エルドレッド「ざるうどんが恋しい」。カープ史上最も愛された助っ人が選手時代の思い出や大谷翔平を語った

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2021年06月15日 11:21  webスポルティーバ

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2012〜2018年の7シーズンにわたって広島カープに在籍したブラッド・エルドレッド氏。現役引退を発表した2019年には、外国人選手では異例となる引退セレモニーが行なわれた。そのプレーや人柄から、カープ史上「最も愛された助っ人」と呼ばれ、現在はカープの駐米スカウトを務めるエルドレッド氏に独占インタビュー。引退後の生活やカープ時代の思い出、自身がスカウトしたケビン・クロン選手への期待などについて語ってもらった。




―― 現役を引退して約2年。現在はどのように過ごしていますか?

「カープの駐米スカウトとしてアメリカ各地で試合を視察しています。今日(6月9日に取材)もオハイオ州トレドにいて、今、マイナーリーグの視察からホテルに帰ってきたところ。家にいると4人娘が邪魔してくるので(笑)、取材を受けるのは遠征先のホテルが適していますね」

―― 引退後、家族と一緒に過ごす時間も増えたのでは?

「そうですね。家にいる時間は、家事をやったり、子どものスポーツの練習に付き合ったり。4人中2人がスポーツを習っていて、長女はバレーを、次女はバレーとソフトボールをやっています。自分が野球を始めた幼少期を見ているようで、楽しいです」

―― 今でも広島で過ごした日々を思い出しますか?

「もちろん! 子どもたちは僕の応援歌を覚えていて、家で歌ってます(笑)。スカウトとして野球の試合を観ている時、たまに不思議な気持ちに襲われるんです。選手時代は外から野球を見ることがあまりなかったので、『あぁ、家族はこうやって僕のプレーを観客席やテレビで見ていたんだ』って。そんな感慨とともに、広島の街並みやドライブで訪れた場所の景色が思い出されて......。すごく懐かしい気持ちになります」

―― 日本では、大谷翔平選手(エンジェルス)の活躍が連日報道されています。アメリカでも大谷選手は注目の的ですか?

「アメリカでも同じですよ。スポーツニュースも主役の日が多い。『105年ぶりに、先発登板した翌日に1番打者として試合に出場した!』とか、大谷は試合に出るだけで"ストーリー"になりますからね。正真正銘のスーパースターです」

―― 2013年シーズンの交流戦では、大谷投手から死球を受けて激高する姿もありました。

「実はそのシーズンの開幕直後、巨人戦でデッドボールを受けて右手(右第5中手骨)を骨折したんです。それで6月に復帰した直後に、今度は左手に大谷から死球を受けたことで、『またケガをしてプレーできなくなったら......』という焦りがあって。そのフラストレーションが出てしまった。大谷が故意じゃないことはわかっていたし、彼に対して怒ったというわけではないんです」

―― そんな大谷選手から、2016年の日本シリーズ第1戦でバックスクリーンにホームランを打ちました。

「当時からすでに傑出したピッチャーでしたが、大谷の場合、その後もみるみる成長していった印象があります。

 それにしても、大谷のインパクトは絶大ですね。それまで、同じような才能、ポテンシャルがある選手でも、どこかのタイミングで投手か野手か選ぶ必要があった。そんな常識をひとりで変えてしまったわけですから。その存在は"スペシャル"という言葉に尽きると思います」

―― 一方、筒香嘉智選手は今シーズン途中、レイズからドジャースに移籍。一部から「速球(ファストボール)への対応」が課題に挙げられていますが、どう見ていますか?

「ファストボールの速さそのものよりも、(日米間の)投手の"角度"の違いに戸惑っている部分があるのかなと。アメリカのピッチャーは、概して背が高く、それを生かして、上から下へ向かうボールを投げます。一方、日本のピッチャーは、(下半身を使って)沈んで、ストライドを長くして投げるピッチャーが多い。それゆえ日本には、球が下から上に向かう、ホップする投手が多い気がしますね。僕も来日直後、ファストボールの質の違いに慣れるのは苦労しました。あとは慣れていって、日本にいた頃のような『筒香』を体現できれば、結果はついてくると思います」

―― カープについてうかがいます。今でも試合はチェックしますか?

「もちろん。ほぼ毎日、試合結果と選手成績はチェックしています」

―― カープは昨シーズン5位でフィニッシュし、現在(6月9日)も5位に位置しています。2016〜18年の3連覇を知るエルドレッドスカウトから見て、カープは今、どのような段階に差しかかっていると思いますか?

「5位の理由は簡単。『エルドレッド』がいないからだね(笑)。まあそれは冗談として、チームには化学反応のようなものがある。僕がカープへ入団した時(2012年)、チームが連敗することは珍しくありませんでした。当時、ルーキーだった菊池(涼介)をはじめ、その後スターになる選手が入団したばかりだった。菊池や鈴木誠也(2013年入団)、田中広輔(2014年入団)といった"ヤングボーイズ"の成長と、石原慶幸さんや黒田博樹さん、新井貴浩さんといったベテランの力が見事に組み合わさったのが、3連覇の時期だったのかなと。

 今は、次なる"ヤングボーイズ"にとって雌伏の時。彼らがブレイクスルーして、チームにいい化学反応が起きれば、また常勝チームになれると思います。だから若手の選手たちは、菊池や田中の背中を見て、成長していってほしいですね」

―― 駐米スカウトとして、外国人選手を発掘する際に注目しているポイントは?

