但馬牛「食いてぇわ!」「ヒーハー!」!?二度見必至な精肉店のラベルが“カスハラ”を止めた 店主の思い

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2021年06月18日 07:00  まいどなニュース

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写真流行にも敏感に?「子どもや孫との会話のネタになる」と昭和歌謡バージョンより人気だそう(提供)
流行にも敏感に?「子どもや孫との会話のネタになる」と昭和歌謡バージョンより人気だそう(提供)

 神戸のあるスーパーの精肉売り場のラベルが、異彩を放っていると注目を集めています。棚には但馬牛を始め美味しそうな牛肉や豚肉に「情熱のバラ」(当然バラ肉)や「食ぃてえわ」「肉の名は。」など、「パクリだと怒られるか怒られないか、ギリギリ」(店主談)なラベルがこれでもか!と並び、二度見必至。中身といい量といいかなりのふざけっぷりですが、意外と真面目な理由と、思わぬ効果がありました。

【写真】昨年5月に始めた第1弾は、コロナネタでした。今と比べると控えめ?

始まりは1年前…吹き荒れた“カスハラ”

 神戸市灘区、JR六甲道駅北側の「食の工房みやまえ」。今年で創業89年という精肉店「住吉屋」の3代目で、スーパーの代表理事でもある小南賢祥さん(43)いわく、きっかけは昨年から始まったコロナ禍だった。

 「去年の緊急事態宣言の頃はもっと殺伐としていた。誰も出歩いていない中、レジのパートさんには無理をお願いして何とか営業を続けていました。でも、マスクと飛沫防止スクリーン越しではお客様の声が聞き取りづらく聞き返すと『何回言わせるんや』とキレられたり、良かれと思って商品をカゴに移そうとすると『触るな』と言われたり…。そんな事がジワジワと溜まっていった。それでも自分よりパートさんらの方がしんどいし、辛い思いは皆同じだから仕方ない、って気にしてないつもりだったんですけど」

 ある夜、仕事を終えて家に帰り、一服していると理由もなく涙がボロボロとこぼれてきて、止まらない。「それで嫁さんに『俺、ヤバいかも知れん』って言ったら、嫁さんも『そうやね』と」。自己満足でも何かで気持ちを紛らわせないと壊れてしまうと考え、浮かんだのが「ラベル」だった。

コロナネタからM-1、アニメに昭和歌謡「これが楽しみで来てるの」

 以前からバックヤードで冗談は言っていたが「それを形にしたら、不安と闘いながら買い物に来てくれているお客様もクスッとして貰えるかな、と漠然と思った」と小南さん。最初は、カレー用の肉をパックにスカスカに入れて「ソーシャルディスタンス」、ギュウギュウに詰めて「密です!」などコロナネタから。炎上も覚悟だったが、ネタで買ってくれるお客さんや「買ったで」と連絡してくれる友人も出始めた。

 M-1や漫才ネタに、コロナ禍で大ブームになった「あつまれどうぶつの森」にひっかけ「あつまれぎゅうにくの森」。「鬼滅の刃」の「無限しゃぶしゃぶ編」。年配の人も親しめるよう「お肉だョ!全員集合!」や「あの素晴らしい肉をもう一度」など昭和ネタにも手を出した。「どうせやるなら、クオリティーにもこだわりたい」と取引先の若手がパソコンでデザインまで手描きで再現してくれるようになった。

 気付くと精肉売り場で足を止めて見入る人が増え、「インスタに上げてもいいですか」「これが楽しみで来てるの。孫に見せるわ」と嬉しそうに声をかけられたり、友人同士で話題にしているのを見かけたりするように。東京で一人暮らしをする娘を喜ばせたいと、月1回の配送を依頼してくれるお客も現れた。

震災から1週間…テレビに映った「ごっつ」

 「そういえば、震災の時もそうやったんですよ」。小南さんはふと、語り出した。

 26年前に起きた阪神・淡路大震災。小南さん家族は幸い無事だったが、スーパーの前身だった宮前市場周辺では火災も発生。多くの人が亡くなり、煙と砂埃が立ち込めた。新聞やラジオが伝えるのは震災の話ばかり。静まりかえる街に「声を出して笑うなんてありえなかった。少なくとも僕はそう感じてた」。

 1週間ほどして電気が復旧し、初めてテレビを付けた。忘れもしない、日曜日の午後8時すぎ。人気番組だった「ダウンタウンのごっつええ感じ」が目に飛び込んできた。

 「その時、何かがブワッてこみ上げてきて...。テレビの向こうは本当に何にも変わってない。震災があったなんてウソみたいだった。大切な家族や家を失った人も大勢いるのに、そんな場合じゃないって痛いほど分かってる。でも、17歳だった僕はホッとして、テレビ見ながらもうめっちゃ笑ったんです。前みたいに」

 それから四半世紀。「コロナでも皆が不安でピリピリして、本当だったら出来たはずのことが出来なくなって傷付いて、でもそれを見せまいと無理をして…。だから、あの日の『ごっつ』じゃないけど、こんな時こそ少しでも『抜け』を作って、クスッとできたら救われるかもな、って」

オチ、ありません

 考案したラベルは、500近くになった。小南さんいわく「考えるのが面白くなって眠れなくなるほど。お客さんが喜んでくれると止まらないんですよね」。多すぎて、同じ商品なのに「ヒーハー」と「オーシャンギュー」「PON PON PON」などラベルが違うことも。「中身は至ってマジメなんですが、どのラベルを貼るかは適当で...。たまに『どう違うんですか?』と聞かれて『ホンマ、意味ないんです…すみません…』って。関西人のくせにオチないんです」と苦笑。流行を取り入れドヤ顔で子どもに見せると「あー、学校ではもうそんな流行ってないわ」とぶった切られることも。ちなみに、ネタに紛れて「但馬牛」「カレー肉」などごく普通のラベルも並ぶが、父が担当した物なのだそう。

 「最初はほんのお遊びで、すぐ止めるつもりだったんですけど、止められなくなりました」と小南さん。始めた当時のような不条理なクレームは、ほとんどなくなった。今後もまだまだ増えるだろうフザけたラベルを効率的に管理すべく、新しい機械の導入を真面目に検討しているという。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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