ワクワクする時代を生きる子どもたちへ。親子で読みたい「夢中になれる人生の作り方」

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2021年06月22日 11:11  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(吉藤オリィ/サンクチュアリ出版)
『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(吉藤オリィ/サンクチュアリ出版)

 情報が溢れ、人々のニーズも多様化する中で、ビジネスでは常に新しい価値が求められる。人の仕事を代替するテクノロジーも登場し、「人にしかできない仕事とは何か?」という新しい課題に直面する現代。働き方も職業も多様化する中で、これから大人になる世代が自分の生きる道を決めることは、とても難しいことのように思える。

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 そんな靄がかかった気分を晴らしてくれる1冊が、『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』(吉藤オリィ/サンクチュアリ出版)だ。著者は、株式会社オリィ研究所代表取締役CEO、分身ロボット「OriHime」の開発で知られる発明家で、テクノロジーによる孤独の解消を目指す人物。本書は、将来のことを考え始める年代の子どもたちに向けて書かれている。

 著者の吉藤オリィ氏は、子どもの頃から体が弱く、小5から中2まで学校に登校することができなかった。しかし、親のすすめで出たロボットのコンテストをきっかけにものづくりへの興味が湧き、憧れの人物との出会いをきっかけに、工業高校や高専、大学で車椅子などの福祉機器の研究開発に携わるようになる。「体が弱い自分に残された時間は30歳まで」と感じた17歳の著者は、残りの人生をすべて自身が苦しんだ孤独の解消に捧げると決意。研究者の道へ進み、体や外出の自由がきかないことで、社会とのつながりや仕事の機会を失っている人のコミュニケーションをサポートする技術を開発している。

 子どもの頃に生きづらさを抱えていた著者は今、人生を捧げるものを見つけて、毎日寝る間も惜しんで、夢中で生きているという。本書は、そんな彼の人生を振り返りながら、子どもたちが夢中になれるものを見つけて生きていくためのヒントを、講義形式で伝えている。

 本書が伝えるメッセージのひとつが、「できない」は価値になること。著者にとっては、毎日学校に行く、友達を作るなど、他の人にはできるのに自分にはできないことが多かったという。学校に行けなかった経験から、離れた場所から授業や会議などに参加できる分身ロボットを開発し、目の動きで操作できるOriHime eyeを生むなど、彼の開発の多くは「できない」を出発点にしてきた。テストでは5科目合計で100点もとれないほど勉強はできなかったというが、できないことの苦しみに向き合った経験を「それならできるようにすればいい」という原動力に変換する、そんな彼の人生に対する真摯さが、画期的な発明を生み出してきたのだろう。

 中でも、盟友・番田雄太とのエピソードが胸を打つ。番田は幼少期の事故の影響で首から下が動かず、20年間盛岡で寝たきりの生活をしてきたが、26歳で同年代の著者と出会い、オリィ研究所で社員として働いた。残念ながら彼は2017年に亡くなってしまったが、秘書業務や講演を行ったり、製品の改良を助言したりとオリィ研究所の開発に欠かせない存在だった。番田を必要とし、採用した著者の言葉は、「できない」を価値としてきた彼の生き方を象徴している。

 彼の人生を左右した出会いや、世の中をあっと驚かせる彼の仕事は特別に見えるが、「知っている人に聞く。」「違うと思ったら、さっさと変える。」などの助言はとてもシンプルで、誰でもすぐに行動に移せるものばかりだ。彼の言葉からは、すごいことをやろうとしているのではなく、ただ自分ができること、したいことを夢中でやっているだけということが伝わり、人生を難しく考えすぎていた自分に気付く。

 成長過程の柔軟な子どもの心に合わせて書かれているからこそ、大人の読者も、自分の生き方や価値観にピュアな感覚で向き合わされる。彼が半生を綴った書籍『「孤独」は消せる。』をすでに読んでいる人も、仕事や人生に対する新しい気付きを得られるはずだ。

 著者はこれからの時代を、やりたいと思ったことを実現させてくれる道具が多い「ワクワクする時代」だと言う。やりたくないことがあるなら、やらなくて済むようになるものを作ればいい、と子どもたちに投げかける。そう、大人が勝手に困難な時代と決めつけてはダメだ。子どもと大人が一緒にじっくりと味わえて、ポジティブに明日に向き合いたくなる1冊である。

文=川辺美希

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