宮本浩次、溢れる衝動で希望の歌を轟かす 有観客&配信で実現したバースデー公演『宮本浩次縦横無尽』レポート

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2021年06月17日 18:11  ウレぴあ総研

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ウレぴあ総研

写真宮本浩次『宮本浩次縦横無尽』2021年6月12日 東京ガーデンシアター
宮本浩次『宮本浩次縦横無尽』2021年6月12日 東京ガーデンシアター
宮本浩次が本格的にソロ活動をスタートさせた2019年。その年、宮本の誕生日である6月12日に初のソロライブを行なって以来、3年連続で宮本浩次のバースデーライブは行われている。3回目となる今年は、初めてバンドセットでのコンサートとなり、会場となった東京ガーデンシアターにシンガー宮本浩次の歌声が響き渡った。『宮本浩次縦横無尽』と題された今年のバースデーソロコンサート。その歌は時に繊細に、時に力強く、終始オーディエンスの心を激しく揺さぶった。終演後にもその余韻がなかなか消えずにいる。素晴らしいメンバーたちが織りなすバンドサウンドに後押しされながら、宮本の歌はまさに縦横無尽で、聴く者に様々な感情を呼び起こさせた。

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宮本が表現する歌世界を見事なバンドサウンドで彩ったメンバーは、名越由貴夫(Guitar)、玉田豊夢(Drums)、キタダ マキ(Bass)、そしてバンマスの小林武史(Key)。小林と名越は初シングル『冬の花』から、玉田は『P.S. I love you』から、そして最新アルバム『ROMANCE』ではキタダも迎え入れ、今回のメンバー4人が揃ってレコーディングに参加した。言わば宮本の音楽の良き理解者であり、盟友とも言える存在のメンバーたち。その盤石なバンドサウンドを後ろ盾にし、この日の宮本の姿は歌うことの喜びに溢れていた。そしてフレッシュな衝動に満ちていた。

2年前、初のソロライブは、恵比寿リキッドルームという、宮本浩次がライブを行うにしてはキャパの小さなライブハウスが会場に選ばれた。まだソロとしての楽曲は少なかったが、エレカシの楽曲も含め、ひとりステージに立って弾き語りで表現する宮本の歌は、バンドとは違った凄みと引力で観客を圧倒し、魅了した。翌2020年は、コロナ禍で迎えるバースデーだった。そのため、無観客の配信コンサートという形ではあったが、ソロとしての1stアルバム『宮本、独歩。』の楽曲をすべて弾き語りのライブ演奏で披露し、シンガーソングライター宮本浩次は、また新たな試みで歌を届けてくれた。

そして迎えた今回は、有観客で(会場キャパの半数以下に動員は抑えられていたが)、加えて生配信も行うという、また新たなスタイルでのコンサートとなった。そして、昨年11月にリリースした『ROMANCE』を携えてのコンサートでもある。この、女性歌手が歌う名曲の並ぶカヴァーアルバムに収録された楽曲たちが、今回のコンサートでどのように披露されるかも、大きな期待のひとつだった。1970年代の日本の歌謡曲にある叙情的なメロディが、宮本の歌唱によってどのような景色を生み出していったのかは、後述することにして──。

ライブは、薄暗い夜の闇の中、宮本がランタンを片手に登場するところから始まる。紗幕の向こう、オーガニックなバンドサウンドが響いて、宮本の力強く伸びやかな歌声が重なる。徐々に開けていく空と大地をイメージさせるスクリーン映像とライティング。「夜明けのうた」が、この日のオープニングを、そして宮本浩次のシンガーとしての真の目覚めを彩るような、そんな壮大な始まりだった。そのスケール感は、続く「異邦人」(久保田早紀のカヴァー)に見事に引き継がれる。哀愁漂うバンドサウンドに艶のあるボーカルが異国の景色を浮かび上がらせ、アウトロのバンドアレンジは、空が崩れ落ちそうな混沌を表す。宮本はそのカオスを身を以て表現する。そして上着を脱ぎ捨てステージ前方に飛び出すと、そこはなんとせり上がりの仕掛けで、宮本が上へ上へと上がっていき、始まったのは「解き放て、我らが新時代」。オーディエンスのハンドクラップだけをバックにラップするパートなど、ラフで自由な空気がとても心地好い。そして「きみに会いたい-Dance with you-」は、TV番組『The Covers』で披露したスペシャルアレンジを踏襲する形で披露された。バンマス小林武史とのピアノとボーカルの応酬からバンドサウンドへと展開し、ブラックミュージックのフィール満載で突き刺さる歌声にゾクゾクする。素晴らしいダンスチューンだった。

