日本女子バレー東京五輪出場への最終サバイバル。セッター問題は解決? チームの中心は?

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2021年06月18日 11:21  webスポルティーバ

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 東京五輪への最終サバイバルが始まる。

 5月25日にイタリアのリミニで開幕したバレーボールネーションズリーグ(以下、VNL)の予選ラウンドも、女子は残すところ3試合になった。ワールドグランプリに代わって2018年に始まった同大会は、世界の16チームが予選ラウンドを1回戦総当たり方式で戦い、上位4チームがファイナルラウンド(女子は6月24、25日の2日間)に進出する。2019年までは5週間にわたって各国を転戦する方式だったが、コロナ禍で2020年は中止になり、今年は"バブル方式"で1カ所に集まって開催している。




 例年、代表に登録された選手たちを試し、同年に開催される主要大会のメンバーを選考するための大会になっている。今年は当然、東京五輪メンバー12人を決定するための大切な場だ。今年度の日本代表登録選手24人のうち、VNLでイタリア入りしている選手は17人で、毎試合そこから14人が選出されてベンチ入りしている。五輪代表となる選手は大会終了後に発表されることになっているため、この17人の中から12人が選ばれる可能性が高い。

 開幕前はさまざまな選手起用が試されると予想されたが、ここまでの12試合、中田久美監督はアメリカ戦を除いてミドルブロッカー、リベロ以外のスタメンをほぼ固定している。その4人は、アウトサイドヒッターの古賀紗理那、石川真佑、オポジットの黒後愛、セッターの籾井あき。五輪に向けて、セッターとサイドアタッカーのコンビをより強固にしたい、という狙いがあるのかもしれない。

 コロナ禍で1年以上国際試合を行なうことができず、今年度初の国際試合は5月1日に有明アリーナで行なわれた中国との親善試合だった。ここで国際戦デビューを果たしたのが20歳のセッター・籾井あきである。籾井は日本で生まれ育ったが、ペルー国籍(父はペルー人とスペイン人のハーフ、母はペルー人と日本人のハーフ)で、2019年に日本に帰化した。そのこともあり、アンダーカテゴリー日本代表の経験がなく、日本代表選出時から中田監督は「国際経験を積ませることが課題」と話していた。親善試合はストレートで敗れたものの、フルメンバーの中国を相手に、第3セットはデュースで29−31まで粘るなど収穫もあった。

 中田体制は5年目となったが、なかなかセッターを固定することができなかった。冨永こよみ、田代佳奈美、佐藤美弥と毎年正セッターが交代したが、現役時代にセッターで、センター(現在のミドルブロッカー)とのコンビを得意としていた中田監督は、現役時代の自分と同じようにミドルがうまく使える佐藤への期待が大きかったように思える。しかし、その佐藤は故障が続き、2020−21シーズンのVリーグにはほとんど出場することができず、今年5月に現役引退を発表した。

 一方の籾井は、入団初年度からJTマーヴェラスの吉原知子監督に正セッターを任され、2年連続優勝に貢献。その功績から今年、日本代表に初選出された。176cmという身長とサウスポーであるところが現役時代の中田監督を彷彿とさせるが、国際経験のない若いセッターに突然代表の司令塔を任せることへの不安の声もあった。また、この2年間、JTのオポジットが圧倒的な攻撃力を誇るアメリカ代表のドルーズ・アンドレアであったことから、ドルーズに偏ったトス回しをする印象があり、代表ではミドルがうまく使えるかも危惧された。

 しかしVNLが開幕すると、主将の荒木絵里香はもちろん、島村春世、山田二千華らミドルブロッカー陣の攻撃を効果的に使い、Vリーグでの「ミドルへのトスが少ないセッター」というイメージは見事に払拭された。特に、ベルギー戦で21歳の山田が連続でブロード攻撃を決めた場面は、3年後のパリ五輪へと続く明るい未来を予感させるものだった。

 前述のようにサイドアタッカー陣は、古賀、黒後、石川のスタメン出場が圧倒的に多くなっている。中でも今年、副主将を任された古賀の活躍が目立つ。今季の古賀の好調はVリーグから続いており、「そこに上げれば何とかして決めてくれる」という真のエースに成長した。VNLのベルギー戦までの個人成績(6月14日。以下同)は、ベストスコアラー部門7位で、スパイク部門4位。サーブレシーブも4位と安定している。

