男性と性的関係を持てば親まで「地獄」に堕ちる “カルト2世”の女性が背負わされた「純潔」への呪縛

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2021年06月13日 11:30  AERA dot.

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写真「カルト2世」として生まれた中田友子さん(撮影/作田裕史)
「カルト2世」として生まれた中田友子さん(撮影/作田裕史)
 日本は信教の自由があり、どんな信仰を持とうと自由である。だが、親の宗教によって、その子どもが苦しんだり、人生の選択を制限されたりするケースがある。その教義が特殊なものであるほど、子どもは苦悩し、生きづらさを抱えることが多くなる。いわゆる「カルト(※)2世」問題だ。AERAdot.では「カルト2世に生まれて」として、親の信仰によって苦しんだ2世たちのインタビューを短期連載する。第2回は、「神の子」として信者同士の結婚を強いられていた2世のケースを紹介する。

※カルトは「宗教的崇拝。転じて、ある集団が示す熱烈な支持」(大辞泉)とあり、本稿でもその意味で使用している。親が子に信仰の選択権を与えないほどに熱狂的な信者であり、そうした家庭環境で育った子どもを「カルト2世」と定義している。当然ながら、本稿は教団の教義や信者の信仰を否定するものではなく、一部の2世が感じている“生きづらさ”に焦点を当てることを目的としている。

【写真】「ゴムホースでお尻をたたかれた」と語るカルト2世の女性

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 事務職の派遣社員として働く中田友子さん(34・仮名)は、職場や友人との飲み会が苦手でほとんど参加しないという。職場での人間関係などが原因ではなく、それは子どもの頃の“恐怖”が体に染みついてしまったのかもしれない、と振り返る。

 友子さんの両親は1980年代に教団の「マッチング」による結婚式で結ばれた。父親は教団の幹部として各地を回り、母親も海外へ単身赴任して布教するほど熱心な信者だった。教団でいう「汚れなき神の子」として2世で生まれた友子さんは、原罪のない子として地上天国へ行ける、と教え込まれて育った。

「毎週日曜日は礼拝へ行き、家でも教義の本を音読して祈りをささげるのが日課でした。土曜日も教会で開かれる教義についての勉強会に参加していましたが、それは友達と遊ぶのと同じ感覚だったので楽しく過ごしていました。でも父の仕事の関係で転勤もあり、転校生だった私は慣れたと思ったら次の学校へと移り、また新たな人間関係を構築していかなければならなくて、今思えば負担になっていたのかもしれません」

 友子さんが8歳の頃から母親は布教のために単身で海外を巡るようになり、妹は近くの信者宅に預けられていたので、食事はいつも一人だった。

「父はいつも仕事で帰りが遅く、食事は近所の信者の方たちがおすそ分けしてくれたものやスナック菓子で済ませていました。とても貧乏だったので、電話はよく止まっていたし、ガスもたまに止められていました。孤食だったので人との会話は全く無かったのですが実際にはテレビを点けて食べていました。」

 小学3年生の頃から友子さんは、気が付くと誰かと食事をすることに苦痛を感じるようになったという。

「『会食恐怖症』のような状態だったんです。小学生の頃から人と一緒に食事ができなくて、咀嚼音を聞かれるのが嫌で給食も食べられませんでした。給食の時間が怖いので学校へ行くこと自体が苦痛になって、小学3年のころからずっと不登校でした」

「会食恐怖症」は人前でご飯を食べること(会食行為)に対して耐えがたい不安や恐怖を感じ、吐き気などの体調不良を引き起こす社交不安障害(SAD)の一つだが、友子さんもそれと似た状態だったという。学校給食などでの完食指導も発症の引き金となると言われているが、友子さんの場合は家庭での食習慣が大きな影響を与えていたようだ。

「教会ではお酒を飲んではいけない、喫煙もNG、異性と交遊をしてはいけない、そのような教えをたくさん受けました。また、毎週日曜日の朝5時から自宅でお祈りをする“式”にも参加しなければいけないのですが、小学生の子どもにとって朝5時から祈りをささげるのは辛いものでした。それに遅刻したり、サボったりすると父から素手で吐くまで殴られたほどです」

 カルト2世は、親が信じる宗教を自分も信じなければいけない環境に生まれた子どものことをさす。もし親が信じる宗教に反発すれば、親の存在そのものを否定することにもなり、また条件付きであれ、親からの愛情も得られないケースもある。

