「手ぐすねを引く」って何を引いてるの? 実は武器に使う道具!

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2021年06月21日 10:30  AERA dot.

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写真写真はイメージ/GettyImages
写真はイメージ/GettyImages
「保障」「出張」「裏をかく」……じつは戦場で使われていた言葉だということをご存じでしょうか? 武器や戦いにまつわる15の言葉を、由来や語源から見ていきましょう。現在2021年7月号が発売中の朝日新聞出版『みんなの漢字』から紹介。※監修・久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)

*  *  *
「狼煙」
→狼の糞を燃やすと、煙がまっすぐ上がる

 語源は「のろ」が「野良」で、「し」は気または火といわれています。中国では古くから、燃やすものに狼の糞を混ぜると、風が強いときでも煙がまっすぐに上がるといわれ、「狼煙」の字が用いられていたことから、日本語の「のろし」に当てられました。中世以前は「烽火(とぶひ)」とよばれており、「のろし」に「烽火」の字を当てることもあります。

「横槍を入れる」
→正面衝突する軍の横から槍で攻撃を仕掛けた

 会話の途中で横から口を挟むことを「横槍を入れる」といいますが、なぜ槍なのかというと元は戦場で使われた言葉だからです。横とは軍隊の横のことで、二つの軍が正面から戦っているときに、別の軍が側面から槍で攻撃を仕掛けることを「横槍」といったのです。それが転じて、会話の場面で用いられるようになりました。

「埋め草」
→城攻めで用いられた堀を埋めるための草

 かつて、城を攻める際に周囲の堀を草などで埋めてから攻撃しました。そのときの草を「埋め草」といい、古くは『太平記』に記述がみられます。江戸時代になると、欠けたものや空白を埋めるものを表すようになり、のちに新聞や雑誌で余白を埋めるための記事を意味するようになりました。

「牙城」
→象牙の飾りがついた将軍旗のある城

 中国の歴史書にある言葉です。かつて、将軍の旗の上部には象牙の飾りがあったことから、将軍旗を「牙旗(がき)」といいます。「牙城」とは、この牙旗が立っている城のことで、つまり将軍のいる城を表します。そこから、比喩的に本拠地や中心部などの意味で用いられるようになりました。

「押っ取り刀」
→刀を勢いよくつかんだまま腰に差さずに急行する

「おっとり」という読みから弱々しい刀をイメージしがちですが、漢字表記にあるように刀を「押し取る」ことが由来です。勢いよくつかみ取ることを、押し取るから転じて「押っ取る」といいます。武士が緊急の際に、刀を勢いよくつかんだまま腰にも差さず急行する様子から、取るものも取りあえず駆けつけるさまを「押っ取り刀」というようになりました。

「裏をかく」
→刀や槍などの武器が鎧の裏側まで届くこと

 ここでの裏は、鎧の裏側のことです。鎧が万全であれば刀や槍などが裏まで達することはありませんが、不備があると貫かれてしまいます。そこから、相手の油断をつくこと、計略を出し抜くことの意味になったといわれています。

「手薬煉(てぐすね)を引く」
→弓の弦に薬煉(くすね)を塗って戦いに備える

「薬煉」とは、松脂(まつやに)を油で煮て練り混ぜたものです。粘着力が強く、弓の弦に塗って補強したり、滑り止めに用いたりします。「手薬煉を引く」とは、戦いの前に手で薬煉を塗って弓をいつでも使えるように準備しておくことを表し、そこから転じて十分に用意して敵を待ち受ける意味になりました。

「伸るか反るか」
→矢がまっすぐ伸びるか反ってしまうかは運次第

もともとは、矢づくりで用いられていた言葉です。矢をつくる際には、材料となる竹を型にはめて乾燥させます。このときに、竹がまっすぐ伸びるか、反ってしまうかは型から出してみないとわからないことから、一か八かの意味になったといわれています。ほかに、博打の用語で勝つか負けるかを表す「乗るか逸るか」が由来とする説もあります。

「竹刀」
→弾力があって曲がる意味の 「撓(しな)う」が語源

 もともとは「撓い竹」だったものが略されて「しない」となり、竹製の刀であることから「竹刀」の字が当てられました。「撓い」とは、「撓う」の連用形で、弾力があってしなやかに曲がるという意味です。

「筈(はず)」
→矢の末端にある溝と弦が合うのは当たり前!?

 弓矢を射る際に、矢と弦がずれないように、矢の末端の溝に弦が引っかかるようになっています。この溝を「矢筈」といいます。矢筈と弓の弦が合致するのは当然のことなので、「かならずできるはず」のように当然そうなることの意味を表すようになりました。

「大童(おおわらわ)」
→戦場で童のように髪を振り乱して奮戦する

 武士は戦場で通常は兜を被っていますが、奮戦するうちに兜がとれて髪がばらばらに乱れることもあったといいます。そのザンバラ髪が、髪を束ねていない童のように見えることから、戦場でなりふり構わず奮戦する様子を「大童」というようになりました。そこから転じて、夢中になって取り組むことや、一生懸命努力することの意味になりました。


「身から出た錆(さび)」
→手入れを怠ったために刀身に生じた錆

 ここでの「身」とは、刀身のことです。刀身は刀のうちの鞘に収まる部分で、いわば切るための中心部。手入れを怠り、刀身が錆びてしまうと刀の役割を果たせません。刀に錆が生じたのは自分の怠慢が原因なので、転じて自分の犯した悪行のために自ら苦しむことの意味になりました。

「保障」
→敵の攻撃を防ぐための城や砦のことだった

 中国ではもともと、「保」が砦や小城を表し、「障」が隔てて防ぐことを表していました。つまり、「保障」は戦いで敵の攻撃を防ぐための城や砦のことだったのです。のちに戦場以外の場でも広く用いられるようになり、責任をもって人の立場や権利を保護する意味になったといわれています。

「出張」
→仕事の遠出ではなく戦場に行くことだった

 もともとは、戦場におもむくことを「出張(でば)る」といいました。戦場に出て陣を張ったことがその由来ともいわれています。室町時代の後期には「しゅっちょう」と音読みもされるようになったといわれ、江戸時代の後半には戦いと関係のないことにも用いられるようになったといいます。そして、明治時代に官庁用語として「しゅっちょう」が定着したとされています。

「駆け引き」
→戦場で馬を駆けたり引き揚げたりする

「駆け」は馬を駆けて前進させることで、「引き」は馬を退かせることとも手綱を引くことともいわれ、いずれにしても退却することを表します。つまり、戦場で臨機応変に兵を進めたり、後退させたりする意味です。そこから、交渉や試合などで自分が有利になるようにことを運ぶという意味になり、商売やスポーツなどさまざまな場面で用いられています。

文/美和企画
※『みんなの漢字』2015年11月号から

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