つながらない「24時間子供SOSダイヤル」実態は? NPOが調査 「小さな希望を踏みにじることに」

75

2021年06月16日 07:00  ウィズニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ウィズニュース

写真共通ダイヤルでも、つながった先の対応はバラバラという調査結果が=写真はイメージです=pixta
共通ダイヤルでも、つながった先の対応はバラバラという調査結果が=写真はイメージです=pixta

いじめなど子どもが悩みを相談できる先として、文科省が設置した全国共通ダイヤル「24時間子供SOSダイヤル」。メディアなどで紹介される機会も多い相談窓口ですが、実は、子どもたちから「24時間とあるのにつながらなかった」などの声が寄せられています。10代のための相談窓口まとめサイト「Mex(ミークス)」(NPO法人3keys運営)が「24時間子供SOSダイヤル」を運営している都道府県教育委員会などに調査をすると、運営者ごとにその運用が異なることが明らかになりました。子どもたちの決死の訴えに、大人はどのようなサポートをすべきなのか、考えます。(withnews編集部・金澤ひかり)

【マンガ集】虐待、いじめ…子どもの悩み、実体験聞き取りマンガに ネットいじめから救った「定時メール」

文科省「広く悩み全般を扱っている」
「24時間子供SOSダイヤル」とは「いじめ問題やその他の子供のSOS全般に悩む子どもや保護者等が、いつでも相談機関に相談できるよう、都道府県及び指定都市教育委員会などが夜間・休日を含めて24時間対応可能な相談体制を整備」(文科省HPより)するというもの。
文科省によると、全国の統一ダイヤルができたのは、2007年。「24時間子供SOSダイヤル」の前身、「24時間いじめ相談ダイヤル」が設置されたときのことです。それ以前から各都道府県などが独自に実施していた相談窓口がありましたが、統一ダイヤルを設置したことで、その番号に電話をすれば、原則として電話をかけた所在地の教育委員会などの指定相談窓口に接続されるようになりました。

その後、2015年に川崎市の多摩川河川敷で中学1年生の男子生徒が殺された事件を機に「子どもたちのSOSを大人が受け止める必要性が改めて指摘され」(文科省)、ダイヤル名が現在の「24時間子供SOSダイヤル」となり、翌年度からは通話料が無料になりました。文科省は、このダイヤルについて「広く悩み全般を扱っている」と説明します。

ダイヤル掲載媒体が、実態を調査
このダイヤルを、子どもに向けた相談先として掲載している媒体の一つが、10代のための相談窓口まとめサイト「Mex」です。Mexでは、200以上の相談窓口を掲載する中で、その窓口の運営実態なども合わせて調査し、より子どもたちにとって相談しやすい窓口の情報を提供しようとしています。

しかし、行政が運営している窓口の一つとして掲載している「24時間子供SOSダイヤル」については、多くの子どもたちに利用されている一方で、対象年齢や取り扱っている相談内容の詳細などに関する報告資料が「ほとんどなかった」といいます。

そのため、Mexを運営するNPO法人3keys(代表・森山誉恵)では、2020年11月から2021年1月にかけて運営主体となっている全国の各教育委員会など67箇所(有効回答52)に実態調査をしました。すると、「24時間子供SOSダイヤル」が共通ダイヤルであるにも関わらず、対応する年齢や相談内容がそれぞれで異なる実態が浮かび上がってきました。

対象者、受け付ける相談内容もバラバラ
たとえば、広島県では小学生未満から大学生まで幅広い年齢の対象者の相談に応じていますが、浜松市では小中学生のみを対象にしているなどの実態がありました。また、千葉県と千葉市では、対象者が異なる(県は未成年は全員対象、市は小学生未満・学校などに在学していない未成年、中退者、大学生は対象外)こともわかりました。

また、同じ教育委員会などが運営している窓口でも、24時間のうち、自主運営している時間帯と委託運営している時間帯とで対象年齢が統一されていないケースもあったとのことです。

さらには受け付けている相談内容がバラバラだという結果も。
「学校内のいじめには対応しているが、学校外のいじめには対応していない」「妊娠にまつわる相談や、性的マイノリティーやうつなどの心身の不調、犯罪被害・非行には対応していない」など、対応する内容が「相談全般」ではない教育委員会などもありました。

