迷子?と思っても「声がかけられない」 善意の声かけが難しくなった弊害

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2021年06月12日 10:10  AERA dot.

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写真大人による見守り活動は必須だ(写真/米倉昭仁)
大人による見守り活動は必須だ(写真/米倉昭仁)
 最近、街で迷子らしい子どもを見かけても声をかけることを躊躇する大人が増えている。その背景として、不審者や誘拐犯と誤認され、警察から取り調べを受ける恐れを口にするケースもある。実際、警察はどう対応しているのか、警視庁に聞いた。

*  *  *
 中学生や高校生が迷子を保護し、警察から感謝状が贈られた記事がネット上に掲載されると、称賛のコメントがつく一方、こんな意見も目に入る。

<児童生徒がこういう行いをすれば感謝状。大人がやれば不審者>
<おじさんが助けようとしても、誘拐と勘違いされるんだろうな>
<明らかに様子がおかしい子どもがいても声をかけない。それが自分の身を守る最善の手段。悲しいけどそれが現実>
<警察は中年男性が迷子を発見して通報した際、事案にならないマニュアルを作ってくれ>

 実際、迷子と思って善意で声をかけたところ、不審者と誤解され、保護者などに通報されてしまうケースもあるだろう。そんな場合、警察はどう対応しているのか?

■昨年の「前兆事案」は約900件

「迷子に声をかけ、通報していただくことで悲しい事件や事故を未然に防ぐことができます。社会全体で子どもを守っていく一環として、ぜひ、迷子と思ったら積極的に声をかけてほしい」

 警視庁生活安全部生活安全総務課長の重成浩司さんは、そう話す。

 毎年、東京都内で警察に保護される13歳未満の迷子はおよそ3000件。警察官が迷子を見つける場合もあるが、一般の人の通報によるケースも多い。中高生が迷子を保護するケースは注目を集めやすいためニュースになるが、実際は大人が子どもに声かけをして保護につながることも多いという。

 その一方で、道案内や送り届けなどを口実とした不審な「声かけ」「つきまとい」は性犯罪や誘拐事件などに発展する恐れのある「前兆事案」とされ、通報があった場合は、ただちに警察官が現場へ駆けつける。前兆事案には待ち伏せ、身体接触、のぞき見、盗撮、身体露出なども含まれる。

 昨年、警視庁管内での13歳未満の子どもについての前兆事案は約900件。さらに小学生以下の子どもが巻き込まれた殺人や暴行、傷害、強制わいせつなどの犯罪は175件発生している。

 子どもに対する犯罪の防止は社会的な要請が強く、近年、警察は前兆事案を犯罪に発展させないよう、予防的活動に力を入れている。不審な声かけやつきまといなどにったり、これを目撃した場合は、可能なかぎり、行為者の特徴や使用車両のナンバーを覚えて通報してほしいという。

■「あいさつ」だけで通報される

 だが、実際に通報されるものは、前兆事案につながるものばかりではない。実際は、不審者に関する通報の中には、犯罪に結びつかないものも多い。

「単にあいさつをしただけとか、まったく事件性がなかったことが分かったものもあります。けれど、1件の犯罪を食い止めるために何十件、何百件の空振りを積み重ねていく。そのためにも現場で真摯に話に耳を傾けることを心掛けています。そこで、どのような状況なのかしっかりと判断していく」(重成さん)

 だが、現場の警察官は「難しい判断」も迫られる。

 目の前にいる人物は、「迷子を保護した善意の人」なのか、それとも「声かけ、つきまとい」事案なのか――。警察官がいくら丁寧に聞き取りをしたとしても、善意の人であれば「犯罪者扱いされた」と感じることもある。迷子への声かけでそのようなイメージが広がれば、救える命が救えなくなってしまうかもしれない。

■「いかのおすし」徹底

 千葉県船橋市に住む南雲進さんは、長年、スクールガード・リーダーを務めてきた。このスクールガード・リーダーとは、「地域ぐるみの学校安全整備推進事業」の一環として2005(平成17)年度に文部科学省が主導して始まった制度で、警察官や教職員のOBらで組織され、防犯活動の行うための指導、援助、評価を専門家の立場で行う。

 元校長の南雲さんは、その防犯活動のための「声かけ」が年々、難しくなってきていると話す。

「デパートなんかでうろうろしている子どもは難しい。近くに親がいるかもしれないしね。不審者と思われて通報されてしまうかもしれない。よほどの子どもが泣いているとか、明らかに迷子だとわからないと、声はかけられません」

 これには全国的な防犯教育の徹底も影響している。

 例えば、船橋市の小学校の場合、防犯上有効とされる5つの行動指針を繰り返し子どもたちに教えている。これは「いかのおすし」と呼ばれる防犯標語で、「行かない、乗らない、大きな声を出す、すぐ逃げる、知らせる」の頭文字を組み合わせたもの。小学校に入学してすぐに、これらを学び始める。それらが徹底しているだけに、防犯活動のための声かけも難しく感じるときがあると南雲さんは話す。

 これまでも、悲しい事件になる前に誰かに声をかけてもらえたら、そうならずに済んだことはあったはずだ。前出の重成さんは、あらためて防犯活動の重要性を説く。

「迷子だと思った際には、願わくば声をかけていただき、その場で110番通報してほしい。声をかけづらければ、通報して、ちょっと遠巻きから見ていていただいく。警察官がやってきて、たとえ、それが迷子でなかったとしても、その通報が非難されるということには決してなりませんので。みなさんのご協力の積み重ねによって守られる子どもたちの命が確実にあります。その事実を知っていただきたいと思います」

(文/AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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このニュースに関するつぶやき

  • 以前新宿歩いてたら、幼い男の子が、「ねぇ。僕、迷子」と、突然僕に話しかけて来たことがあったf(^^;えっ?迷子?それなら親を探してあげないと、と思ったら、すぐ父親が現れた��������
    • イイネ!10
    • コメント 2件
  • 警察とか周りが悪いんじゃなくて、子供に手を出す犯罪者が悪いのにそちらをどうにかしようという話が出ない時点でお里が知れるよね(笑) 痴漢だって大前提として、する奴が居るから悲惨な冤罪事件が起こるのに、何故か女叩き・被害者叩きに走る
    • イイネ!59
    • コメント 2件

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