 Vリーグでは好調の要因のひとつとして「チームのセッターとのコンビ合わせに時間をかけられた」と話していたが、代表では初めてコンビを組んだ籾井と3カ月にも満たない期間で合わせており、技術面はもちろん、「自分が中心となってチーム引っ張っていこう」という精神面での成長も感じられる。

 前回のリオ五輪では最終予選に出場しながら、五輪本戦の12人から落選となったため、オリンピックに懸ける思いも強いはず。25歳と年齢的にもキャリアのピークといえる世代であり、今年の古賀にはバレー関係者やファンからも大きな期待がかかっている。

 古賀の対角の石川は5月に21歳になったばかりだが、個人成績はベストスコアラーとスパイク部門でそれぞれ10位と健闘している。サーブレシーブで1位、サーブで3位という成績は古賀を凌いでおり、特にサーブレシーブは国内のVリーグでも課題とされていたため、大きな成長が感じられる。今大会では石川が相手チームのサーブのターゲットになることが多かったため、それがスキルアップにつながったのかもしれない。

 サーブに関しては、もともと得意だったが、2019年のW杯後に兄の石川祐希(男子代表主将)ら男子のプレーを見て参考にしたといった努力が数字に表れているのだろう。スパイクも173cmという、アタッカーとしては低い身長をカバーするブロックアウトやコース打ちなどの技術を着実にレベルアップさせている。

 黒後愛は過去の代表ではアウトサイドヒッターのポジションに入っていたが、現在はオポジット。中田監督は「このチームのエースは黒後」と公言しており、守備の負担を減らしていることからも、攻撃面での活躍を期待されているのがわかる。VNLでは、ベストスコアラー、スパイク、サーブの3部門でいずれも9位と好成績だ。

 しかし、パワフルなスパイクが黒後の持ち味のはずだが、今大会はフェイントが多用されているのが少し気になる。セッターの籾井とのコンビを合わせるために「コミュニケーションを多く取るように心がけている」とコメントしており、籾井も「ライトからの攻撃を増やしたい」と語っていたので、その成果が発揮されれば、黒後が気持ちよく強打で決めるシーンを多く見られるようになるかもしれない。

 アメリカ戦の1試合だけ古賀と籾井をベンチから外し、アウトサイドヒッターの石井優希、林琴奈、セッターの田代らを起用した布陣になったが、中田監督は黒後だけは最後まで外さなかった。ベルギー戦のあった6月14日に23歳の誕生日を迎えた黒後。所属チームの東レアローズでは主将を務め、若手から中堅へとステップアップする時期だけに、監督の期待の大きさが窺える。

 黒後と同じオポジットのポジションでは、中国との親善試合で代表に復帰して活躍した長岡望悠が、ベルギー戦まで一度もベンチ入りしていないのは気になる。親善試合の時点で中田監督は「長岡の復帰でサウスポーの攻撃が1枚あるのは大きい」と話していたが、2度の左膝前十字靱帯断裂という大ケガを経験しているため、試合に出場できてもフル出場は厳しいのではないだろうか。18日からの予選ラウンド最後の3試合でベンチ入りがあるのかが注目される。

 日本は9勝3敗でトルコと並んでいるが、勝ち点で1ポイント上回り、暫定3位。5位ロシア、6位オランダとも僅差だが、ファイナルラウンド進出の可能性もまだ十分に残っている。

 相手国にデータを取らせないために主力を温存し、控え選手主体のチームで臨む国もあるが、日本はレギュラー陣に経験を積ませ、チームを固める道を選んだ。それが五輪本番に吉と出るか凶と出るかはわからないが、1試合でも多く経験を積めると考えれば、ファイナルラウンド進出も五輪に向けての貴重な経験の場といえるかもしれない。

 予選ラウンド残り3試合、ファイナルラウンドに進出した場合はプラス2試合で、これまで活躍が目立たなかった選手たちにもアピールの機会はあるのか。そして、最終的にどのメンバーが12人の椅子を勝ち取るのか。最後まで目が離せない。

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