東京五輪最終選考試合で久保建英が見せた真骨頂。後半の采配に感じた違和感

0

2021年06月13日 10:31  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真写真

 U−24日本代表が6−0で大勝した前戦のU−24ガーナ戦。1トップ上田綺世(鹿島アントラーズ)とその下で出場した久保建英(ヘタフェ)の関係について、良好ではなかったと記した。ゴールに背を向けてプレーすることが得意ではない久保を1トップ下で起用するのはどうなのか、とも記している。

 このジャマイカ戦でも、久保は1トップ下として出場した。4−2−3−1の3の左右に、三笘薫(川崎フロンターレ)、堂安律(ビーレフェルト)を従える格好で、だ。1トップとして先発したのは前田大然(横浜F・マリノス)。ガーナ戦でコンビを組んだ上田綺世は、後半からその前田に代わり出場した。

 久保の出来はどうだったかと言えば、ガーナ戦よりよかった。なにより動き方が違っていた。ゴール正面付近で、行き先に詰まりながらプレーする機会が減少。目立ったのは、左右への流れる動きになる。1トップとの縦の関係より、両ウイングとの横の関係を重視した格好だ。




 そこで久保は、堂安、三笘と、コンビネーションプレーを披露した。三笘と久保(左)。堂安と久保(右)。日本の左右は瞬間、いわばダブルウイングのような状態になった。両サイドで、パッと花が咲くような技巧的なコンビネーションが炸裂すると、豊田スタジアムを訪れた4029人の観衆は瞬間、感嘆の声を漏らした。日本サッカー、一番のセールスポイントここにあり、という感じだった。

 久保は、真ん中よりサイドでプレーしたほうがいい選手に見えるとは、ガーナ戦後にも述べた筆者の見解だが、そこでドリブルをまじえながら、相手をおちょくるようなプレーを魅せるのが、その真骨頂。ダブルウイングは、そんな久保の魅力がいかんなく発揮されやすいスタイルだ。ベンチの指示なのか、久保自らの判断なのか定かではないが、前戦のガーナ戦では表現されなかった魅力になる。

 久保が左右に流れれば、真ん中の攻撃は手薄になる。しかし、展開が左右に広がれば、そのぶん、相手の守備陣も真ん中が空く。中央の守備が手薄になる。遠藤航(シュツットガルト)が前半42分にゲットした2点目のミドルシュートは、まさにそうした状況から生まれた一撃だった。

 もっとも、ウイングがサイドでコンビを組む相手は通常、サイドバック(SB)だ。この日、スタメンを飾った選手でいえば、旗手怜央(左・川崎フロンターレ)と酒井宏樹(右・浦和レッズ)になる。しかし、彼らは自重気味に構えた。特に右の酒井が高い位置に進出して、堂安らと絡む機会は少なかった。これはむしろ心配な点になる。酒井は高い守備力で貢献したが、オーバーエイジの助っ人SBとしては、専守防衛だけでは物足りない。

 この試合のハイライトは後半12分。三笘のドリブルだった。タッチライン際でボールを受けながら、中央へ進出。人混みをかき分けるようにするすると競り上がり、ハーフウェイラインを突破すると、前方をディフェンダーと併走する上田綺世に縦パスを送った。上田はマーカーを軽く外すと、3点目となるゴールを鮮やかに決めた。

 この試合は、五輪メンバーの選考の最終戦だ。スタメンを飾った11人に冨安健洋(ボローニャ)、板倉滉(フローニンゲン)などA代表でも活躍する実力派を加えた選手が、当選ラインに近いと考えるのが自然だ。後半頭から交替出場した上田にとってこの3点目は、当選圏内入りを決めた一撃と言えるのかもしれない。

◆東京五輪代表メンバーの残り枠は「3」。当落線上ギリギリにいる選手は?

 一転、釈然としない光景がピッチに広がったのは、後半15分以降だ。三笘と旗手に代わり、相馬勇紀(名古屋グランパス)、橋岡大樹(シント・トロイデン)が投入された瞬間からだった。

 日本は布陣を3−4−2−1的な5バックに変更。アタッカー陣の枚数を減らし、後方に人数を増やす守備固めに入った。まったく賛同できない采配だった。

 フランス、メキシコ、南アフリカ。日本が東京五輪でグループリーグを戦う相手は強豪揃いだ。リードして終盤を迎えた時、後ろに人数を多く割いて逃げ切りを図る、その予行演習でもしておこうというつもりだったのだろうが、実際に向き合っている相手は、ジャマイカという弱小チームだ。

 5バックの効果は、後半19分、堂安による4点目のゴールが決まる前後くらいから表れた。日本は徐々にリズムダウン。ペースを失い、ジャマイカがボールを回す時間が増していった。その流れでタイムアップの笛を聞いた。尻すぼみとはこのことである。

 最終ラインは暇そうだった。特に、酒井、吉田麻也(サンプドリア)のオーバーエイジコンビは、楽にプレーしていた。守備的MFを務めたもうひとりの助っ人、遠藤しかり。その一方で、サイドを1人でカバーすることになったウイングバックと、枚数を減らされたアタッカー陣には厳しい設定になった。攻撃的ないいプレーができる環境ではなくなった。

 食野亮太郎(リオ・アベ)、三好康児(ロイヤル・アントワープ)、橋岡大樹、相馬勇紀は、監督が採用した守備的サッカーのために、活躍の機会を失った。最終選考試合であるにもかかわらず、だ。攻撃的か守備的か、陣容が違う状態でプレーさせたという意味では、フェアとは言えない采配である。

 東京五輪を目指すチームとして立ち上げてから、森保一、横内昭展両氏は、ここまで80人近くの選手を招集。文字通り、振るいにかけてきた。コロナ禍の猛威が吹き荒れる中で。五輪本番18人のメンバーの中にはオーバーエイジが3人含まれるので、当選者はわずか15人にすぎない。それが監督の仕事とはいえ、当選率2割以下という現実は、圧倒的な買い手市場だ。

 そうした中で「選手をリスペクトしていない」と言われかねない采配を、横内監督はその最後に行なった。ジャマイカをフランスやメキシコに見立て、後ろを固める作戦に出た。同じ条件で競わせないと、落選する選手に対して申し訳がたたないのではないかとは、現場で抱いた素直な感想だ。

 強者相手に、しかも実際には弱者であるジャマイカに対し、リードしたら守りを固めるという作戦そのものも、安易であるし、なにより古典的だ。五輪で実際に采配を振るのは森保氏なのかもしれないが、8割の候補者を落選させた監督に向ける目は、もっと厳しくなければバランスは取れない。これは森保氏が唱えてきた「金メダルを狙う」に相応しい采配なのかという視点が、不足している気がしてならないのだ。

    ニュース設定