福西崇史が選ぶ「歴代日本人デュエル王トップ10」遠藤航は何位?

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2021年06月14日 06:51  webスポルティーバ

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サッカーで相手と競り合い、ボールを奪うプレーは、チームへの貢献度が高く、攻守のなかで頼りになる大切な要素だ。歴代日本人選手のなかで、そんなデュエル王は誰なのか。元日本代表の福西崇史さんに、ボール奪取のデュエルで名人と思う10人を選んでもらった。

◆ ◆ ◆




10位 中西永輔(元ジェフユナイテッド市原ほか)

 中西さんは"和製カンナバーロ"というイメージで、身体能力の高さを生かして勝負ができる選手です。こっちが抜いたと思っても足が届いたり、振り切ったと思っても追いつかれたり。体は大きくないんですけど(174cm)、あのサイズでセンターバック(CB)をやりこなせる数少ない選手だと思います。

 身体能力の高さは、デュエルにおいて大きな武器です。インターセプトを狙って前で勝負もできるし、サイドで1対1の勝負もできる。読みが外れた時の修正も利くので、勝負できる幅がすごく広いと思います。

 僕は中西さんのようにスピードはなかったので、フィジカルを鍛えてそこで勝負できるようにと考えていましたね。

※カンナバーロ...ファビオ・カンナバーロ。ユベントスやレアル・マドリードで活躍した身長175cmのCB。イタリア代表主将として2006年ドイツW杯優勝。

9位 吉田麻也(サンプドリア)

 吉田選手はヨーロッパで間合いや駆け引きが成長したことで、イングランドのプレミアリーグという厳しいリーグでやれてきた選手です。イタリアのサンプドリアに移籍してからも、個人での守備力は上がっていると思います。

 プレミアリーグは攻守の入れ替わりが激しく、個人の対応で難しい局面が何度もあったと思います。もちろん、そうした場面にならないように味方と連係して守ることに磨きをかけてきたとも思います。

 けれども、突出したフィジカルやスピードを持った選手がゴロゴロいるので、1対1を避けられない場面もありますよね。その時相手とどう対峙するのかは相当考えたでしょう。スピードのある選手には体を当ててスピードに乗らせないとか、とりあえずバックパスをさせるようにしようとか、裏に行かれた時にはファウルで止めるしかないとか。

 展開も、選手自身のスピードも速いので、求められる判断の速さも相当なものだったと思います。攻撃時から、奪われたあとのポジショニングを常に考えながらやっていたでしょうね。

8位 井原正巳(元横浜マリノスほか)

 井原さんは総合的に能力が高かったのですが、どちらかと言えば相手との駆け引きに長けていた選手でした。フィジカル勝負もできるし、カバーリングでボール奪取もできる。幅広いプレーができるので、リベロというポジションだったのかなと思います。

 井原さんと言えば、ライン際の攻防ですね。ボールと相手の間に体を入れて触らせず、ラインを割ってゴールキックにするシーンのイメージが印象に残っています。

 このような形でマイボールにするというのは、それだけ読み勝ちできているわけですが、加えて相手の体勢をよく見てプレーしていることでもあります。デュエルの場面では、こうした相手の体勢の観察が非常に大事な要素です。

 例えば相手の体勢が浮いているようだったら、こちらは下に入り込めば相手はどうすることもできないわけです。こちらから相手の体勢を崩させるようなこともやりました。クサビのパスを受ける相手選手に対して、ボールが入る前に一度体をぶつけて体勢を崩させたりする駆け引きは、昔からよくありましたね。

7位 鈴木秀人(元ジュビロ磐田)

 ジュビロで一緒にプレーした鈴木さんは、スピードがあるので、一度かわされても何度でも取りに行けてしまうんですよね。読みも鋭かったですけど、それが外されたとしても追いつけるだけのスピードがありました。

 スピードを生かして相手ボールをつついたり、ちょっと足に引っかけたりとか、そういう勝負に持っていく選手でした。

 僕はスピードがなかったので、鈴木さんに非常に助けられていました。守る時は常に鈴木さんのほうに相手を誘導するようにしていましたね。この時、少し自分が体をぶつけて相手の体勢を崩しておけば、鈴木さんが奪ってくれる。

 サイドに行かれた時は相手にスピード勝負をされるので、そこも鈴木さんに任せて、僕は空けたエリアのカバーに入る形になります。逆に鈴木さんに相手のスピードを止めてもらってから、僕のところで体をぶつけてフィジカル勝負という、連係で守ることもありました。

6位 中澤佑二(元横浜F・マリノスほか)

 中澤選手は、球際でのフィジカル勝負でボールを奪える選手ですよね。スピードがあるほうではなかったので、相手にスピードに乗らせないやり方もうまいし、間合いの取り方や寄せてから足の出し方も非常に巧みでした。そうしたうまさがあったうえで、フィジカル勝負ができる選手でした。

 実際に対戦した時も、競り合ってしまったらダメでしたね。僕もフィジカルには自信がありましたが、体をぶつけ合う勝負になったら体幹が強くてずっしりと重みのある中澤選手には勝てませんでした。かといって、少し離れたところに晒されたようなボールに対しても、体の寄せ方、体の入れ方がうまいので、そうなったら「もうダメだな」と思っていましたね。

 だから中澤選手にボールを奪われたくないとなると、どうしてもプレーに時間をかけてしまうんです。ただ、時間をかけてしまうと、チャンスになる確率は落ちてしまう。うまく操られていたなと思います。

5位 遠藤航(シュツットガルト)