■新たに魅力をみせた『ROMANCE』コーナー

「良い曲たくさん用意してきましたので、リラックスして、心熱くして楽しんでください」と告げたあと、ステージにテーブルとチェアが用意されると“『ROMANCE』コーナー”に入っていく。ジャジーなバンドアンサンブルでスタイリッシュにアップデートされた「二人でお酒を」(梓みちよのカヴァー)は、宮本の少ししゃがれた歌声が、乾いた大人の別れをシアトリカルに描く。70年代、良き時代の歌謡曲のニュアンスはしっかりと引き継ぎながら、楽曲の魅力を再発見させるカヴァーであり、また宮本の歌唱の新たな魅力に出会う楽曲でもあった。続く「化粧」(中島みゆきのカヴァー)では、もうその歌の世界から抜け出すことはできなかった。この歌の持つ叙情。打ちひしがれる女の情念。これをライブで、ここまで濃密に感じさせることができることに圧倒された。「歌」が、「声」が、それだけでひとつの物語だった。その「歌」に感じたのは共感だとか、同情だとか、そんなよくある感情ではなくて、ひたすら「悲しい」という思いの発現だった。《流れるな涙 心で止まれ》と繰り返す歌に、どうしようもなく涙が溢れた。心が震えた。

「ジョニィへの伝言」(ペドロ&カプリシャスのカヴァー)で感じた「さみしい」という感情も、「あなた」(小坂明子のカヴァー)がもたらした「切ない」という感情もそうだった。自分を重ね合わせたり、何かを思い出したりするような、いわゆるポップミュージックに感じる共感とはまた別物の、感情の根源を揺さぶるような体験がそこにあった。これこそが宮本浩次の歌の力なのだと、大げさでもなんでもなく驚愕する。

2018年に生まれた、椎名林檎との共演曲「獣ゆく細道」は、この日は宮本ひとりで歌い上げるバージョンで披露されたが、ダークにスウィングするバンドアンサンブルが、とびきりリッチなラテンのムードを醸していた。そこからシームレスに「ロマンス」(岩崎宏美のカヴァー)へと進むと、この歌の持つエモーションが、よりロックなサウンドアレンジで心を揺さぶる。歪んだギターの音にのせて切実な女心を激しく歌う宮本。こうして数々のカヴァー曲をライブで聴くにつけ、やはり『ROMANCE』というアルバムは、「歌」というものの本質に向き合うものだったのだと思う。それは聴き手にとってはもちろん、制作した宮本自身にとっても。歌が引き連れてくる感情とは何なのか、歌が心を動かすとはどういうことなのか。この日のコンサートで、ひとつ新たな境地を見たような気がする。

だからこそ、カヴァー曲だけでなく宮本自身のソロ曲にもまた、この日は抑えようのない衝動を感じる場面が少なくなかった。「Do you remember?」のエネルギーの放出、魂の叫びは凄まじかった。自分の持てる歌への思いをすべてさらけ出すような歌。そして宮本のソロデビュー曲である「冬の花」は、この日、このセットリストの中で、その意義、本質を浮き彫りにしていた。宮本がソロとして表現したかった音楽が、いま理想的な形でライブ披露され、見事に心を射抜いた。この日の宮本は、コンサートの合間に何度も何度もバンドメンバーの名前を紹介していた。このバンド編成でのコンサート、その実現に高揚していることがよくわかる。 第一部のラストは「P.S.I love you」だった。《I love you》という一番シンプルで普遍的な言葉を歌にした楽曲は、歌とメロディという、日本の音楽の魅力の大元へと立ち返るような名曲である。腕を大きく広げて歌い終えた宮本は、充足感に満ちたとてもいい顔をしていた。そして一部の終了を告げ、「そう遠くない時間にまた会おう」とステージを後にした。

