整形要求、セクハラ、給料なし…全員で脱退した「K-POPグループ」、事務所から1500万円請求され裁判に

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2021年07月24日 08:11  弁護士ドットコム

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日本人ながら、K-POPグループとして韓国デビューを果たした「SKY GIRLS'」(スカイガールズ)のメンバー4人全員が脱退を申し出たところ、所属事務所から1500万円を超える損害賠償を請求された。


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事務所側は、契約に反して活動を拒否したことや、ダイエットに失敗するなど「自己管理を怠った」ことを根拠にしている。



一方、メンバーによると、整形手術を迫ったことや度重なるハラスメント、給料未払いについて改善を求めて話し合いをしてきたのにまったく進展せず、その状況下で、突然、訴状を送り付けられたという。(ライター・玖保樹鈴)



●専門学校の講師だった代表と出会った

スカイガールズは、カリナ、サヤ、ミレ、ルナの4人組で、全員が同じ音楽系専門学校に通っていた。2015年、カリナが、同校の講師だった事務所代表と出会い、その1年後に3人も代表と知り合った。



それから2年後の2017年、K-POP歌手を養成するオーディションイベントで、4人を含む7人が合格した。このとき代表は審査員の1人で、7人体制でスカイガールズが結成された。



その当時から、代表に毎日連絡を取ることが義務付けられていたという。



「朝起きたら韓国語でのあいさつと、家を出るときには『今電車に乗りました』とか「●●に到着しました」などの報告を入れていました」(サヤ)



●グループ結成後「束縛が激しくなった」

メンバーによると、代表は「怒るときは怒り、優しいときは優しい講師」だったのに、グループが結成されてからは、急に束縛が激しくなった。



2017年9月、専属アーティスト研究生として契約書にサインしたが、2018年3月までに2人脱退した。すると代表は「あと1人辞めるなら解散する」と言い出したという。



「何かあると怒って大声を出すなど、代表を怖いと思うことは何度もありました。でも、自分が辞めると言ったことで、ほかのみんなの夢が終わってしまうと思うと、何も言えなかった。従うしかないと思っていました」(ミレ)



「気分次第でテンションが変わるし、意見を言ってもはねかえされる。だから、『どうせ何を言っても無駄だ』と委縮していました」(カリナ)



●韓国デビューの準備中「セクハラ行為がはじまった」

しかし、同年10月にもう1人が辞めてしまい、4人体制となった。このころから韓国デビューの準備が始まったが、代表は「ボディチェック」と称して、身体を触るなどのセクハラ行為におよんできたという。



「(代表が)『デビューするにあたり、体型をチェックしないと』と言い出し、毎日体重を測定させられました。おしりも触られて『もっとあげたほうがいい』と言われた人もいます」(メンバー全員)



事務所は、代表とその妻の2人体制で、妻は韓国語の講師役をしていたが、それ以外は「全部自分がやる」と代表が仕切っていた。ダンスやボイストレーニングの講師もおらず、実質的に自主練習状態だった。



2019年1月、レコーディングのために渡韓することが決まったが、それに先立って2018年12月、韓国で整形することを迫られた。



「ソウル市内の整形外科でカウンセリング受けることになり、メンバーの中には『胸が小さいから手術で大きくしたほうがいい』と言われた人もいました。メンバーの中には『自分の身体にメスを入れるのは嫌だ』と伝えた人もましたが、整形手術をする方向に話が進みました」(カリナ)



しかも手術代は、事務所の負担ではなく、各メンバーが自分で支払わなくてはならなかった。全員、整形手術は免れたものの、代表から「メンテナンス代」として、1人あたり10〜20万円程度を請求されて、4人とも払っている。



「練習生という名目だったので給料を払われていなかったのに、『もう一般人ではないのだから』と言われてアルバイトを制限されていたので、みんな、親からお金を借りていました。代表に渡したお金は、今も返してもらっていません」(カリナ)



「このときに撮影された写真を『自分もチェックするから』と代表が言い出し、『それは困る』とみんなで言ったものの、実際に阻止できたかはわかりません。その前から私たちが『着替えるから』と言っても、部屋から退出しないことがありました」(ルナ)



●「会いたい、死にそう」「いつ結婚してくれる?」

2019年6月から、デビューに向けて韓国での生活を始めることとなった。同年7月には、ミュージックビデオ(MV)を撮影するなど、夢が現実化していく反面、代表からの束縛はさらに激しいものとなっていったという。



「代表は、日本と韓国を行き来していたので、『あなたたちを見守るためです』と言い出し、スマホの位置情報アプリで居場所がわかるようにするよう求められました」(ルナ)



「怒りだすのが怖かったので、毎日ちゃんとオンにしていました」(ミレ)



「練習をしていたときに突然メンバーに通知が来て、代表が私たちの居場所をチェックしていることがわかりました。韓国の事務所と合宿所の往復しかしていないのに、韓国に来てもまだ『俺のやり方に従えないなら辞めていい』と言うので、何も言えませんでした」(カリナ)



同時に「会いたい、死にそう」「いつ結婚してくれる?」「愛してる♥」「私のもの」「女になりましたね」などと書かれたLINEが1人ひとりに届くようになった。



それでも夢を諦めなかった4人は2019年11月、ワーナーミュージック・コリアから『ノッテムネ』という曲でデビューを果たす。



●ようやく正式契約を結んだが・・・

しかし、「日本人メンバーだけでは、出演は難しい」と韓国メディアに言われ、ライブや音楽番組への出演はなく、YouTubeにMVがアップされたり、地方イベントに参加する程度の活動にとどまった。