 ドイツでプレーすることで、ボールを奪い切る技術が上がりましたよね。大きな選手に囲まれるなかでも、どのタイミングで行けば相手の体勢が崩れるか、ボールを奪えるかを掴んだのだと思います。今シーズンのブンデスリーガでデュエルの勝利数1位というのは、まさにその証明ですよね。

 Jリーグであればフィジカル勝負の奪い方という選択肢はありますけど、ドイツのあの環境だからこそ、フィジカルではない勝負の仕方を学んで、タイミングや読みが洗練されたのでしょう。

 例えば間合いの詰め方。これはボールの出どころへの読みも必要ですが、相手から隠れながらタイミングよく近づいていくのがうまいです。相手がボールをもらう時のちょっと目を離した隙に近づいたり、相手がこちらの位置を確認したあと見ていない時に近づいたり。相手にとっては、気がついた時にはもう遠藤選手に寄せられて、ボール奪取されている感覚でしょう。

 フィジカルで劣る日本人が海外のリーグで勝負する時、相手に先に体を当てられると厳しいと思います。遠藤選手のように読みの速さ、小回りの利くアジリティを生かして、味方をうまく使いつつ奪う。これが、日本人が海外リーグで勝負できるところだと思います。

4位 服部年宏(元ジュビロ磐田ほか)

 服部さんはフィジカル勝負より、読みで勝負するタイプですね。相手の動きを読みながら、自分が勝負できる方向へ持っていくのが本当にうまい選手でした。

 例えば相手がドリブルするコースをわざと空けておいて、来たところでボールをつついたり、ブロックしたりする。相手がかわしたと思ったところでも最後に足が出せて、そこでボールを跳ね返すといったプレーもありました。

 僕もジュビロでの練習中に、「抜いた!」と思ってもなんか引っかかってしまうことが何度もありました。

 ボールを奪うというより、跳ね返す。だから、相手はプレーのやり直しになって、攻撃に時間をかけさせられてしまうんですよね。これはあまり他の人にはないタイプの守り方で、服部さん独特の感覚だったと思います。僕も参考になるなと思って"足残し"はやっていました。

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3位 田中マルクス闘莉王(元浦和レッズほか)

 闘莉王選手は、激しさ、奪い切る時の迫力、そういった面で強く、気持ちが出る選手ですよね。

 球際ではフィジカルの強さを生かして、相手を止めにいくイメージです。スピードに乗られてしまうと厳しい相手には、体を当てながらうまくスピードに乗らせない巧みさもありました。

 体の強さがあるので、駆け引きの部分でも自ら仕掛けて寄せることで自分の間合いに引き込もうとしていましたね。

 ただ、プレーのタイミングや選手のタイプによっては、寄せない場面もありました。寄せすぎてそこから相手と単純なスピード勝負になるよりは、ある程度間合いを取って向かって来たところを止める。

 そうやって駆け引きをしながら、自分のテリトリーで勝負をするイメージがありました。

2位 松田直樹(元横浜F・マリノスほか)

 松田選手には、相手に自分のプレーを読ませない、駆け引きの妙がありました。

 相手にやらせるところ、自分で仕掛けるところを見極めるのがうまかったし、逆を突かれたとしても身体能力が高いので、足を出してボールに触れてしまう。

 自分からわざと飛び込んで、相手にかわさせておいてから付いていくプレーもするし、何をしてくるか、何をしたいのかが読めない。また、そんな相手との駆け引きを楽しんでいる印象がありましたね。

 中盤の選手は後ろに味方がいるので、リスクを負ってでもボールを奪いに行けて、自分からアタックする回数は多くなります。それに対してCBは、奪いにいってかわされた時のリスクを考えると、リアクションになることが多くなりますよね。

 そのうえで松田選手は、そうした相手にどうアクションを起こさせるか、どう仕掛けさせるかの駆け引きをしていて、それがうまかった。

 時には駆け引きに負けて、天を仰ぎながら相手にシュートを打たれているシーンがあって、すごく印象に残っています。そういう駆け引きをしながら、サッカーを楽しんでいる姿が彼らしいと思いました。




1位 今野泰幸(ジュビロ磐田)

 現役の頃に対戦していちばん嫌だったのが今野選手で、デュエルと聞いて真っ先に頭に浮かんだ名前でした。

 まずボールを取れる時、取れない時の判断がすばらしいですよね。そのうえで取りに来た時のしつこさとパワーがものすごいし、ファウルにならずにボールを奪い切ってしまえる。そこが今野選手の持ち味です。

 いつの間にか接近されていたり、ボールをコントロールしたところへ先回りされていたり、ファウルをせずに体ごと行く時もあれば、読み勝ちでボールと相手の間に体をスッと入れる時もある。ボールを奪いに行く時の選択が、とにかくクレバーな選手だと思います。

 ファウルをしないで奪い切れるのは、相手と接触した時に腰を落としながら、その相手の動きに合わせてついていけるということです。一発で行かず、相手と長く接触するような展開に持っていく。ここのうまさが、今野選手があれだけデュエルで勝てる一番の要因だと思います。

 実際に対戦した時は、本当にやりづらい相手でしたね。次のプレーをしようとしても体を当てられたり、しつこく足が出てきたり。体を入れるのもうまくて、入れてからの強さもありました。

 取られることもたくさんありましたし、取られなかったとしても次のプレーに影響があったりと、ただでは行かせてくれない選手でした。

福西崇史
ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県出身。新居浜工業高校から1995年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、チームの黄金期の主力としてプレーした。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場7得点。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、2009年に現役引退。現在は解説者として活躍中。

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