■希望のエネルギーに満ちた第二部へ

第二部は、豊かなバンドサウンドに乗って自由に音楽を楽しむような、そして、とてもポジティブに歌の力を受け取るような時間だった。

「passion」で響く陽のロックサウンド。軽やかな鍵盤の音色に心まで弾む。2018年に東京スカパラダイスオーケストラにフィーチャリングで参加した楽曲「明日以外すべて燃やせ」から、エレカシの名曲「ガストロンジャー」と続く流れには、何をどうしてもそこにロックが宿る宮本浩次というシンガーの根源を思う。ファンキーな鍵盤のアレンジ、独自のグルーヴを宿す宮本のアジテーションに、客席ではたくさんの拳が突き上げられる。さらに「今宵の月のように」で抗いようのない歌の良さをかみしめたあと、「あなたのやさしさをオレは何に例えよう」が、とても力強く心に響いた。この日もう何度目かのメンバー紹介を織り交ぜながら、そのサウンドを心底楽しむかのように歌う宮本の姿は、音楽に対する希望そのものだった。そしてエネルギーのすべてを燃やし尽くすような「昇る太陽」から、手書きで書きなぐった歌詞がスクリーンに映し出される「ハレルヤ」へ。《幸あれ》の大写しの文字が、歌の強さと相まって、胸に刻まれる。歌は人の心を開かせるものでもあることを実感する。ラストは「sha・la・la・la」。あたたかい光が射すような照明演出とともに、このポップソングがゴスペルのように胸に沁みてくる。ミラーボールのまぶしい光と左右に大きく揺れるオーディエンス。とても希望に満ちたエンディングだった。

すべての演奏を終えると、宮本はバンドメンバーたちと握手を交わしたり、肩を抱き合ったり。そのとびきりの笑顔が何よりこの日のコンサートの充実を物語る。

■公演情報

■『宮本浩次縦横無尽』

6月12日(土) 東京・東京ガーデンシアター

■セットリスト

第一部
1. 夜明けのうた
2. 異邦人
3. 解き放て、我らが新時代
4. going my way
5. きみに会いたい -Dance with you-
6. 二人でお酒を
7. 化粧
8. ジョニィへの伝言
9. あなた
10. shining
11. 獣ゆく細道
12. ロマンス
13. Do you remember?
14. 冬の花
15. 悲しみの果て
16. P.S.I love you

第二部
17. passion
18. 明日以外すべて燃やせ
19. ガストロンジャー
20. 今宵の月のように
21. あなたのやさしさをオレは何に例えよう
22. 昇る太陽
23. ハレルヤ
24. sha・la・la・la

■リリース情報

■宮本浩次『sha・la・la・la』

2021年6月16日(水) リリース

●初回限定盤(CD+CD+PHOTOBOOK):2,200円(税込)
●通常盤(CDのみ):1,320円(税込)

■【収録曲】

1. sha・la・la・la
2. passion
3. shining
4. sha・la・la・la(Instrumental)
5. passion(Instrumental)
6. shining(Instrumental)

■【初回限定盤】

・DISC2『Live from JAPAN JAM 2021』
1. 夜明けのうた
2. 異邦人
3. 悲しみの果て
4. Do you remember?
5. P.S. I love you
6. sha・la・la・la
7. ハレルヤ

・PHOTOBOOK:岡田貴之氏撮影の『JAPAN JAM 2021』ライブ&バックステージフォトを収めた20Pドキュメントフォトブック

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