小学校の教室に黒板なし、1年生も3年生も一緒に授業も 義務教育の最前線

3

2021年06月17日 08:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真立体イラスト/kucci、撮影/写真部・高野楓菜(AERA6月21日号から)
立体イラスト/kucci、撮影/写真部・高野楓菜(AERA6月21日号から)
 教員が一方的に教えるのではなく、子ども自身で何をどう学ぶか決める。そんな教育への転換が始まっている。AERA 2021年6月21日号は「義務教育」特集。実践する学校や教員らを取材した。

【大日向小学校「そら組」3年生のスケジュールはこちら】

*  *  *
 机に向かってひらがなの練習をする1年生のすぐ横で、3年生が漢字の書き取りに取り組んでいる。少し離れた場所では床に座り、長椅子を机代わりにして算数のドリルに向かう2年生。廊下に出て勉強する子どももいる。上級生が下級生に解き方のヒントを教えたり、みんなで一緒に考えたり。グループリーダーと呼ばれる担任が「2年生、引き算の筆算を説明するよ!」と声をかけると、何人かの児童が周りに集まった。長野県佐久穂町にある私立の大日向(おおひなた)小学校ではこんな光景が日常だ。

 教科横断的な学びの時間もある。「自然と共に生きる」をテーマにした授業では、車座になった10人ほどが森の中での過ごし方を話し合っていた。「何かをつくりたい」という案に「秘密基地!」と賛同する声。その横では、別のグループが図鑑をめくり、植物について調べている。同じテーマで地域の人にインタビューする日もあるという。

■初のイエナプラン認定

 桑原昌之校長は言う。

「子ども自身の好奇心や『やってみたい』を大切にしています。自立すること、共に生きること、世界に目を向けることが教育の目標です」

 2019年に開校した大日向小学校は学校教育法第1条で定められた、いわゆる「1条校」だ。だが、その日常は一般にイメージされる小学校とは大きく異なる。元になっているのが、ドイツで生まれ、オランダで広まったオルタナティブ教育「イエナプラン」だ。同校は、日本イエナプラン教育協会が認める日本初のイエナプランスクール認定校でもある。

 イエナプラン教育では、「人とはどんな存在か」「どういった学校や社会でありたいか」を示した「20の原則」を基に学校が運営される。違いを認め、一人ひとりを個として尊重すること、協働しながら学びを深め、自由と責任ある共同体を目指すことが基本理念だという。

 大きな特徴の一つが異年齢集団での教育。大日向小学校では、1〜3年生、4〜6年生でそれぞれ集団を形成する。開校3年目でまだ人数は流動的だが、各学年10人弱の計20〜30人が集団の基本だ。現在は1〜3年生3クラス、4〜6年生2クラスの127人が学ぶ。児童の約8割は他県から移住してきた。

 学校の1日は、輪になって週末にあったことやクラスの出来事などを語り合う「サークル対話」から始まる。午前中の多くは「ブロックアワー」と呼ばれる学習時間だ。グループリーダーが1週間で学ぶべき各教科の課題を設定し、子どもたちは教員が示した課題と自ら決めたテーマを、いつ、どのように学ぶか計画する。

■ほとんどない一斉授業

「ワールドオリエンテーション」は「イエナプランのハート」とも呼ばれる学習の中心要素で、各教科を横断的に学ぶ時間だ。基礎学習の内容を活用し、グループで話し合いながら総合的に学びを追究していく。ワールドオリエンテーションで生まれた問いを深めるために、ブロックアワーで知識を得るという「循環」も生まれるという。

 そして朝と同じようにサークル対話でその日を振り返り、1日を終える。

 授業は学習指導要領にのっとり教科書も用いるが、教室に黒板はない。単元ごとに先生が数人を集めて解説する「インストラクション」は長くても15分ほどで、クラス全員が先生の方を向く一斉授業もほとんどない。

 宅明(たくみょう)健太教頭は言う。

「教員は子どもたち一人ひとりの学び方や学習ペース、習熟度を把握しながら、次にどんなものを活用すれば理解が深まるのか、どんなヒントやきっかけを与えればいいのか、常に学びをカスタマイズしています。1週間、時間内でしっかり頑張ればなんとかできる、というちょっとの背伸びを促すのがグループリーダーの役割です。同時に、先生だけで全て対応するのではなく、子どもたち同士が協働的に学べる場作りも必要。時間の使い方、空間の使い方、仲間とのやり取りを大切にしています」

 そんな学びの先に身につくものを、桑原校長は「高性能自立型エンジン」と表現する。自分で興味を持ったことに挑戦する。好きだと感じたことをとことん追求する。そうすると当然他者とぶつかることもある。

「それにどう折り合いをつけていくか。子どもたちは対話し、試行錯誤しながら他者を尊重するようになっていきます。そうすることで世界にも目を向け、それが自分にも戻ってくる。自分たちと世界を常にグルグルと回りながら成長してほしいです」(桑原校長)

(編集部・川口穣)

※AERA 2021年6月21日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 「ホワイトボードがあるから」ってオチだったら良いのにね https://mixi.at/a9XZ0BJ
    • イイネ!7
    • コメント 0件
  • 過疎地の複合学級もこんなもんよ?
    • イイネ!21
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定