スーパーマンは「跳ぶ」?「飛ぶ」?「翔ぶ」?

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2021年06月21日 10:31  BOOK STAND

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6月25日(金) 〜 9月5日(日)まで東京・六本木ヒルズで開催される『DC展 スーパーヒーローの誕生』はスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、ジョーカーらを抱えるアメコミの大手、DCコミックの歴史と魅力にせまる総合展示イベントです。(僕もお手伝いをしています)

この『DC展』では1978年(日本公開79年)の映画『スーパーマン』のコスチュームも展示されます。本作を観て(TV放送も含む)アメコミ好きになった、DCヒーローが好きになったという人は少なくありません。監督はリチャード・ドナー、出演は故クリストファー・リーヴ。堂々たる大作であり、今日のスーパーヒーロー映画のお手本となった作品です。

スーパーマンは1938年、アクション・コミック1号でデビューしました。崩壊寸前の惑星(後にクリプトンと名付けられます)から地球へロケットが不時着。そこには男の子の赤ん坊が乗っていました。両親はこの子だけでも生きて欲しいと地球へと逃がしたわけです。その赤ん坊はすくすくと成長。しかしクリプトンと地球の環境の差が肉体に作用し彼を超人にします。成長したその男の子がスーパーマンとなるのです。

それまでターザンとかディック・トレーシー、バック・ロジャース等の冒険・SFヒーローはいたけれどスーパーパワーを持っているヒーローというのは初めてだった。だからスーパーマンはアメコミ・スーパーヒーローの元祖なのです。コミックだけではなくアニメ(短編映画)化、TVドラマ化、ビデオゲーム化というメディアにおいてもスーパーマンが先駆けでした。そしてコミック登場から40年目の節目に公開されたのが映画『スーパーマン』だったのです。

僕にとって大好きな映画で本作については書きたいことがいっぱいあるのですが、ここでは当時の宣伝コピーをとりあげます。実はこのコピーに映画『スーパーマン』の魅力がつまっているのです。

当時の資料を読むと、監督のリチャード・ドナーはとにかく『スーパーマン』の成功の鍵はスーパーマンの飛行シーンにかかっている、と明言しています。「宇宙空間をスペース・シップが飛ぶのと都会の大空を人間が自由に飛ぶのは訳が違う」と。

そうスーパーマンはいろいろな能力を持っているけれど、空を飛べることが一番の魅力なのですね。従ってスーパーマンをどう飛ばすかにスタッフは注力したようです。新しい合成テクニックを開発したり、スーパーマンのケープ(マント)がうまくなびくようにそこにラジコン装置をいれるとか。『スーパーマン』という映画は、空飛ぶ男を観る映画といっても過言ではないのです。だからアメリカの宣伝コピーは"YOU'LL BELIEVE A MAN CAN FLY."(あなたは人が空を飛べる、と信じるだろう)でした。

そして日本での最終宣伝コピーは「あなたも空を翔べる!」。観客の皆さんもスーパーマンと一体となって空を飛んでいる気持ちになるぐらい躍動感・臨場感がある、ということでしょう。僕はこのコピーを見た時に、なぜ「あなたも空を翔べる!」であって「あなたも空を飛べる!」でないのかと思った記憶があります。どちらも同じ意味ですが、「飛ぶ」はどちらかというと飛行機とか空を移動する、これに対し「翔ぶ」には大空を自由にかけめぐるニュアンスがあるそうです。確かに『スーパーマン』では、スーパーマンが事件現場にまっすぐ急行するだけではなく、様々なバリエーションのフライトを見せてくれます。

ちなみにコミックに最初に登場した時のスーパーマンは飛行ではなくすごい跳躍力の持ち主でした。1940年代のラジオ番組でつかわれたという有名なフレーズ
「弾丸(たま)よりも速く、力は機関車よりも強く、高いビルなどひとっ飛び」
の"ひとっ飛び"のくだりは、Able to leap tall buildings at a single bound!です。FLYではなくLEAPという単語がつかわれています。これは"跳ねる"という意味ですからね。

「跳ぶ」から「飛ぶ」そして「翔ぶ」へ。空駆けるスーパーマンのイメージにあうのは「翔ぶ」でしょうか?

くりかえしになりますが「DC展」ではこの映画『スーパーマン』版のコスチュームも展示されます。素敵なブルーですが、この青色にもご注目ください。いま合成はグリーンバック(緑の幕)が主体ですが、当時はブルーバック(青の幕)も多かった。しかしスーパーマンのコスチュームは青い。そこで背景の青とバッティングしない"青色"をさがし、それがこのスーパーマンの衣装の青に採用されたそうです。
大空にちかい六本木ヒルズ(森タワー52階東京シティビュー)でぜひ、大空が似合うスーパーマンと会ってください。

この原稿を準備中、
映画『スーパーマン』にオティス役で出演していたネッド・ビーティ氏の訃報を知りました。
ルーサーのドジな子分役ですがネッド氏の味のある演技が映画『スーパーマン』に素敵なユーモアを与えてくれました。この場をかりてご冥福をお祈りいたします。

DC展 スーパーヒーローの誕生
https://tcv-taod.roppongihills.com/

(文/杉山すぴ豊)



『スーパーマン ディレクターズカット(字幕版)』
著者:クリストファー・リーヴ,マーロン・ブランド,ジーン・ハックマン,マーゴット・キダー,リチャード・ドナー,ピエール・スペングラー,マリオ・プーゾ,デヴィッド・ニューマン,レスリー・ニューマン,ロバート・ベントン
出版社:
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このニュースに関するつぶやき

  • 能力者が空間を移動する際の表現って「跳ぶ」が多い様な、時間軸を超える場合は「翔ぶ」でですよね、まぁ常用の「飛ぶ」をあえて避けて字体から特別感を読み取って欲しいという事なのでしょうね
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