「最も重視しているのは、野球に対する『アプローチ』です。パワーのある選手、ヒットを打てる選手はいても、毎打席、明確な目的をもって打席に立つバッターは少ない。パワーがあるからといって、大振り一辺倒の選手よりも、カウントだったり、前の打席の課題だったりを意識して打席に立つ選手のほうが、監督も起用しやすいですよね。そのため、ネクストバッターズサークルでの仕草や、ベンチでの振る舞いも注視しています」

―― 今シーズンからカープでプレーするクロン選手は、エルドレッドスカウトが高く評価したプレーヤーだったんですよね。

「そうですね。日本に向かう際、クロンには『日本の文化、環境に対してオープンマインドになること』『エゴを出さないこと』を伝えましたが、コロナの影響もあって、イレギュラーなことも多々あったと思います。僕がクロンの立場でも苦労したでしょう。

 ただ、クロンには間違いなくポテンシャルがある。さっき言った『アプローチ』を場面によって変えられる選手ですし、日本の野球に慣れていけば、カープの力になれるはずです」

―― 結果が求められるプロ選手とあって、エゴとチームプレーの境は難しいケースもあると思います。そのあたりはどのように考えていましたか?

「僕で言えば、最後のシーズン、代打での出場が増えて、正直『もっと使ってほしい』と思うこともありました。でもそこで、どう考えるかだと思います。カープのラストシーズンの時、僕は38歳でした。年齢的に他の選手のサポートをすることも、僕の役割だと考えた。チームメイトのメンタルをケアするために相談に乗ったり、アドバイスをしたり。自分の結果にこだわると同時に、チームにどう貢献するかという視点も大切です」

―― クロン選手は"ネクスト・エルドレッド"と呼ばれるほど期待されていますが、外国人選手が日本で活躍するために必要なことは?

「まずは選手としてプロであること。結果にこだわって、チームに貢献することは欠かせません。それに加えて、カープでいえば広島という街と、所属するチームに馴染もうとする姿勢も不可欠ですね。カープに在籍していた際、僕もチームメイトとできるだけ多く話すこと、文化を受け入れることを心がけました。

 それで言うと、妻には感謝したいですね。彼女も積極的に外出したり、友人を家に招いたりして、すっかり広島に馴染んでいました。そんな彼女の姿勢にずいぶん助けてもらったと思います」

―― カープに在籍した7年間で、いちばん印象に残った出来事は?

「アメリカで『日本の野球はどうだった?』と聞かれる時によく言うのですが、いちばんはファンの違いです。アメリカでプレーしていた際、試合でヒットを打てないと『何をやっているんだ?』とか、ヤジがすごくて。一方、カープに入団した当初、1試合で3三振した日があったんです。『はぁ、これではダメだ。ファンにも怒られる』と思いながら、試合後、タクシーを待っていたら、ファンやタクシー運転手が『応援しているよ』『こっちのタクシーに乗りなよ』って話しかけてくれて。そんな温かいファンがいたからこそ、『よし、明日こそ打とう』と前向きになれました」

―― もし今、広島に来られるとしたら、特に話したいチームメイトは?

「チームメイトはみんな大好きだったし、忘れられない時間を過ごせました。まずは、西村(公良)通訳かな。本当に彼はいつも一緒にいてくれたベストフレンド。現役時代、彼と話す時間は僕にとってリフレッシュになっていました。ほかに、1年目に石原さんが気にかけてくれたことも忘れられません。来日当初、家族をアメリカに残して僕だけ日本にいたのですが、石原さんが声をかけてくれたことで、気持ちが楽になったことを覚えています。

 あとは『ざるうどん』が恋しい(笑)。試合の前によく食べていたので、日本に行けた際は、絶対食べます!」

―― 最後にファンの方へメッセージを。

「引退セレモニーの際、多くのファンがマツダスタジアムに駆けつけてくれたこと、大きな声援を送ってくれたことは、一生忘れません。コロナの影響で1年以上日本に行けていないのですが、カープファミリーの一員としてアメリカで頑張っています。またみなさんと広島で会える日が待ち遠しいです。Go Carp!」


【Profile】
ブラッド・エルドレッド
1980年生まれ、アメリカ・フロリダ州出身。2002年MLBドラフト6巡目指名でパイレーツに入団。その後、ロッキーズ、タイガースを経て、2012年シーズン途中に広島カープに入団した。2014年に本塁打王を獲得、2016年の日本シリーズでは3戦連続ホームランを放ち、敢闘賞に輝いた。2018年限りでカープを退団し、2019年に現役引退を発表。同年、外国人選手としては異例の引退セレモニーが行なわれた。現在はカープの駐米スカウトを務める。

このニュースに関するつぶやき

  • コーチで復帰して、クロンを育ててみないか?君も一年目はダメだったけど、二年目から開花した。
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