アインシュタインに聞く、コンビの適度な距離感を保つ「言葉づかい」と「スタンス」【インタビュー】

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2021年06月16日 19:11  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真アインシュタインの稲田直樹さん(左)と河井ゆずるさん(右)
アインシュタインの稲田直樹さん(左)と河井ゆずるさん(右)

 2019年、「第4回上方漫才協会大賞」よしもと漫才劇場男前芸人・ブサイク芸人ランキングでWトップを獲得し、注目を集めたアインシュタインの稲田直樹さんと河井ゆずるさん。2020年4月、大阪から東京に拠点をうつして以降、ますます活躍の場を広げている。結成10周年にあたる今年、全国10か所をまわる単独ツアーも開催中のお2人に、お互いの印象やコンビ仲を保つコツなどをうかがいました。

(取材・文=立花もも 撮影=島本絵梨佳)

アインシュタイン

――お2人はコンビを組む以前から交流があったんですよね。もともとは、お互いにどんな印象をお持ちでした?

河井ゆずるさん(以下、河井) いやあ、どえらかったですねえ。

――どえらかった?

河井 当時はまだ吉本の劇場内でも煙草が吸えたんですけど、ライブが終わってみんな帰っていくなか、稲田が舞台袖の喫煙所にひとりだけ残って煙草を吸ってて。この見た目で、まわりに誰もおらんのか。って思ったらなんか怖くて。まあ実際は同期とも仲良かったんですけど、ひとり煙草の印象が強烈で、鮮明に覚えていますね。

稲田直樹さん(以下、稲田) 煙草と言えば、僕が別のコンビを組んでて河井さんがピン芸人やったとき、一緒にそこで煙草吸うたことありましたね。2人ともネタバトルで落ちたとき。

河井 あったなあ。まあ、そんな感じで先輩・後輩としてしゃべったり飲みに行ったりする感じでした。

――稲田さんは、河井さんに対してどんな印象を。

稲田 いやあ、ブスやなあって。

河井 誰が言うてんねん。

稲田 あとはまあ、絵に描いたようなツッコミの人やなって思ってました。声が大きくて、浪花節で。観ていてなんか気持ちよかったんですよね。芸だけじゃなく、人間としても清々しいっていうか。飲み行ってもいっぱい飲ませてくれるし、服もくれるし、僕のまわりにはいないタイプの好青年。

アインシュタイン

――コンビを組もうと言い出したのは稲田さんなんですよね。

稲田 そうですね。一度、M-1でユニットを組んでもらって、その流れで。河井さんの好青年っぷりと僕の暗い感じの対比がわかりやすくていいな、って思ったんですけど……認識が甘かったなって思います。今はまだマシになりましたけど、当時の僕は河井さんの美貌をもってしても釣り合わないくらいカサカサで。

河井 掛け合わせてプラマイゼロの凸凹コンビをめざしていたはずなのに、凹みが想像以上に深かった。

稲田 マントル級でしたね。

河井 結果、スカスカの穴になってしまうという……。でもまあ、元から持ってるもんは変えられないじゃないですか。だからとりあえず、清潔に見えるよう身なりを整えようとか、肌が弱いんなら食べるもん気ぃつけなあかんで、とかそういうことを話して。まずはスタートラインに立てるように頑張ろう、って話しました。

アインシュタイン

――コンビを組んだことで、お2人の関係性は何か変わりました?

河井 いやー。変わってないですね。

稲田 コンビ組んだら敬語をやめる人たちもいますけど、僕らはあえて変えてないですし。なんかちょっと、恥ずかしくて。

河井 出会ってすぐに組んでたらまた違っただろうけど、知り合って3〜4年経ってましたしね。

稲田 河井さん、昔からようごはんに連れてってくれたんですよ。めっちゃ世話になったのに、コンビ組んだからって急にタメ口になるのは違和感があったんで。言葉づかいを変えなかったおかげで、適度な距離感を今も保ててんのかなとは思います。

――適度な距離感を保つために、意識していることはありますか?

稲田 ええ〜なんやろ。

河井 とくになんも意識はしてないですけど……僕がよく言うのは、交わる気がないってことですね。冷たく聞こえちゃうかもしれないですけど、相方に限らず僕以外の人間全員にそれは思っていて。血のつながった家族はまたちょっと違うかもしれんけど、誰に対しても「こうしてほしい」とか「なんでこうじゃないんやろ」って思いすぎると鬱憤が溜まるじゃないですか。

――近しい相手にほど、そう思ってしまいがちですよね。

河井 でも自分以外の人変えようとしてもしゃあないっていうか、変えるとするなら自分、って常に僕は思ってるんですよ。だから稲田にも、確かに身なりとか食生活には口出ししましたけど、仕事のスタートラインに立つための最低限であって、稲田本人を根本から変えようとは全然思ってない。ネタづくりのときに「こっちのほうがおもしろい」とか「いや、俺はこう思う」って主張することはあるけど、それも仕事をうまくいかせるためですから。

――そのスタンスは、若いときからですか?

