携帯改革は7合目、「ボールはキャリアと販売店に渡された」 野村総研北氏が語る

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2021年06月17日 06:12  ITmedia Mobile

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写真「デジタル化」と「グリーン化」が携帯市場の変化のカギとなるという
「デジタル化」と「グリーン化」が携帯市場の変化のカギとなるという

 6月上旬、「ワイヤレスジャパン​2021」の中で、携帯電話販売店をテーマとした講演「コロナ禍によって加速するケータイ業界の変革とスマホ流通市場のこれから」が開催された。その最後の講演者として、野村総合研究所(NRI) パートナーの北俊一氏が登壇。「ケータイ業界の変革の行方」と題して携帯電話業界の現状について概括した。



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●携帯ショップが地域のIT拠点として進化できるかがカギ



 北氏は、NRIのコンサルタントとして、こうした携帯電話市場の改革に長らく関わってきた。ワイヤレスジャパンでは、2006年から講演を企画し、毎年登壇している。



 今回の講演では、総務省、携帯ショップ、中古携帯販売店の代表者もプレゼンテーションを行った。その内容はデジタル行政とスマホ活用支援(総務省 飯倉主税課長)、キャリアショップの現状と将来像(全携協 俣野通宏専務理事)、中古端末市場の拡大へ向けた取り組み(リユースモバイル・ジャパン 粟津浜一理事長)と三者三様だ。



 北氏はこの3者の講演内容に共通する政策課題が存在すると指摘する。それは「デジタル化」と「グリーン化」だ。



 携帯電話市場ではスマホの普及が進み、スマホを前提とした公共サービスの在り方が考えられるようになってきた。また、携帯市場では5Gのように、10年に一度、大幅な技術刷新が訪れる。そのとき、スマホの操作に不慣れな高齢者が取り残される「デジタルデバイド」は今後大きな社会課題となるだろう。



 そして、スマートフォン化の進展と、買い換えサイクルの長期化という2つの流れの中で、携帯ショップに求められる役割も変化している。つまり、携帯キャリアは従来の販売代理店制度を見直し、携帯ショップが持続可能なビジネスモデルへと変化する必要がある。そして携帯ショップは、地域のIT拠点としてサービスを充実させ、スマホに不慣れな高齢者のデジタル化を手助けする存在へと進化すれば、生存競争を勝ち抜けるだろう、というのが北氏の主張だ。



●スマホ流通市場の活性化には中古市場の整備が欠かせない



 一方、スマホはこれまで大量生産と1〜2年という短い買い換えサイクルで飛躍的な機能向上を続けてきたが、近年では高機能化が進み、買い換えサイクルが長期化しつつある。また、日本は世界的な地球温暖化対策の機運が高まり、日本は2030年度までの温室効果ガス削減目標を表明した。



 北氏は、地球環境に配慮しつつ、スマホ流通市場を活性化させるためには、中古市場の整備が欠かせないと主張する。高価で耐用期間が長くなっているスマホは、自動車業界のように中古流通を安定させることが、新品販売の活性化につながるという。



 中古車市場には、新車の需給をコントロールする仕組みが備わっている。例えば、景気後退時には中古車の需要が高まり、価格が後退する。すると一部の需要が新車に流れ、新車の販売が増える。景気拡大時には新車が多く売れ、中古車市場に供給される……。このような中古車市場のエコシステムを、買い換えサイクルが長期化しているスマホで再現できないかというのが、北氏の提案だ。



 なお、北氏は総務省の審議会委員としては2006年頃から携帯業界の競争ルール策定に参加している。また、携帯電話販売店の「あんしんショップ認定制度」や、中古携帯販売店の「リユースモバイル事業者認証制度」では、制度を監督する第三者委員会の委員として、それぞれの制度に関わっている。



●携帯ショップが利益を得られる制度設計が必要



 なぜ、携帯ショップの役割を見直す必要があるのか。その要因は、総務省が推し進めてきた政策にある。



 総務省はここ数年、携帯電話市場の競争促進を旗印に「通信と端末の完全分離」を重要政策として、積極的に推進してきた。その主要な内容は2020年度までにほとんど実施されている。通信サービスと端末のセット割引には値引き規制が入り、乗り換えの促進を阻む手数料やSIMロックも一定の規制が入っている。



 この総務省の政策が目指す携帯市場は、店頭で買ったスマホを、各キャリアの通信サービスと組み合わせて使う方式がスタンダードになる。今はその実現の途上で、北氏いわく「目指すべき世界の7合目」にあるという。



 携帯キャリアはこれまで代理店制度を活用して携帯ショップを全国に広げてきた。携帯ショップを運営する店舗のほとんどは代理店になっている。



 従来の携帯ショップのビジネスモデルは、携帯電話と通信回線のセット販売を前提に成り立つものだ。例えば、スマホの価格は本来、販売する店舗が自由に設定できる。しかし携帯ショップは、スマホ本体を販売するだけではほとんど利益を得ることができない。



 なぜなら、携帯ショップが仕入れる際はその直販価格が卸値となることが多いためだ。携帯ショップが“頭金”として利益分を上乗せして販売することもあるが、ほとんどの場合は、上乗せ幅に制約がある。携帯キャリア直営のオンラインショップでは、携帯ショップへ販売する卸値で直販していることも多く、それが実質的な基準価格として機能してしまうからだ。



 また、携帯キャリアは通信サービスを多く販売した携帯ショップに対して、報奨金という形で還元を行ってきた。この還元が携帯ショップにとっては重要な収益となっている。つまり、携帯ショップはスマホと通信サービスをセットにして販売し、携帯キャリアからの報奨金を得ることで初めて事業として成立する。完全分離の政策は、こうしたビジネスモデルを根底から覆すものだ。



 この政策による市場の変化が、さまざまな課題を浮き彫りにした。特に端末販売を巡っては、総務省で議論を深めていく必要があると北氏は指摘する。



 頭金の問題については「小売価格で売っても利益はゼロ。こんな商品は世の中にない」として、「キャリアはオンライン価格よりも安く卸して、粗利を乗せて売るべきではないか」と意見を表明した。



 一方で、過疎地域など、携帯ショップの選択肢が限られる地域では、粗利分を極端に多く上乗せする携帯ショップが現れる可能性もある。北氏は過剰な上乗せを避けつつ、携帯ショップが利益を得られる制度設計が必要だと補足している。



 北氏は「いくら行政、総務省が『あれやれ、これやれ、やっちゃいけない』と政策で誘導しても、最後はお客さまに一番近いキャリア、そしてスタッフが変われるかどうかにかかっている。これから、完全分離の時代にふさわしい在り方を詰めていかなければならない」と述べ、「ボールは業界が持っている」と携帯キャリアと販売店による自己変革を促した。


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