「また授かるよ」も苦しい 悪気ない言葉で傷つくことも 南明奈さん、濱口優さん夫妻が死産を公表

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2021年06月12日 11:05  AERA dot.

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写真写真はイメージです(Sunil Ghosh/Hindustan Times via gettyimages)
写真はイメージです(Sunil Ghosh/Hindustan Times via gettyimages)
 産声も聞けないのに、陣痛を起こして亡くなった赤ちゃんを産む。 壮絶な死産を経験した家族が悪気のない励ましでさらに傷つくことも少なくない。AERA 2021年6月21日号は当事者や専門家に死産直後の心身の状況について聞き、赤ちゃんを失った家族を傷つける言葉を掲載している。

*  *  *
 4月に妊娠を公表していたタレントの南明奈さん(32)が8日、死産したことを公表した。自身のインスタグラムに、夫でお笑いコンビ「よゐこ」の濱口優さん(49)と連名で、「ご報告がございます。私達夫婦に授かった命は、空へと戻りました。約7ヶ月という時間でしたが、私達家族は幸せでした。皆様から頂いた祝福の言葉が子どもの生きた証です」などと記した。

■善意の暴力でいっぱい

 インスタグラムには公表から1日余り経った9日夜までに約7500件のコメントが書き込まれた。どれも南さんの悲しみに寄り添い、励まそうとする内容に見えるが、5年前に妊娠7カ月で死産した東京都内の女性(42)は「善意の暴力でいっぱいで見ていられない」という。

「『忘れ物を取りに戻っただけ』『また授かるよ』『前を向いてね』とか、私も周囲から言われ、ナイフのように心に突き刺さりました。なぜお空に帰ったのか、あの子の気持ちを知りたくて苦しんでいるのに勝手に代弁されて嫌だったし、次の子の話は亡くなった子が無視されているようでつらかった。心身に大きなダメージを受けているということをもっと想像してほしい」

 死産とは妊娠12週(4カ月)以後に、おなかの中で亡くなった赤ちゃんを出産することだ。南さんがどのようなお産だったかはわからないが、現在も多くの死産は人工的に陣痛を起こして産む。産声を聞くことができないのに、痛みと悲しみに耐えながら出産し、産後の体が回復しないまま葬儀の手配や役所への死産届の提出など手続きに追われ、火葬場で小さな骨になったわが子を拾う。確かに命は存在したのに、戸籍にも残らない。

 厚生労働省の人口動態統計によると、2019年の死産数は1万9454。出生数は86万5239なので、2・2%、約50人に1人が死産だ。妊娠22週以降の死産の原因をみると、赤ちゃん自身の病気は2割強。そのほかは常位胎盤早期剥離やへその緒のトラブル、感染症などで、25%は原因不明で、予測がつかず、突発的に起きることが多い。

■誰にでも起こる可能性

 自身も子宮内胎児死亡の経験のある産婦人科医の藤田聡子さん(くすの木レディースクリニック北千住院長)は言う。

「赤ちゃんを亡くし、自分を責めてしまう方はとても多いです。私自身も『もっと健康的な生活を送っていたら助かったのではないか』と思ったことがありました。でも、まず関係ない。誰にでも起こる可能性があります」

 千葉県内の女性(40)は6年前に死産して以来、芸能人が妊娠を公表するたびに「出産まで何が起こるかわからないのに、大丈夫か」と考えるという。

 赤ちゃんを亡くした家族への心の支援を啓発する「Angie」共同代表の小原弘美さん(42)は、自身も41週で死産した経験から、こう話す。

「死産直後は出産後の体力低下もあり、心身の苦しさは壮絶なものでした。そんな時期は、どんな励ましの言葉も傷を深めることが多く、前を向こうとするだけで苦しい。特に、有名であるほどたくさんの言葉をかけられ、苦しさが重なると思います」

 この時期に大切なのは「十分に悲しみ切ること」だという。

「悲嘆と向き合い、受け止めていくためにも、周囲の人は、本人の気持ちに寄り添い、亡くなった子の存在も認めてほしい」

 死産の体の負担は、通常の出産と変わらないが、産後の支援体制は整っていない。赤ちゃんがいないため、保健師による訪問もないなど孤立する。厚労省は今年5月、自治体向けに流産や死産を経験した女性へ適切な施策を講じるよう通達を出した。

「医療者、心理職、福祉職などの専門職や当事者同士、家族・友人など様々な人が付かず離れずそっと見守ることが、その人の生きる力をつなぎ留めてくれると思います」(小原さん)

(文/編集部・深澤友紀)

※AERA 2021年6月21日号から

■「傷ついた言葉」のリスト (『産声のない天使たち』より抜粋)

 赤ちゃんを亡くした家族は悲嘆の中にあり、良かれと思って励ました言葉でも傷ついてしまうこともある。

 不用意な言葉は赤ちゃんを亡くした親たちがますます孤独感を募らせていくきっかけになってしまうので、気の利いたことを言おうとせずに、ただ話を聞き、その悲しみに心を寄せるだけでいい。家族や親しい友人であれば、赤ちゃんのことを聞いていいか尋ねてみて、もし話したい様子だったら話題にし、名前があれば赤ちゃんの名前を呼ぶことも、親たちにとって救いになることがある。

 以下のリストは、死産や流産、新生児死を経験した家族に取材しまとめた「傷ついた言葉」。受け止め方には個人差もあるし、死別後は心が不安定なので、そのときの心身の状態で受け止め方が変化することもある。

・「元気そうで良かった」「もう大丈夫そうだね」
相手に心配をかけまいと気遣い、元気を装っていることも多い。こう言われると「やっぱりわかってもらえない」と距離を感じてしまう

・「また授かるよ」
次の子の話は亡くなった赤ちゃんの存在を否定されたような気持ちになる。次の妊娠・出産については不安がある人も多く、気軽に口にしないほうがいい

・「そんなに泣いていると亡くなった赤ちゃんが悲しむよ」
親たちの多くは、なぜ空に帰ってしまったのか、わが子の気持ちが知りたくて苦しんでいる。そんな中で赤ちゃんの気持ちを勝手に代弁するような言葉は、「他人のあなたにわかるわけがない」と心を閉ざしてしまうきっかけに

・「その気持ち、理解できるよ」
同じような経験をしていない人から安易に「理解できる」と言われると、わが子の死という体験が軽んじられたような気持ちになる

・「今回は縁がなかったんだよ」
いつまでも大切にしたいと思っているわが子とのきずなを断ち切られるような酷い言葉

・「上の子がいるからいいじゃない」
亡くなったあの子の代わりはほかにはいない。子どもを失う悲しみは、他の子どもがいることで薄れるものではない

・「早く忘れなさい」
赤ちゃんを亡くした事実をないことにはできないし、我が子の死は生涯忘れることはできない

・「いつまで落ち込んでいるの」 
我が子の死を受け止め、前を向き始められるには、決まった期間はなく、心身の回復にかかる時間も人それぞれ

・「神様は乗り越えられない試練は与えない」 
自分自身で思う分にはいいが、他人に言われるとわが子の死を勝手に意味づけされ、と怒りを抱く場合も

【おすすめ記事】泣かない息子を産んだ妻…風見しんごが明かす亡き2人の子への思い


このニュースに関するつぶやき

  • こういう場合は霊がすぐに生まれ変わってきますよ。あの世での修行が終わっていますし、両親になる人との約束がすんでいますから。
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  • この辛さと苦しみは当人しか解らないから、そっとしてあげることが一番だと思いますね。
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