河井 いや、全然。人並みにいろいろ失敗を経て、交わろうとしないのが一番、って結論に至りましたね。もちろん、まったく期待しないわけじゃないし、ほんまにいやなことだったら言うかもしれんけど、そう思ってたほうが自分がラクなんですよね。こと女性においては、価値観が100%あうなんてことはありえないですし。いちいちイライラして喧嘩するのも損じゃないですか。

稲田 よう知らんくせに生意気なことを。

河井 なんでや。お前より知ってるわ。

アインシュタイン

――稲田さんは、何か気をつけていることはありますか?

稲田 えー、そうですね。気持ちのよい挨拶を心がけております。

河井 それだけかい。

稲田 それだけってこともないですけど、それだけのことでみんな気持ちよくなれるじゃないですか。挨拶も自己紹介もない相手に「あなた誰?」って思いながら仕事するよりは……まあ、よう考えたらこっちもしてないわ、ってときもあるんですけど。

河井 あかんやん。

稲田 河井さんもいつも少年のように元気よく挨拶してますし、僕が好きな先輩にはみなさん、そういう朗らかさがあるっていうか。「つらいとき、しんどいときこそ」って言ってた人もいましたし、ええことやなって思います。

河井 確かに、愛想の悪い人が現場におると「なんやねん、こいつ」ってなるな。いつも元気な人が静かだと心配にはなるけど……楽しないことがあったとしても、それは自分の中だけにしまっといてくれ、って僕は思ってしまう。

――「交わらない」というスタンスからはズレてしまいますが、今、お互いに直してほしいところはありますか?

河井 見た目ですね。

稲田 またそういうこと。せこいわあ。

河井 いやだって、何回も鏡の前でチェックしてんのに、舞台出たらめちゃくちゃ太い糸くずつけてたりするやん。信じられん。なにを見てたんやって思う(笑)。

稲田 『マヨなか笑人』に出たときそんなことあったなあ。ゲストの高橋メアリージュンさんがめっちゃ笑ってくれた。

河井 そんな感じで、鏡見るなら糸くずとれ、とは思いますけどね。ほかはとくにないなあ。どうしても言いたいことは、思ったその場で言うし。

稲田 まあ、そうですね。コンビになってからプライベートの会話は減ったけど、言いたいことはラジオ番組とかで言ってる気がする。

アインシュタイン

――じゃあ、お互いの好きなところは。

稲田 ロリ顔。

河井 若々しいとか言えよ!

稲田 若々しいところです。

河井 言い直さんでええわ!

稲田 好きっていうか、助かってますね。河井さんのことをフレッシュな新人と勘違いされている方が多いので、とくに女性の興味を惹きつけてくれて。

河井 いやあ、そんな。

稲田 そんで河井さんのところに集まった若い女性たちを僕のファンとしてとりこんでいく。

河井 蜘蛛みたいなこと言うな。

――でも確かに、ネタをみると稲田さんのかわいらしさに惹きつけられますよね。

河井 ほんまですか? 家に帰って玄関開けてこの顔おったら怖いですよ。昔に比べて明るくなったとは思いますけど。

稲田 明るくしてたほうがお客さんも笑ってくれる、って思うようになりましたからね。「おもろいことだけしか言いませんよ」みたいに澄ましているより、「頑張ってるけど滑ってんなあ、でもなんか頑張ってんなあ」みたいな人のほうが、きっと見ていて楽しいだろうなって。あと僕、ずっと鼻が詰まってて。すぐ声も変になるんですけど、とある鼻うがい液を手に入れてからは、声も出るようになったんです。それでさらに明るくなれた気がします。

アインシュタイン

河井 お前の見た目で澄ましているのはあかん、ってみんなで言うてたんですよね。芸人っていうのはだいたい、ダウンタウンさんとかに憧れてこの世界に入ってくるから、最初は尖りたくなる気持ちもわかるんですけど。

稲田 芸人ってそういうもんやと思いこんでたんです。でも、かまいたちの山内さんやGAGの福井さんが、情けないところがおもしろい、という前例を見せてくれて、「お笑いってこれやん!」って思わせてくれた。そこからちょっとずつ変わりました。斜に構えていたころは、お客さんにも怯えていたから、見た目を自虐しても「かわいそうな人」みたいになって、全然笑ってもらえなくて。

河井 僕も、どういう触り方でいじっていいか、わからなかったですしね。

アインシュタイン

稲田 オドオドしながら、自虐して、ウケへんからまたオドオドして……っていう最悪のループ。でも明るくなるだけでお客さんの反応もよくなったし、口に出す言葉もたぶんちょっとずつ変わってきた。それまではブサイクな人やったら誰でもできるようなネタをやってたんですけど、僕って普通のブサイクの人より、2段階ぐらい上のステージにいるじゃないですか。

