられるバンドウイルカとゴンドウクジラの赤ちゃんが、5週間も一緒にいることが写真から確認されました」と続報を投稿した。
ヨッヘンさんは「バンドウイルカとゴンドウクジラのエサは違うので、授乳を終えれば自然と別れることになると思います。大変興味深い親子なので、ぜひまた海で出会いたいですね」と目を輝かせた。
画像は『Far Out Ocean Research Collective 2021年5月18日付Facebook「Our pilot whale adoption observations made the news!」(stuff.co.nz)、2021年5月17日付Facebook「A follow-up to our post on the bottlenose dolphin seen with a pilot whale calf a few weeks ago.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)