女が外で稼いで、男は家を守る…男女反転の女社会が現代の問題点を映し出す衝撃小説

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2021年07月24日 11:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『ミラーワールド』(椰月美智子/KADOKAWA)
『ミラーワールド』(椰月美智子/KADOKAWA)

 どだいこの世に女として生まれたからには、多少の差別に遭うのはもう仕方のないことだと諦めていた。女は愛嬌。男と争うなんてナンセンス。飲み会の席で男性からあびせかけられたセクハラまがいの言葉も、共働きのはずなのに不平等な家事分担も、すべては女として生きるための通過儀礼のようなものなのだと自分に言い聞かせてきた。

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 だが、本当はずっと腹を立ててきたのだ。そのことを思い出させてくれたのが、『ミラーワールド』(椰月美智子/KADOKAWA)。2021年に菅野美穂主演で映画化された『明日の食卓』などの著作で知られる椰月美智子氏が描く男女反転の物語だ。女が外で稼いで、男は家を守る――そんな“女尊男卑”の女社会を描いた物語の世界に触れれば、今の世の中の問題がくっきりと見えてくる。

 この物語は主に3人の男の視点で進められていく。「働くパパ」として学童保育で働きながら主夫業をこなす池ヶ谷良夫。医者の妻をもち、専業主夫として働く中林進。妻の実家に婿入りし、義父とともに理容室を営むも、舅婿問題に悩まされている澄田隆司。保護者として中学校のPTA役員になった3人は理不尽な生活に順応したり抵抗したりしながら、日々妻と子どもを支えようと毎日奮闘してきた。そんな中、ある生徒が塾帰りの夜道で何者かに襲われる事件が発生。彼らは改めて自らの暮らす世の中のおかしさに気づかされていくのだ。

 3人の主夫たちの毎日には不条理なことがいっぱいだ。たとえば、教員の妻をもつ良夫は、妻同様、教員として働いていたが、結婚して子どもができたことをきっかけに教師の夢をあきらめ、2人の息子の育児に15年間を費やしてきた。今は「婦夫」2人共働きであるはずなのに、家に帰ってきた妻は「ご飯まだ?」と文句を言うばかりで、ゴミ出しさえもしない。妻の態度を注意すれば「誰の稼ぎで食べられると思っているんだろうねぇ」なんて嫌味を言われることもある。

 家庭内に限らず、この物語世界では、すべてが女性優位にできている。国会では子連れで出席した男性議員に「議員をやめて家にいろ」「保育園に落ちたのか」なんてヤジが飛ぶし、医学部の入試では女子学生を優遇する不正が発覚。男性アスリートはその功績よりも外見が話題になるし、男性有名人は股間の大きさを含む「フォーサイズ」が紹介される。オバサンたちは若い男子に平気でセクハラをしてくるし、「あなたとならできるわ」なんて言葉をかけてくることも。女の浮気は甲斐性だから男は我慢すべきだし、シングルファザーになるのも、レイプ被害に遭うのも自業自得と言われてしまう世界なのだ。

 読みながら何度「うわ…」と声をあげそうになったことだろう。この世界はディストピアと呼んでも過言ではないように思われたのだ。しかし、この物語は「ミラーワールド」。虚像とはいえ、現実社会を正しく映しとったもの。よくよく考えれば、描かれているのは、現実を生きる女性たちにとって身に覚えのあることばかりだ。

 鏡に映されてはじめてこの世界の異様さに気づかされた。今の世の中に疑問を持つ人も「気にしすぎでは?」なんて思う人も、男女問わずに読んでほしい衝撃の1冊。

文=アサトーミナミ

このニュースに関するつぶやき

  • なんか文句垂れてる奴。怨み節なら君の無能なママンに言え。君のママンも、(イイネ!してる奴を含めた)他人から見たらただの“女”だよ。それとも君のママンは男か?あるいはパパの尻から生まれた汚物かい?
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  • そのミラーワールド内では "男性だから" という理由で "優遇" される事は一切無いんですかねぇ? あるいは "女のくせに" と "非難" される事とか。
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