1位は「何をやってくるかわからない変人」。坪井慶介が選ぶ、イヤだったFWトップ10

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2021年07月24日 11:51  webスポルティーバ

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トップレベルでゴールを決められるFWは、どんなプレーをしているのか。今回はこれを、FWをマークするDF目線から紹介する。元浦和レッズのDF坪井慶介さんに、これまでのJリーグの対戦相手のなかで、イヤだったFWトップ10を選んでもらった。

◆ ◆ ◆




10位 黒部光昭(元京都パープルサンガほか)

 黒部さんは福岡大学時代の先輩で、昔からよく知っています。大学の頃から身体能力がとんでもなく高いFWでした。

 大学時代はジャンプ力がありすぎて、よくファールを取られていました。普通の選手がヘディングする高さのボールを胸トラップするんです。その時に黒部さんのヒジが相手の頭に当たってしまう。それほど高く飛んでいました。

 僕も身体能力には自信がありましたが、そこでは単純に敵わないので、対戦してイヤな選手でした。

 もちろん、FWとしての能力も非常に高い選手でした。クロスに合わせるのもうまいし、自分がボールを持って仕掛けることもできるし、両足でシュートも打てる。どんな形からでも点が取れる選手で、とくにペナルティーエリアの中で強さを発揮するタイプのストライカーでした。

9位 大久保嘉人(セレッソ大阪)

 ゴールへの執念、嗅覚がずば抜けたストライカーですよね。Jリーグは外国人ストライカーがその部分に秀でていますが、日本人ストライカーのなかでは嘉人が一番だと思います。自分がゴールを取るための逆算をした動きがうまいし、常にゴールを狙っている。そこは対戦していて本当にイヤなところでした。

 シュート技術もパンチ力もあるので、ペナルティーエリアの外に逃げたから大丈夫ということはありませんでした。どこからでも両足でミドルシュートが打てるし、ちょっと角度があると巻いたシュートも打ってくる。点を取る形を多く持っていたので、実際に「やられたな」と思うシーンもたくさんありましたね。

 だから嘉人と対戦する時は、時間とスペースを与えない点をいつも意識していました。とにかくタイトにマークしてイラつかせる。気持ちよくプレーさせないのが大事でした。

8位 佐藤寿人(元サンフレッチェ広島ほか)

 もう、オフ・ザ・ボールの神ですよね。動き出しのうまさはもちろん、周りの選手に合わせて動き出すのに優れていました。

 例えば嘉人は「ここに出せ」という動きをするんですけど、寿人はボール保持者の状況とか、特徴に合わせた動き出しが巧みで、相手との駆け引きにも本当に優れていました。個人的にはこのタイプが嫌だったのもあり、嘉人より寿人のほうを上の順位にしました。

 とくに印象に残っているのが、青山敏弘がボールを持った瞬間の動き出しですね。青山が蹴る、そのジャストのタイミングで動き出すのは、まさに阿吽の呼吸でした。

 しかも近い距離感のグラウンダーパスではなく、ボランチの位置からの長いボールだったわけです。これで呼吸を合わせるのは非常に難しいんですが、それをあの精度でピタリと合わせていたのはすごいと思います。

 DFとしては青山の位置にボールがあると、ラインを上げたいんですけど、そうすると寿人の鋭い動き出しと青山の正確無比なロングボールが飛んでくるので、非常に厄介でしたね。

7位 マルキーニョス(元鹿島アントラーズほか)

 とにかく得点能力に優れたストライカーでした。ペナルティーエリア内での巧さに加えて、右足でミドルレンジのシュート。そこで本当によくやられた印象があります。

 足元のテクニックはもちろんですけど、動き出しの質も非常に高かったですね。カウンターで裏へ抜け出す動きや、逆にこちらが裏をケアした時に下がってボールをもらう動き、そこから反転してシュートといったパターンを得意としていました。

 あの頃の鹿島はFWがずっと前に張っている感じではなく、サイドの裏のスペースに逃げて、空いたところにほかの誰かが入ってくるプレーが多かったんです。だからDFとしては、非常にマークにつきにくかった記憶があります。

 それから鹿島には試合の流れを読める選手が多かったんですけど、そのなかでもマルキーニョスはとくに試合巧者でした。リードされている時は、よくボールキープされましたね。

6位 興梠慎三(浦和レッズ)

 慎三は、寿人に匹敵するオフ・ザ・ボールの動きのうまさがあって、それに加えてちょっと天性の感覚を生かした動きをするんですよ。寿人は常に状況判断が伴ったオフ・ザ・ボールの動きなのに対して、慎三のほうがちょっと野性味がある。その点で読みにくい選手でした。

 それから身体能力の高さ、体のしなやかさも特徴でしたね。ちょっと無理そうなボールでもなんなく収めてしまうポストプレー、あれは本当に嫌でした。クロスに対しての動きが巧みで、あがってくるボールに対しての判断と動き出しは抜群でした。

 鹿島時代から昨シーズンまで9年連続2ケタゴールを挙げているように、フィニッシュのクオリティも高い。とくにペナルティーエリア内で非常に落ちつきがある選手だと思います。

 鹿島時代は抜け出す動きが多かったと思います。ただ浦和に移籍して、とくにミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督時代は、慎三のところで味方からのボールを受ける質を求められていたので、彼の特徴がより生きたと思います。

5位 アラウージョ(元ガンバ大阪ほか)

 彼の武器は左足のシュートとドリブルですよね。一瞬の速さとペナルティーエリア内の駆け引きで、何回もやられたイメージがあります。動き出しの巧さもあったんですけど、やはりボールを足元で受けてから、独力でなんとかしてしまう能力が際立っていました。そこは守る側としては本当に嫌でした。