 友子さんが宗教から離れたのは約20年前のことだ。

「教団の教義そのものは理解していたつもりでした。母からも『2世なのだから教えに従うのは当たり前でしょう』と諭されていましたから。また、『2世は優秀でなければいけない』『人の悪口は言ってはいけない、人を悪く思ってもいけない』と言われ、自分自身も2世として好まれる自分でいなければ、という意識が強かったと思います。いずれは同じ宗教を信仰している者同士で親に言われた通り結婚するのが当たり前だと思って生きていました。でも実生活ではだんだん自分の気持ちと教義の間に違和感を覚えるようになり、乖離(かいり)していったんです。思春期を迎えて、好きな人ができてもデートもできない。将来その人とは結婚できない、という現実にとても疑問を感じました」

 高校時代は学費と家計を助けるためにアルバイトを始めた友子さんだったが、それでも家計はいつも火の車だった。

「子どもの頃から、とにかくいつもお金がなかったという記憶しかありません。妹は歯が痛くてもお金がないので歯医者にも連れて行ってもらえませんでした。父もお金がないので、いつもイライラしていましたし、母は母で私をなんとしてでも結婚させたくてしょうがないみたいでした」

 この教団の2世は生まれたころから「純潔教育」を受け、一切の恋愛もしないまま、教団によるマッチングで出会った相手と結婚していく。

 友子さんにも恋人ができ、親の言うことよりも彼との時間を優先したい気持ちが大きくなった。

「そのころになると、もう教義は信じていませんでしたが、それでも心のどこかで2世として『堕落』するのは避けたいという思いが強く、自分で自分をコントロールできないことがまた葛藤になっていました」

 友子さんのいう『堕落』とは、結婚まで純潔を守らなかった子は地獄へ行くという教義をさすが、つまり宗教を続けている限り彼とは結婚するまでデートすらできない、もしデートをして性的関係を持った場合は地獄へ落ちる、という意味になるという。しかも、その「報い」は自分だけでなく、親も含めた先祖にまで及ぶと教えられていた。

「彼とは3年ほどお付き合いしましたが、自分のそうした葛藤が彼の負担になっているのではと感じたんです。どこかで彼に依存しているようで……」

 社会人となって仕事を始めてからも、恋愛に対して前向きになれず、人間関係においても誰かと深く関わったり、いい関係を持続するのが難しかったり、煩わしくさえ感じるようになったという。

「30歳の時には、もう堕落なんてどうでもいいと思いましたね。母に『教義も信じない、2世同士の結婚を受ける気もない』と宣言しました。それでも、自由に恋愛もできない、もしできたとしても、私が育った宗教的な背景を説明しなければいけないだろうし、相手の家族はどう思うだろうか、という不安や絶望感が大きく、生きていくのがしんどかったです」

 それと同時に、友子さんは子ども時代の経済的な困窮が今もトラウマ(心的外傷)になっているという。

「親の経済観念のなさを見て、自分は経済的なリスクを抱えるのだけは避けようとずっと思っていました。両親は今、70歳になろうとしていますが年金も保険料も払ってなかったので足をケガしても適切な治療を受けられないんです。父は高校生の時の私にまでお金を無心してきました。子どもにそんな思いをさせておいて、そんな状況になることも想像できずに無責任じゃないのか、と一時は恨んでいました。ただ、両親もマインドコントロールされていたのだろうと思うので、責める気持ちはありません。母は数年前に『あなたの人生だから好きにしなさい』と言ってくれましたが、今はただ自分の生活は自分の経済力でやっていこうとしか考えていません」

 友子さんが唯一執着するのはお金だけだという。ファッションや旅行、趣味、食事などにはあまり興味が湧かないという。

「誰かとおいしいものを楽しく食べるのも嫌ですし、たまにお金を使うといっても、たくさんお菓子を買い込んでひたすら夜中まで食べまくる、くらいでしょうか。一種の摂食障害なのかもしれません。でも一つだけ、私が生きようと義務感を感じているのは、今一緒に暮らしているネコの存在です。この子のために一生懸命生きようとは思っています」

 友子さんのように親の宗教を通して、精神的、経済的に、また現実生活や人生設計において苦痛を抱くような状態になることを「スピリチュアル・アビューズ」という。5年ほど前からSNSを始めた友子さんはこうした状態に多くの2世たちが悩んでいることを痛感している。

「今はSNSがあるので、同じ悩みや問題を持った人と情報交換や相談できる機会も増えたと思うし、それによって救われることもあると思います。私自身もそれで救われた面があるので、虐待や苦痛をうけてきた子どもたちのサポートをしたいと思っています」(取材・文=笠井千晶/AERAdot.編集部・作田裕史)

このニュースに関するつぶやき

  • カルト宗教の信者の家庭って崩壊してる事多い。信心した結果はその信者に顕れる。勿論大きな集団には一定数おかしな人が混じってるのも事実。宗教見極めるなら
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  • とことんカルトやなw 中には輸血もXとかもうあの世行けよと。
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