時間かせぎの「思い出」語り? 菅首相は「安心安全の五輪」を具体的に語らず

20

2021年06月13日 07:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真党首討論で立憲民主党の枝野代表(右手前)の質問に答える菅首相。国会での党首討論は2年ぶり/6月9日、国会内(c)朝日新聞社
党首討論で立憲民主党の枝野代表(右手前)の質問に答える菅首相。国会での党首討論は2年ぶり/6月9日、国会内(c)朝日新聞社
 2年ぶりとなる国会内での党首討論は、菅首相が前回東京五輪の「思い出」を語るなどして会場から失笑が漏れた。他方、野党第1党の立憲民主党の枝野代表の追及も迫力に欠け、議論は低調に終始した。AERA 2021年6月21日号から。

【性的少数者をめぐる自民党内外の動きはこちら】

*  *  *
 6月9日に開催された2年ぶりの党首討論は、立憲民主党・枝野幸男代表の「総理、お疲れ様でございます」という一言で始まった。コロナ対応に奔走する菅義偉首相に対するねぎらいの意味があったのだろう。しかし、枝野氏自身が討論の中で「戦後最大の危機」と定義した今の日本の状況を考えると、あまりにも迫力に欠ける冗長な一騎打ちを象徴する言葉のように聞こえた。

 今回の党首討論は特別な意味を持つ。9月末の自民党総裁任期や、10月21日の衆議院議員任期の満了を前に、必ず行われる解散総選挙。つまり、今回の選挙は「現在の政権」か「それ以外」を決定する政権選択の重要な選挙なのだ。自民党にとっては「国民が菅政権を信任するか否か」の選挙であり、野党にとっては「それ以外」の選択肢を示す選挙になる。

 選択肢の筆頭である野党第1党の立憲民主党。その党首である枝野氏が最初に追及したのは「早すぎる緊急事態宣言の解除」だった。

■1日100万回超え?

 今年1月7日に発令された2回目の緊急事態宣言は、3月21日まで約2カ月半続いた。その約1カ月後には3度目の緊急事態宣言の発令に追い込まれた。枝野氏は「解除が早すぎた」と菅首相の決断を批判。6月20日に期限を迎える宣言解除を念頭に「東京で1日当たりの新規感染者が50人程度になるまで、苦しくても解除してはならない」とし、リバウンドを防ぐためには「十分な補償がセット」ではないかと菅首相の政策をただした。

 これに対し、菅首相はロックダウンをやった国でも簡単にコロナの蔓延は収まっていないと反論。補償の議論はスルーして、この後、しばらく「ワクチン接種」こそがコロナ収束の切り札とする持論を述べた。その上で「昨日は(ワクチン接種が)100万回を超えてきた」と自らぶち上げた「1日100万回のワクチン接種」の成果を表明。続けて自らのリーダーシップをこう自画自賛した。

「まさに一定方向を示したときの日本の国民の皆さんの能力の高さ、こうしたものを私自身、今、誇りに感じています」

 しかし、菅首相が指摘した「昨日」にあたる8日の接種回数は、首相官邸の発表によると、医療従事者と高齢者の合計で「約73万回(10日時点)」にとどまる。党首討論後の記者会見で、この数字の誤差を問われると「毎日、過去の(報告分)が上がってくるからどこで100万回というのかは分からない」と弁明。会見で同じ質問をされた加藤勝信官房長官も「接種記録を後日まとめて入力する自治体もある」と認め、必ずしも菅首相の「1日100万回」という表現が正確ではないとした。

■思い出ポロポロ語る

 45分という限られた時間の中で、菅首相が枝野氏の質問とは直接関係ない持論を延々と述べて顰蹙を買った場面があった。それは、このコロナの感染状況下で「本当に国民の健康と命を守ることができるか」という国民の最大の関心事に関するやりとりの中だった。

 菅首相は「私自身、57年前の東京オリンピック大会、高校生でしたけれども、いまだに鮮明に記憶しています」と前置きをした上で、
「東洋の魔女」「オランダの(柔道の選手の)へーシンク選手」「マラソンのアベベ選手」などを引き合いに出して、「あの瞬間というのは私はずっと忘れることができなかったんです。そうしたことを子どもたちにもやはり見てほしい」と語ったのだ。会場からは失笑が漏れた。

 この場面を自民党のベテラン議員の一人は「思い出ポロポロ」と揶揄し、痛烈にこう皮肉った。

「時間稼ぎとしては有効かもしれないが、この場面で過去の栄光の思い出に浸るのは、年寄りの悪いクセだ。アベベ選手と言ってピンとくるのは菅総理よりも上の世代でしかない」

 この直後、枝野氏が「そんな過去の思い出を語っている場合か。もし、五輪開催期間に選手村でクラスターが発生するなどし、更なる深刻な事態に陥ったならば、その時点であなたは辞任する気があるのか。総理の首をかけて、安心、安全の五輪を実現できるか」などと凄めば、冗長な空気を一変するチャンスだったかもしれない。

 しかし、「総理の後段の話は、この場には相応しいものではなかった」と発言するにとどまった。この党首討論に限らず、菅首相は「安心安全の五輪を目指す」とは明言しても、「それをどうやって実現するか」という点はほとんど具体的なことを語っていない。

■総裁続投の意思を表明

 今回の党首討論で最も注目を集めたのは、共産党・志位和夫委員長の「命をさらしてまで五輪を開催する理由はなんですか」という質疑だった。菅首相は「国民の命と安全を守れなくなったらやれないのは当然」と何も答えなかった。よほど、答えにくい質問だったのだろう。

 1月から150日に及ぶ通常国会は、野党が求める国会の会期延長もないまま閉じられる見込みだ。政局は「五輪開催」「ワクチン接種拡大」を経て秋口の「解散総選挙」へと加速する。党首討論で初めて、菅首相が「10月から11月にかけて希望する国民全てに(ワクチン接種を)終えることも実現したい」と9月以降の日程を具体的に口にしたことで、事実上、自身の総裁続投の意思を党内外に示した格好だ。(編集部 中原一歩)

※AERA 2021年6月21日号から抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 「安心安全の五輪を目指す」←こればかりの答弁なら壊れたレコードでも日本の首相になれるわな。笑。スマートスピーカー(AIスピーカー)の方がもっとまともな答え方するんじゃない?
    • イイネ!0
    • コメント 0件
  • 野党はさ、五輪そのものでなく五輪が契機になって感染拡大しても首相は責任持てるのかなんて質問してますからね。野党は別の理由でも時期が重なれば五輪が契機だとバカ騒ぎするよね。
    • イイネ!17
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(18件)

前日のランキングへ

ニュース設定