「孤独のグルメ」作者が政府に苦言 「ひとり外食もすべて一律規制はあまりに雑です」

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2021年06月14日 11:00  AERA dot.

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写真漫画「孤独のグルメ」原作者の久住昌之氏(C)朝日新聞社
漫画「孤独のグルメ」原作者の久住昌之氏(C)朝日新聞社
コロナ禍で多くの飲食店が時短営業などを強いられるなかで、まるで「外食=悪」のように捉えられる風潮も出てきてしまった。だが、問題なのは飲食中の会話による飛沫感染であり、外食自体ではない。漫画「孤独のグルメ」原作者の久住昌之氏も「政府の対応はあまりに雑」と話し、一人メシの実践を続けている。同作の主人公・井之頭五郎がふらっと立ち寄った店で一人飯を堪能するスタイルは、飛沫拡散防止という点でも理想的だ。久住氏に、コロナ時代だからこそできる「一人メシ」の楽しみ方を聞いた。

【孤独のグルメ】東大の学食で臆せず「一人飯」を実践する五郎

*  *  *
――コロナ禍になってから、外食の頻度は変わりましたか。

 外食は少なくなりました。休業や時短のお店は多いですし、仕事帰りに一杯飲んでひと息つこうとしても、店が全然開いていないですから。この状況がダラダラ続いて、お店は、今後どうなってしまうのか心配です。昔から行っているラーメン屋さんも3軒閉店しました。本当に寂しい。

 僕は基本的に仕事場で一人でマンガや文章や音楽を作っているので、食事は外食が多いです。仕事終わりは深夜になることが多いので、電車も終わっているし、普段行くのは、地元(東京)の同じ店ばかりです。なので、そのお店が閉まってるととても困ります。

――感染源として飲食店がしばしばやり玉にあげられ、閉店してしまうお店も後を絶ちません。こうした状況をどのようにとらえていますか。

複数人での飲食を理由に飲食店が一律で制限されるのは、どうなんだと思ってしまいますね。毎食でなくとも、一人での外食が日常な人は、少なくないと思います。また、小さな飲食店は、そういう人にも支えられている部分も大きいはずです。政府はそのあたりの対処が、ものすごくおおざっぱだと思っています。

――おおざっぱな規制を続ける行政に対して伝えたいことは何ですか。

 居酒屋を全部酒類禁止にするのは、あまりに雑な考えです。居酒屋は酔っ払って騒ぎたい人だけの場所ではない。騒ぎたい人がすべてではありません。静かにひとりリラックスしたい人もいるし、マスクをしながらでもいいから、お酒を飲んでおいしいものを食べて静かに語り合いたい人たちもいるでしょう。

 ひとりで来た人にはアルコールも出すとか、ある程度以上の人数の客は、入店を断るとか、方法はいろいろとある。ルールと言うんじゃなくても、店主もビシッと断ればいいし、客もそれで感染を防ぎ、好きな店を守っていきましょう、というキャンペーンをすればいいのに。

 それに、酒類禁止にしても、状況はちっとも良くならない。原因が見えないのに同じ規制だけかけ続けても何も変わらない。最初の緊急事態宣言の時のライブハウスをやり玉にあげてたのだってそうですよね。ギャーギャーと騒ぐようなライブハウスなんてごく一部です。多くのライヴは満員には程遠い。静かでもみんな楽しんでる。というか、そもそもオールスタンディングで満員なライブなんてごくごく一部です。それを全部やめさせた。飲食店やライブハウスの実情を、政府は全然知らないし、知ろうともしないで、悪者に仕立てて、対策をしてるような形だけ整えた。

――政治家をはじめ、「会食」をやめられない人もいます。

 政治家がさかんに「会食」などと言っているのを見て、違和感を覚えます。僕の場合、会食みたいなことは一年に数回、地方でライブの打ち上げとかだけで、まず非日常です。一般市民はそんな毎晩毎晩、会食なんかしない。家族や同僚と「仕事後に夕飯の時、ビールや焼酎を軽く」というのが、日常じゃないですか?

 国のトップの人たちは、自分たちの習慣を当てはめようとするから、変なことになる。そりゃ「いつまでもただ延長延長って、俺たちの生活や我慢なんか知ったこっちゃないんだな」って思って、店を遅くまで開けて酒を出しちゃう店主だって出てきますよ。

――「孤独のグルメ」で五郎が一人メシを堪能する姿は、無理なく感染対策を続けられるヒントになるのでは。

「GoToゴロー」なんてキャンペーンを作って、一人で来店した人が優遇されるクーポンを配る、なんて冗談を言ったりしてたんだけど。それで、皆が五郎になったつもりで一人メシを楽しむ「五郎ちゃんごっこ」をすれば、遊びながら感染も抑えられて、店への打撃も少しは軽くなるんじゃないかな。

 頭の中でゴローになりきって、楽しんでみるといいと思います。何を食べたらいいのか、五郎風のナレーション付きで悩んでみたり、他の客が食べているメニューを見て「しまった、あっちにすればよかった」とか(笑)。頭の中って自由です。口に出さずに脳内だけなら、「まっずいなー、店長食ってみろよこれ!」とかなんでも言える(笑)。

――一人メシが当たり前にできる人もいれば、なじみのない店などでは抵抗があるという人もいます。興味はあるけれどためらっている「一人メシ入門者」に向けて、何かアドバイスがあれば教えてください。

 一人で楽しまなきゃという“やらなきゃ感”を出してしまうと、なんだか肩に力が入ってしまってそれこそ楽しめないでしょう。作中の五郎も、何ひとつがんばってないし、ガツガツ楽しもうとはしていない。ただ、腹が減った、仕方ねえなといった感じでいいと思います。(五郎も)そんなに、おいしいおいしい騒いでないじゃないですか(笑)。

「吉野家ひとりめしデビュー」みたいな身近なところから始めてみればいいんじゃないですかね。案外自意識過剰なだけだと気づくはずです。日本では、一人客に対してたいがい親切です。

――いち市民として、そして「孤独のグルメ」作者として、実際に飲食店を支援するような心がけがあれば教えてください。

 僕は、時短営業をしている飲食店に行くために、早めに仕事を切り上げてます。そのために早起きしてます。飲食店の支援は、結局行って食べる以外にない。それ以外、漫画家の僕にできることは、面白い漫画を描くこと。それに尽きます。ちょっとクスッとしたら、それだけで少し気が楽になる。一緒に少しでも笑って、この苦しい日々を乗り越えて、居酒屋のおいしいビールで乾杯したいです。

(構成=AERA dot.編集部・飯塚大和)

このニュースに関するつぶやき

  • 私は一人で黙って飲むタイプなので・・・。でも隣の席や他の席は賑やかだからなぁ・・・。
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  • ひとりで黙って食べていても、横で騒がれたら意味がない。必要だったのは「感染についての正確な知識」なんだが、いまだに理解できてない人も少なくないからなぁ・・・
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