文科省では、ダイヤルのHPで「都道府県及び指定都市教育委員会の実状により、児童相談所・警察・いのちの電話協会・臨床心理士会等、様々な相談機関と連携協力」としていることなどから、それぞれ専門性が異なる相談員が窓口で対応にあたっていることが、受け付ける相談内容の偏りにつながっていると考えられます。

子どもたちからの声「助けてくれるんじゃないの?」
また、Mexに届く声の中には、「24時間って書いてあるのに 電話がつながらない 」「どうして夜中はダメなの? 助けてくれるんじゃないの ?」といったものがあったことから、3keysでは、電話の接続率や利用者アンケートをどのくらい実施しているかについても調査をしました。
すると、接続率について調査しているのはわずか3.8%、利用者アンケートを行っていると答えた教育委員会などは、ありませんでした。

この結果を受けて、3keys代表の森山誉恵さんは「窓口の周知を行う機会が多い行政は接続率の調査をすべき。電話をかけてくる子どもの多さに応じて体制も強化しなければ、子どもたちは二度とかけてくることはありません」と指摘します。

奇跡的な「相談」がつながらないとはつまり
森山さんは、子どもたちが相談窓口を頼ってきてくれること自体が「奇跡的なこと」であると強調します。

「子どもたちって本当に相談しません。相談をするということには、すごく覚悟が必要で、そのこと自体が奇跡的なことだったりします。なにかにちょっと刺激を受けて『かけてみようかな』と思っている可能性もあります。どうにもいかなくなり、やっとかけた電話がつながらないというのはしんどすぎることではないでしょうか」

「電話がつながらなかったり、『相談の対象ではない』と言われることは、その小さな希望を踏みにじることになります」

「責任を持てる範囲をわきまえて広報を」
とはいえ、相談窓口の周知がなされ、子どもたちが自らのSOSを出しやすくなっていく社会は望ましいものです。運営者には今後、どのようなことが期待されるのでしょうか。

森山さんは「対象や範囲など、運営側が責任を持てる範囲をわきまえて広報をしていくことが必要です。そうでなければ、そのゆがみの影響は、声を上げられない子どもたちをはじめとした弱者が受けることになります」と話します。
「一方で、近年、公的機関が子どもの支援などに十分に対応ができない中で、民間のNPO等が異常な支援者数に対応しているケースも見受けられます。いち民間団体として、虐待やいじめ、貧困など一人の子どもを支えるだけでも難しい問題をどこまで支えられるのか、少ないNPOなどに責任を押し付けている異常な事態になっていないか、振り返る必要があるかと思っています」

また、この調査の目的について森山さんは「教育委員会などを責めることが目的ではない」としています。
「窓口の趣旨や実態を正しく把握した上で、実態に沿った形で子どもたちに周知していくこと」や「実態を知った上で、窓口が趣旨に沿った運営ができるような予算・人員配置などを担当省庁などに心がけてほしい」と求めています。

文科省の見解は
「24時間子供SOSダイヤル」を設置している文科省の担当者は、「つながらない」「話を聞いてもらえなかった」という訴えが子どもたちからあることについては「そのような声は聞いている」とした上で、「運営をする際の補助金の3分の1は国が出しているが、3分の2は地方が持っている事業。相談員を増やすよう要求はしているが、一律にはなかなか言いにくい」といいます。

また、「つながらない」という声がある中で、窓口の積極的な広報を続けていることが、かえって窓口につながりにくい子どもを増やしてしまうことにつながらないかとの問いには、「国としては、それぞれバラバラだった窓口を一つにしてわかりやすくした。積極的に周知し、事業も充実させたいと思っている」との回答。「相談員も減っている中で、厚労省などが設置している他の窓口も活用してほしい」と話しています。

また、各教育委員会などの窓口運用の実態を把握しているのかについて尋ねると、「内部資料の取り扱いとなり、一般に公表していないので回答を控えさせていただきます」との返答でした。

     ◇

3keysが行った調査の詳細はこちら(https://3keys.jp/news/11823/)から見ることができます。

このニュースに関するつぶやき

  • どうせ繋がった所で「我慢が足りない」とか「良い事だと考えてみよう」とか言って傷口抉って来るのがオチだから。
    • イイネ!0
    • コメント 5件
  • 介護にしても医療にしても教育にしても、積極的に金を出して労力に見合う給与等を国が保証したりしないと人は増えない。「やりがい」とかじゃなく…。
    • イイネ!59
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(49件)

前日のランキングへ

ニュース設定