60代でBTSファンに 「推し活」とシニアが相性のいい理由

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2021年06月16日 11:30  AERA dot.

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写真BTS (GettyImages)
BTS (GettyImages)
 好きな人や物(=推[お]し)を応援する「推し活」が話題だ。アイドルファンの若者たちだけの話かと思いきや、さにあらず。心と時間とお金に余裕のあるシニア世代こそ、「推し活」を最大限に楽しめる可能性があるという。あなたも「沼」にはまってみたら、人生が輝き始めるかも!?

【写真】これが沼にはまった62歳女性の部屋の「推しコーナー」

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「推しって何かしら、と思ったんですけど、気づいたら大切な存在になっていました」

 神戸市の求職中の女性(62)の推しはBTS。世界を席巻する韓国出身の7人組男性グループだ。今年2月、女性は「ARMY」と呼ばれるBTSファンになった。特定のメンバーでなくグループ全体を応援する「ハコ推し」だ。

 一人暮らしの家で、BTSを聞いて目を覚ます。家事のときは「Dynamite」でテンションを上げる。夜はテーブルや壁にディスプレーした「推しコーナー」を眺める時間。ブロマイドや、写真を切り抜いたアクリル板、ARMY仲間のプレゼントに癒やされる。

「人生で初めて『沼』に落ちました」

 推しにどっぷりはまることを沼という。子育てと仕事が一段落し、自分の時間を推しにささげている。バラエティー番組でメンバーが「10時間以上もレッスンして死ぬかと思った」と言うのを聞き、本当に心配になった。

「プロとしてすごいけど、そこまでやって大丈夫なの、と。完全にオンマ(母親)目線ですね」

 推し活でよく使われるキーワードが「尊い」。最初は抵抗があったが、いつしか自然と使うようになっていたという。

「彼らの頑張る姿やファンを思う言葉に触れ、熱い気持ちがこみ上げるのですが、言葉にできない。『ああ、本当に愛しくて尊い』と自然と言葉が出ました。BTSとの出会いは、人生のご褒美。彼らは私の元気の源です」

 15年前、自営業の夫は40代で亡くなった。借金を返済しながら、3人の子どもを育て働いた。「ジェットコースターのような人生で、推しどころではなかった」

 それが昨年、親友から勧められ韓国ドラマ「愛の不時着」に夢中になった。ドラマにARMYが登場したのを機に、BTSの「Dynamite」を聞き、ファンになった。

 推し活で人間関係も広がった。女性はツイッターに推し活専用アカウントを持っている。気になる情報はシェアし、フォロワーとコメントを送り合っている。

「感想を言い合うと、若い人とも『わかる』『そういう見方もあるんだ』と共感できます。気が合う32歳の女性は、親友だねと言ってくれました。私をオンニ(姉)と慕ってくれる人もいます。リアルな親友は3人でしたが、友達が増えました」

 推し活は元々、若者発のカルチャーだ。アイドルにのめり込む女子高生を描いた宇佐見りんの芥川賞小説『推し、燃ゆ』は今年上半期のベストセラー総合1位になった。だが、意外なことに推し活とシニア世代との相性はバツグンだった。『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』の著書があるライターの横川良明氏は言う。

「お金や時間に限界がある若者に比べ、シニアは仕事も家庭も落ち着いて、余裕がある。今はSNSを活用することで交友関係を広げることもできますし、心の中に大切な人がいることで、新たな生きがいにつながります」

 推しの熱愛報道などに一喜一憂してしまう若者は少なくないが、シニア世代は違うという。

「推しが結婚しても子どものような感覚で、祝福できるのかもしれません。人生経験豊富だから、自分の愛情を押しつけず、過剰にならない応援ができるのでしょう」

 長く推し活を続けることで見えてくる境地もある。名古屋市に住む主婦(71)は、17年前、娘から勧められた韓国ドラマ「冬のソナタ」を観て、どはまり。ヨン様ことペ・ヨンジュンのファンになった。仲間内からは「ユジンちゃん」と呼ばれている。

「イベント予約のためにインターネットを覚え、公式サイトの掲示板に書き込みすることでお友達と出会えた。ここ数年、掲示板は動いていませんが、ヨン友さんとスマホでLINEし、インスタグラムもやってます。夫はパソコンが使えないから、ヨン様と出会えなかったら私も文明についていけなかったでしょう」

 当時築いたものはいまも財産になっている。

「全盛期は名古屋の店で、ヨン友さん40人と集まって、ヨン様の誕生日会を開きました。韓国の方角を見て『おめでとう』と言って、ケーキを食べた。ヨン様が映画やドラマに出演したときも、お祝いに集まりました」

 いまは人数が少なくなったものの、集まりは年に一度、20人くらいで続いているという。

「ここ数年、ヨン様の出演がないので昔ほどの熱量ではありません。みんなもヨン様のことはあまり話さず、年金や病気や介護の話が多いですね。いい人たちに巡り合えました。旅立ったヨン友さんもいますが、葬儀で旦那さんが『ヨン様を愛した人生だった』と泣いていた。ヨン様と私たちは家族なのだと思います」

 ファンたちの熱さに定評があるのは、演歌歌手の氷川きよし。6月8日、東京・中野で開かれたコンサートに記者もチケットを買って参加してみると、会場にはシニア世代の女性たちが詰めかけていた。感染症対策のため掛け声はなしだったが、縦方向にペンライトを振り、拍手で盛り上げる。和服での演歌から一変、ボディースーツに網タイツという衣装でロック調の激しい曲目になると、観客は演歌の倍くらいのスピードでペンライトを激しく振って盛り上げる。終演後は、そこかしこに集まり感想を共有するファンたちの姿があった。会場にいた東京都在住の女性(56)は氷川のデビュー当時、茶髪でピアス、イケメンな風貌が意外でファンになった。

「最近イメチェンしたけど、いいじゃんと思っている。kiina(キーナ)が輝きだして、私はもっとルンルンです」

 キーナは氷川の愛称。近年、ジェンダーレスな衣装でロックも歌うようになった氷川を見て、美しいと思ったという。

「デビューから20年たって、自然体で生きているように感じる。『自分を信じて』と歌うキーナに励まされています」

 推し活を語る人たちは皆、幸せそうだった。第二の人生、推しと歩んでみるのもいいかも。(井上有紀子)

※週刊朝日  2021年6月25日号

このニュースに関するつぶやき

  • こいつらを見たら旭日旗のタオルを首に巻き付けて・・・おっと誰か来た。
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  • バカなおばさんですよね。
    • イイネ!22
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