『進撃の巨人』有終の美を飾る 『ONE PIECE』や『呪術廻戦』を抑えてランキングトップに

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2021年06月19日 08:31  リアルサウンド

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『進撃の巨人』ランキングでも有終の美

■週間ベストセラー【コミックス】ランキング(2021年6月15日トーハン調べ)
1位 『進撃の巨人』(34)諫山創 講談社
2位 『ONE PIECE』(99)尾田栄一郎 集英社
3位 『呪術廻戦』(16) 芥見下々 集英社
4位 『SPY×FAMILY』(7)遠藤達哉 集英社
5位 『怪獣8号』(3)松本直也 集英社
6位 『アルスラーン戦記』(15)荒川弘(漫画)/田中芳樹(原作) 講談社
7位 『魔入りました! 入間くん』(22)西修 秋田書店
8位 『神様に拾われた男』(7)Roy(原作)/蘭々(漫画)/りりんら(キャラクター原案) スクウェア・エニックス
9位 『Dr. STONE』(21)稲垣理一郎(原作)/Boichi(作画) 集英社
10位 『進撃の巨人』(34)特装版 Beginning 諫山創 講談社


 最新のコミックスの週間ベストセラーランキング(2021年6月15日トーハン調べ)の結果は、上記のとおり。『進撃の巨人』(諫山創)の最終巻(34巻)が1位になるのは誰もが予想していたことだろうが、その他の作品(具体的にいえば、3位と10位を除く2位以下の作品)の“健闘”に個人的には注目したい。


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 というのは、ここ数カ月のあいだ、何かと1位から10位までのほとんどの順位を、『呪術廻戦』(芥見下々)の既刊が埋め尽くしているベストセラーランキングの結果を見ることが多かったからなのだが、同作の新刊が発売されて間もない週のランキングで、これだけ他の作品がランクインしているというのは、なかなか頼もしい結果だといえるだろう。


 逆にいえば、それだけ、このランキングを集計した週には、強いタイトルの新刊が数多く発売されていたということになるのだが、まずはなんといっても、1位の『進撃の巨人』について触れないわけにはいかないだろう。


 諫山創の『進撃の巨人』は、「別冊少年マガジン」2009年10月号から連載が始まり、一大ブームを巻き起こした怪物的作品である。今回発売された34巻は、先にも書いたとおり、長い物語のクライマックスを描いた最終巻だが、最後の最後で主人公とヒロインそれぞれが選んだ“決断”を、読み手がどう受け止めたかによって、この物語がハッピーエンドに終わったのか、そうでなかったかの解釈は分かれるところだろう。私としては、ある種のハッピーエンド(さらにいえば、世にも美しいラブストーリー)としてこのラストを読んだが、破壊と再生のループを予感させる謎めいた円環構造のエピローグも含め、諫山創という作家は、初の長編連載作にして、とんでもない傑作を描いたものだとあらためて驚かされた。


 また、驚かされたといえば、2位の『ONE PIECE』(尾田栄一郎)だが、この巻でなんと99巻である。(当たり前だが)次の巻ではついに100巻となるわけで、1997年の連載開始以来、浮き沈みの激しい少年漫画の世界で常にトップを走り続けているというのは、並大抵のことではない。なお、先ごろ刊行され、話題になっている『描きたい!!を信じる―少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方――』という本に掲載されているアンケートで、尾田栄一郎は、「漫画を描くときに心がけていることはありますか?」という質問に対し、「新しいものを見せたい」と答えているのだが、作者がこの貪欲な気持ちを失わないかかぎり、『ONE PIECE』という作品がこれから先も「少年漫画の王者」であり続けることに変わりはないだろう。


 3位の『呪術廻戦』16巻は、「渋谷事変」の最終局面を描いた重要な巻。同巻に巻かれているオビのコピーによれば、コミックスのシリーズ累計発行部数は5000万部を突破したらしく、これから始まる「死滅回游」編では、「少年ジャンプ」の“お家芸”ともいえる、敵味方に分かれた複数キャラによる異能バトルはますますヒートアップすることだろうし(本誌連載分ではすでに、人気キャラのひとりが壮絶な戦いぶりを見せている)、今年の12月に公開予定の映画(『劇場版 呪術廻戦0』)に絡んださまざまな展開も含めて、これまで以上に同作が盛り上がっていくのは間違いないだろう。なお、先ごろ、作者の芥見下々が体調不良のため、『呪術廻戦』を1カ月ほど休載するということが「少年ジャンプ」本誌で公表されたが、なんといっても週刊連載は体力勝負、ここはゆっくりと静養していただきたいと思う。


 さて、最後に、4位と5位の作品について、少し書きたいことがある。両作とも漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」発の話題作だが、その連載媒体の「新しい」イメージも手伝って、なんとなく「若い作家による作品」という印象が多くの読者にはあるかもしれないが、実はこの『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)と『怪獣8号』(松本直也)、それぞれの作者は、これらの作品でいきなりブレイクしたわけではなく、ここに至るまでにそれなりの執筆歴もあるベテラン作家である。つまり、「少年ジャンプ+」は、周知のように新人の読切作品を積極的に掲載している一方で、こうしたもともと力のあったベテラン作家のブレイクないし再ブレイクへのトスも上げているわけであり、これは「漫画雑誌」として本来あるべき、健康的な姿(正しい編集方針)だといえはしないだろうか。


 いずれにしても、今回のベストセラーランキングの結果は、あらためて「ジャンプ・ブランド」の強さを浮き彫りにするものではあるのだが、ひと口に「ジャンプ系」といっても、それぞれの作品がそれぞれのやり方でヒットしているということがわかるし、また、そこ(=ジャンプ・ブランド)からはみ出した『進撃の巨人』のような異形の作品が、圧倒的な強さで1位に君臨しているさまを見ても、「少年漫画」という表現ジャンルがいかに可能性に満ちたものであるかがわかるだろう。


(文=島田一志)


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