楳図かずおの幻のシリーズ本『こわい本』全10巻が新編集&新装版として文庫で刊行! 巻末には楳図かずおインタビューなども収録

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2021年06月24日 19:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真(C)楳図かずお
(C)楳図かずお

 多くのファンから熱烈に復刊を期待されていた天才・楳図かずおの幻の本格ホラーシリーズ『こわい本』(KADOKAWA)が、新編集&デジタル修正&新装版&初の電子書籍化される。6月に同時発売される『こわい本1 蛇』『こわい本2 異形』を皮切りに、2022年2月に刊行予定の『こわい本10 顔』まで、毎月1タイトルずつ刊行予定だ。カバー&帯のアートワークを手掛けるのは、今最も話題を集めるデザイナーの吉田ユニ氏。そして注目は、各巻の巻末に収録される楳図かずおさんへのインタビューだ。シリーズ刊行を記念して、『こわい本1 蛇』『こわい本2 異形』に掲載の楳図さんのインタビューの一部をご紹介したい。

楳図先生の生い立ちの恐怖譚から。(『こわい本1 蛇』より)

 其ノ一――子どもの頃の話

 僕が子どもの時、両親から聞いたこわい話をしましょう。

 僕の母親は吉野熊野の山の中で生まれ育ち、幼い頃から何度も不思議な体験をしたそうです。火の玉やUFOを見たこともあって、UFOを見たのは自宅の庭で、僕も家の中にいたものですから「どうして見せてくれないんだ」と怒ったのを覚えています。

 父親は小学校の先生で、主に山間部の学校に赴任して教えていました。趣味は土地に伝わる奇妙な話や怪談を採取すること。集めたお話は、おとぎ話がわりに幼い僕に聞かせてくれました。ふたりともこわがらせるつもりはなく、僕もおもしろがって聞いていました。でも、僕が恐怖マンガを描く素地は両親にあったのかもしれません。

 母から聞いた中に「件(くだん)」という牛そっくりの人間の話があります。

 母の実家の近くには、土地の人たちが「新田の別荘」と呼んでいる大きな屋敷がありました。どこかのお金持ちの別荘で、お金持ちのお嬢さんがひとりで暮らして、身の回りの世話を地元の人がアルバイトで引き受けていました。ところが、引き受けた人はみんな三日くらいで辞めてしまうんだそうです。お給料はいいので、すぐに次の人が引き受けるのだけど、やはり三日くらいで辞めてしまう。そんなことが続くと、さすがに噂になります。まもなく「新田の別荘には牛そっくりの娘が住んでいる」「新田の別荘には件がいる」という話がまことしやかに囁かれるようになったのです。

 実は、母が生まれた地方ではときどき牛そっくりの娘が生まれていたらしいのです。牛のような角が生えていて、滅多にしゃべらない。ところが、一言しゃべるとそれは必ず現実になるんですって。証文の最後に「よって件のごとし」と書くのは、そこから来ているのだそうです。

 この話はいつかマンガに描きたかったのですが、SF作家の小松左京さんが『くだんのはは』という作品を書かれたことを知ってやめました。全く別の話なんだけど、先をこされたような気がしたんです。

(文=中野 晴行)

※この続きは、『こわい本1 蛇』「楳図かずおのこわい話其ノ一」に収録。

楳図かずお

楳図かずお、“本格ホラーの神髄”を語る。(『こわい本2 異形』より)

異形はビジュアルなこわさ

 第1巻では「こわさの分類」ということをお話ししました。

 この巻の「異形」というタイトルは、「こわさ」の中でも一番わかりいいと思います。「異形」をさらにわかりやすく言うと「怪物」になりますね。

 これは、少年マンガを描くときに大事なポイントなんですけど、ビジュアルで伝わるこわさを出そうとすると「怪物」とか「異形」が重要な要素になってくるんです。

 僕は最近、新型コロナウイルスの流行であまり外に出ることができないものだから、家にいて、ビデオで昔の外国の映画を観ることが増えました。いろいろ観ましたけど、見応えがあって、わかりやすくて、おもしろいのが、古い怪物もの映画なんです。そのほかはどうもダメですね。透明人間とかフランケンシュタインとか、吸血鬼ドラキュラ……。怪物ものというとバカにする人が多いかもしれないのですが、お話をきちんとつくっていて、理屈ではなく観る者に対する説得力があるんです。少なくともホラーの決め事として納得できるんです。これはとても大事なことです。最近は、ホラーの決め事がわからない人が増えたような気がします。

 たとえば、ホラーの中では、ドアを開けたらそこに怪物が立っていたりしますね。ものすごく綺麗な女性が、不気味になったりもしますね。そこに驚きがあるのに、「わからない」という人がいるんです。順番にきちんとしていないといけない。そんなことしたらホラーでなくなるのです。その点で、さっき言った昔の怪物映画はとてもよくできているのです。理屈ではなく驚かせてくれるのです。

※この続きは、『こわい本2 異形』(「楳図かずおのあとがきみたいなあとがたり2」)に収録。

 なお、『こわい本1 蛇』『こわい本2 異形』の2冊は、文芸WEBマガジン「カドブン」にて8月15日までの期間限定で試し読みをすることもできる。楳図かずお氏が届ける、「魂を震え上がらす恐怖」を堪能してほしい。

こわい本1 蛇

こわい本2 異形

■あらすじ
『こわい本1 蛇』
美しく優しい姉が異様な変貌を遂げる恐怖を描く「うろこの顔」をはじめ、映画化された「蛇娘と白髪魔」、「口が耳までさける時」の3篇を収録。

『こわい本2 異形』
異形をテーマに再編集。「笑い仮面」(前・後)と「地球最後の日」を収録。楳図かずおの初期の傑作ホラーが新編集で蘇る。

楳図かずお
(C)楳図かずお

著者プロフィール 楳図かずお

1936年、和歌山県高野町に生まれ、奈良県五條市で育つ。小学校4年生で漫画を描き始め、高校3年生の時、『別世界』『森の兄妹』をトモブック社から単行本で出版し、デビュー。『へび少女』『猫目小僧』などのヒット作により、“ホラー漫画の神様”と呼ばれる。『漂流教室』ほかで小学館漫画賞受賞。一方、『まことちゃん』でギャグの才能も発揮。作中のギャグ、“グワシ”は社会現象となった。このほか、『おろち』『洗礼』『わたしは真悟』『神の左手悪魔の右手』『14歳』など、数多くのヒット作を生み出す。その他、タレント、歌手、映画監督など多数の肩書きを持ち、様々なジャンルで活躍中。2018年、『わたしは真悟』で仏・アングレーム国際漫画祭「遺産賞」受賞。また同年度、文化庁長官表彰。


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このニュースに関するつぶやき

  • 楳図かずおもいいけど、日野日出志もいいぞ、ホラーの両極としてともにイイ、時代が公害、環境破壊、核実験、東西冷戦の頃なので、時代を写す作品が多いです。
    • イイネ!6
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