『男はつらいよ』の山田洋次監督が創り出した映画『キネマの神様』を原田マハが、ディレクターズ・カットとして小説化! まったく新しい物語に!

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2021年06月16日 11:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『キネマの神様』(原田マハ/文藝春秋)
『キネマの神様』(原田マハ/文藝春秋)

『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』などで知られる山田洋次監督による映画『キネマの神様』が2021年8月に公開される。描かれるのは、“映画の神様”を信じ続けた男の姿。壊れかけた家族が映画によって救われていく奇跡を描いた物語だ。昨年逝去した志村けんが菅田将暉とともにW主演をつとめる予定だったが、沢田研二がその遺志を継ぐことに。その他にも永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶなど豪華俳優陣が出演。この夏、大きな話題を呼ぶこと間違いなしの作品なのだ。

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 原作は、原田マハさんによる同名小説『キネマの神様』(文藝春秋)。しかし、実は、映画版は、原作とは内容が大きく異なるらしい。原作の登場人物の個性的なキャラクターを生かしてはいるが、山田洋次監督により、ストーリーにはかなりの変更が加えられているのだという。

 山田洋次監督が創り出した「キネマの神様」は一体どのような内容なのだろうか。映画の公開まで待ちきれないという映画ファンや原作ファンは『キネマの神様 ディレクターズ・カット』(文藝春秋)をぜひ読んでみてほしい。この作品は、原作小説『キネマの神様』をもとに山田洋次監督が生み出した映画を、さらに原田マハさん自身が小説化した一冊。山田洋次と原田マハさんの2人の才能がかけ合わさった奇跡のコラボ作品なのだ。

 原作とディレクターズ・カットはどう違うのか。まずは、原作のあらすじをおさらいしよう。

 原作の主人公は、39歳独身の歩。彼女が会社に辞表を提出したその日は、奇しくも映画とギャンブルが趣味の父・ゴウが突然倒れた日だった。しかも、ゴウが多額の借金を抱えていることも発覚。歩は仕事探しに苦戦するが、ある日、ゴウが映画雑誌『映友』に歩の文章を投稿したのをきっかけに、歩は『映友』の編集部に採用されることに。ひょんなことからゴウも映画ブログをスタートする…というのが話の筋だ。

 一方で、ディレクターズ・カットは、登場人物はほぼ同じだが、物語はまるで別物。特にゴウの過去が多く描かれているのが特徴的だ。ディレクターズ・カットでは、歩はバツイチ。一人息子・勇太とともに実家に出戻り、父母と4人で暮らしている。ギャンブルばかりで家族に呆れられていた父・ゴウは、50年ほど前は、映画の撮影所で助監督として働いていたのだという。映写技師のテラシンやスター女優の園子、そして、撮影所近くの食堂の娘・淑子とともに、青春の時を駆け抜けていた。だが、とある事件をきっかけに、ゴウは撮影所を辞めることに。そして、2020年、ゴウの孫の勇太は、古びた映画の脚本を手に取る。そのタイトルは、「キネマの神様」。それはゴウが脚本を書きながらも、撮影を放棄した作品だった。勇太の力を借り、「キネマの神様」を新しく現代版として蘇らせることになるゴウ。ゴウは勇太とともに無我夢中で脚本執筆に励んでいき…。

 あらすじをみるだけでも、ディレクターズ・カットが、原作とは別の物語であることは明らかだろう。どちらも家族の再生と、映画のもつ力を描いてはいるが、まるきり別の物語といっていいのだ。だが、どちらの作品にもグッとくる。ギャンブル三昧だったゴウが夢中になれるものを見つけるさまは微笑ましいし、何よりゴウがもたらす奇跡は、原作にしろ、ディレクターズ・カットにしろ、あまりにも感動的だ。家族の絆が再び結ばれていくさまは圧巻。さらに、ゴウによって、親友・テラシンの営む名画座の運命までもが変わっていくことにも涙が込み上げた。映画は人と人を繋いでくれるものなのか。こんなにも大きな力があるものか。どちらの作品も、読み終えた時、心が温かい気持ちで満たされた。

 原田さん自身も、山田洋次監督の脚本の初稿を読んだ時、深い感銘を受けたのだそうだ。監督は原作で重要なふたつのエッセンス、「映画愛」と「家族愛」を抽出して深めてみせた。そして、『キネマの神様』に自身の若き日を重ねて、監督自身のものにしていた。それは、原作に対する深い読解と敬意、真の想像力がなければできないこと。そんな山田監督の『キネマの神様』をさらに発展させて、原田マハさんはディレクターズ・カットとして小説に仕立て上げたのだ。

 映画には、神様が宿るに違いない。それも、とびきり優しい神様がついているに違いない。原作が面白いのはもちろんのこと、山田監督と原田さんの才能がかけ合わさったディレクターズ・カットにもワクワクさせられる。原作を既読だという人も、ディレクターズ・カットでは、新たな感動を味わうことができるだろう。映画がもたらす奇跡に胸があつくさせられることは間違いない。原作、映画を見比べながら、ディレクターズ・カットをぜひ読んでみてほしい。映画を愛するすべての人に味わってほしい傑作だ。

文=アサトーミナミ

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