河井 上っていうのか下っていうのか。

稲田 僕だからこそできる話をしよう、って考えるようになってからも、変わった気がします。それをみんなが楽しそうに聞いてくれたら、嬉しい。河井さんが僕のことを「ブサイクを食べてる」ってアンケートに書いてくれたことがあって。めっちゃかっこいいやん、そのキャッチコピー、って思ったから、今はブサイクを食う男になっていきたい。

アインシュタイン

――『日刊サイゾー』のインタビューで、「ブスいじりは文化だ」っておっしゃってましたよね。〈一番あかんのは、ブスやなぁと思ってるのに言わへんとか。結局、それがバレてるっていうのが一番ダメなこと〉って。

稲田 そんなこと言ってないですよ。

河井 言ってたよ(笑)。

稲田 え? そうでした? じゃあそう……なのかな?

河井 ブスいじりに否定的な人もいると思うんですけど、やるほうもやられるほうも人を笑わせる仕事をしているから成立するものだと僕は思っていて。たとえば街歩きしていて出会った一般の方に「おまえ、ブサイクやなあ!」なんてツッコんだら深く傷つけてしまうかもしれない。同じ言葉を、同じトーンで言ったとしても、受け手や見る人によって意味が変わるってことはよくよく肝に銘じておかなきゃいけないなと思います。それってたぶん、人間関係全般に言えることですよね。

稲田 免許があったらええのにね。ブサイクいじりしていい免許。

河井 無免許いじりは即逮捕、みたいなのがあればわかりやすいんやけどね。その線引きは状況によって変わるし、芸人同士だったとしても、相手との信頼関係が築けているかにもよる。逆に稲田に「ブサイクって言われてばかりでかわいそう」なんて言うのは、失礼だなとも思うし。

稲田 罪な優しさ、ありますからね。

河井 守ることで守れてないっていうね。

アインシュタイン

稲田 自分のことブサイクだって思ってる人から、僕が明るくしていることで元気をもらえたってお声をいただくことがけっこうあるんですけど、嬉しいですね。そういう人たちのためにお笑いをやってるか、と言われると、別にそういうことでもないんですけど、見た人が楽しく笑ってくれるのがやっぱり、いちばんめざすところだから。

河井 人を傷つけるだけの笑いはもちろんあかんけど、一概に「ブサイクいじりはダメ」って決めるんじゃなく、それで救われる人もいるんだから、想像力をちゃんと働かせながら言葉を選んでいきたいなと思いますね。

――現在、結成10周年を記念した全国ライブツアーまっただなか。一部、コロナ禍の影響で延期になってしまった公演もありますが、節目を迎えた感慨はありますか?

河井 正直、あんまりなくて。10周年を肩書にいろんなところでライブさせてもらえるのはありがたいけど、10年経ったからどう、ってことはないな。来年、11周年記念ツアーをやってもええかなって思うくらい、特別感はない。

稲田 はじめてお笑いライブを観にきたっていうお客さんがけっこういて。そっちのほうが嬉しかったですね。

河井 延期になったところは残念やったし、はやくコロナも終息してほしいと思うけど、配信ライブが活性化してきたのは不幸中の幸いだなと思います。ほんま、どうしてこれまで誰も気づかなかったんやろう? コロナ禍以前から、選択肢としてはあったはずやのに。

稲田 劇場行かないと観れなかったのが観られるのは、嬉しいですよね。

河井 僕もやけど、オンラインチケット買ってる芸人はけっこういる。今までやったら「あのライブおもしろそうやな」と思っても仕事でなかなか行けなかったのが、移動中に観られるのはありがたい。

稲田 ただ、クレジットカードの番号を毎回入れなあかんねん。

河井 それはもうしゃーない。

稲田 覚えたわ。

河井 お笑いって、ほかのジャンルに比べて、みんながテレビ画面やスマホで観ることに慣れてるんですよね。だからあんまり抵抗なく、オンラインで楽しめる。今回のツアーの配信予定はないんですけど、そうやってオンとオフを使い分けながら可能性を探っていけたらいいんじゃないかなーと思います。

稲田 ライブでは、ライブでしかやらないネタもありますしね。

河井 地方によって劇場の規模も設備も違うから、演出のしかたも変わってくるし。

稲田 今回、はじめてお笑いライブを観にきた人が思った以上にいるってわかったので、そういう人でも楽しめるネタ構成にもしたい。

河井 ライブも、お客さんとのコミュニケーションやからね! 体調管理に気をつけつつ、みなさん、ぜひ足を運んでみてください。

アインシュタイン


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