また、その1カ月前に所属事務所と正式に専属マネジメント契約をしたものの、「とても契約書とは言えない内容だった」という。



「私たちに支払う著作権使用料のパーセンテージが空欄のままだったりなど、かなり不備が多い契約だったのですが、『今サインしないと先に進めない、デビューできない』という感じで促されて」(カリナ)



契約書は、グループが結成された2017年5月からの10年契約となっていた。なぜ2年も遡るのかと疑問に思ったが、メンバーは「10年間という期間が動かせないのであれば、遡らせれば契約が早く終わり、契約期間が短縮されるだろう」と受け入れ、YouTubeチャンネルなどを続けていた。



ところが、2020年2月、コロナ禍で活動停止を余儀なくされる。



●コロナ禍に「脱退」を申し出る

渡韓はおろかメンバー同士が集まることもままならず、個別に自主練習を続けていたところ、代表から毎晩のようにビデオ通話を強要されるようになった。いつかかってくるかは代表の都合次第で、セクハラまがいの発言も目に付くようになった。



「『日本にいると私たちの韓国語が衰えてしまうので、韓国語で日記を書いてそれを報告するためにビデオ通話しましょう』と最初は言われていたのですが、話すうちに代表の個人的な話を聞かされることになって。切りたくても怒られるから切れない、いつ終わるんだろうとずっと思っていました」(カリナ)



「『みんなに会えないから体調が悪くなった』『胸のマッサージしてる?』『脚見せて』などと言われる人もいました」(ミレ)



夜中の1時過ぎにかかってきたり、「キス顔をしろ」と要求されて、応じないと「なぜしない!」と怒られるメンバーもいたという。代表からの電話を強いストレスに感じるようになった4人は話し合いを重ね、7月に全員で脱退することを決めた。



「代表に対して気持ち悪さが募っていたのですが、『コロナで韓国に行けなくなったので、日本での活動を増やす』と言われたので、辞めるならその前にしようと、みんなで決めました」(カリナ)



待ち合わせ場所に行き、脱退を申し出る連名の文面を直接手渡すと、代表は黙り込んでしまったという。



●突然、訴状が届いた

その後、関係者を含めた話し合いを複数回繰り返す中、代表から謝罪文を渡された。



しかし、「毎日のように死にたい気持ちでこの1カ月を生きて来ました」「多くの人からスカイガールズのデビューは難しいだろうと否定的な話があっても、私は練習や生活も頑張ってる。スカイガールズが傍にいたから乗り越える事ができたし耐えることもできました」など自分のことばかり書かれた内容だった。



「それまで、私たちのほうから、給料が出なくても責めたことはなかったし、代表が泣きながら『ちゃんと話を聞かせてくれ』と言うので、苦しかったことを話し合いですべて伝えました。嫌なことを全部伝えたのは辞めさせてほしかったからで、謝ってほしいわけじゃなかった」(カリナ)



話し合いの場は8回以上もうけたが進展せず、その後、書面を2回送ったものの、1度返信はあったが進展ないまま2021年を迎えた。ところが、5月に突然、メンバー4人のもとに「マネジメント契約が存続しているため、これまでの活動にかかった1521万1554円を支払え」と書かれた訴状が届いた。



「訴状が来た日は私の誕生日だったのですが、アルバイト中に母親から連絡があって。そのことで頭がいっぱいになってしまい、仕事が手につかなくなりました。金額もそうですが、裁判なんて経験したことないので、どうしていいかわからなかったし、それ以前にこんな内容が通るのかと思いました」(サヤ)



●グループを継続する意思はない

4人の代理人をつとめる河西邦剛弁護士は、グループの活動や事務所からの指揮監督関係の実態から、法的には「労働契約」といえ、しかも終始無給であったことから、脱退を申し出た時点で、契約は解除されていると主張する。



また、「目標体重にならず、自己管理を怠ったことは債務不履行」という請求の根拠については、「ダイエットに失敗したから損害賠償なんていうのは法的に認められない。しかも請求金額が1500万というのも、恫喝的な訴訟のように感じざるを得ない」と主張し、裁判における事務所の対応によっては、メンバー側から反訴することも視野に入れていると述べる。



取材に対して、4人は今後、スカイガールズとしての活動を継続する意思はないと断言した。芸能活動そのものは続けたいメンバーもいれば、引退を決めたメンバーもいる。



「ファンとメンバーのことは大好きだったので、スカイガールズを続けられるなら続けたかったから、悔しかったです。ファンに何も言えずに活動が止まってしまったのも悲しいです」(サヤ)



「親も期待してくれてたし、その親にお金を借りたのに辞めることになって、さらに裁判にまでなって。でもコロナ禍で代表と会わないうちに、会うことそのものが怖くなりました。ストレスで体調を崩しそうでした」(ルナ)



「このまま続けても、代表に何をされるかわからないから怖い。未来が見えなくなってしまったので、この先どうするかはまだは決めていません」(ミレ)



「私たちと同じような環境にいる方々が少しでも減ってほしいと思い、今回の取材を受けることにしました」(カリナ)



裁判はすでに進行していて、第2回口頭弁論が7月26日に予定されている。


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