 ほぼ左足でプレーする選手だったので、彼と対戦する時はとにかく左足でプレーさせないようにと意識していました。でもそこを逆手にとられて、右足でズドンと決められたこともあって「ミーティングで左足しか使わないって言ってたじゃん!」となりました(笑)。

 とにかく彼の間合いでプレーしてしまうと止めようがなかったので、素早く体を寄せてスピードに乗らせない、自由にドリブルをさせないように意識して対応していました。

◆日本人No.1ドリブラーは誰か。元日本代表のレジェンドがトップ10を決定>>

4位 高原直泰(沖縄SV)

 4位から上の選手は、僕がイヤだった面もあるんですけど、プレーしていてワクワクしたり、自分を成長させてくれた選手たちになります。高原もマークしていてしんどい相手なんですけど、そう感じさせてくれた選手の一人です。

 彼にはいろんなやられ方をしましたね。クロスからの動き出しでやられたこともあるし、ポストプレーからクルッと反転して持って行かれたこともあるし、とにかくバリエーションが豊富なので「これを切れば守れる」というのがなく、的を絞りづらい選手でした。

 だから高原に対して対策するより、彼にボールが入らないように出し手を狙ったり、インターセプトを狙う意識でしたね。

 ストライカーとしてあらゆる能力が高かった選手ですけど、そのなかでもシュート技術はずば抜けて高いものがありました。外国人選手って内転筋の強さを生かして強烈なインサイドキックのシュートをよく打つんですけど、日本人にはそうした選手はいないんですよ。

 でもJリーグや代表でのシュート練習で、高原がインサイドの強烈なシュートを何本も決めるんです。初めて見た時は「こんなすごいインサイドシュートを打てる日本人いるんだ」と思いました。

3位 ジュニーニョ(元川崎フロンターレほか)

 本当に速い選手でした。一瞬も気が抜けなくて嫌だったんですけど、僕はスピードで勝負するのが好きなDFだったので、彼との勝負は楽しかった思い出ですね。やられることも多かったですけど、止められた時の爽快感は格別でした。

 川崎には中村憲剛がいたので、彼から良いスルーパスが出てきて単純なスピード勝負になると追いつけないんですよね。だから予測して、どれだけこっちが良いスタートを切るか、良いポジションを取るか。彼との勝負ではその部分をすごく学びましたね。

 ジュニーニョは、どうやったら裏へ抜け出せるかという駆け引きが上手でした。外に開いた時はもちろん、中にいる時も常にどう裏を取るかを考えていたと思います。

 あれだけ点を取った選手なので、シュートの技術、多彩さもありました。なかでも得意な右足で打てる場所まで持っていく、体の使い方や速さは卓越したものがありました。




2位 ウェズレイ(元名古屋グランパスほか)

 ウェズレイはとにかくパワーとスピードが突出していました。それを生かした前への推進力、爆発力は、すさまじいのひと言。上半身からお尻、太ももとか、体の分厚さがとにかくすごかったんですよ。あの体の強さは、Jリーグで対戦したなかで一番だったと思います。

 当たってもびくともしない。普通であれば、こっちが体をぶつけにいくと、相手は体勢を変えて押し返したり、逆に向こうからぶつけてきたりするものなんですけど、そうしたことが一切なかったですね。

 ウェズレイがただ真っ直ぐ進んでいるところに、僕らが勝手にぶつかっては勝手にはじかれていくみたいな感じでした(笑)。僕らは障害物にもなれなかったんですよ。

 だから、ちょっと体からボールが離れた瞬間にスライディングで狙ったり、そういうところでしか止められなかったですね。

 もちろん、それだけではなく巧さもありました。よくやられて覚えているのが「半抜きシュート」です。ちょっとボールをずらして、こっちが足を出す前にシュート。あれがとにかく速くて正確でした。

 当時の浦和のギド・ブッフバルト監督に「お前わかってただろう!」とよく怒られましたよ。その度に「わかっていたんだけど止められなかったんですよ」と言ってました(笑)。

 ただ、その分、やりがいも本当にありました。なんとかしてウェズレイを止めたいと、いつも思っていましたね。




1位 久保竜彦(元サンフレッチェ広島ほか)

 あの人は変人ですね(笑)。もう何をやってくるかわからない。とにかく規格外の選手でした。右足はほぼ使わないんですけど、だからといって左足のすごい技巧派かと言ったらそういうわけではない。すごくスピードがあるのかと言ったらそうでもない。ただ、身体能力はずば抜けていて、スケールがものすごく大きい選手でした。

 横浜FC時代の2007年の開幕戦で、信じられないロングシュートを決められたのは忘れられません。「そんなところから打つ!?」という感じですよ。ボールを受けて、ちょっと前を向いたと思ったらズドンと。「は? どのタイミングですか?」と(笑)。失点した時は浦和のサポーターから怒号が飛んでくるものなんですけど、あの時は埼スタがシーンとなりましたからね。

 10位の黒部さんもそうでしたが、ジャンプ系の身体能力は突き抜けていましたね。もともと僕よりタツさんのほうが身長は高いので、ヘディングの高さはあるなとは思っていたんですけど、実際に対峙してジャンプされた時の衝撃はすごかった。ちょっと日本人離れしていました。

 タツさんが広島にいた頃は僕が1年目だったんですけど、その頃からこの選手との対戦は本当に楽しいなと思っていました。

 タツさんのように型にはまらない選手は、通常であれば最初はそれで通用しても、段々とDFのレベルが上がってくると難しくなってくるものなんです。だからそこでプレーを計算したり、駆け引きを覚えたりするんですが、この人は一切してきてないと思います。

 最近会うことがあって、当時の話になったんです。「タツさん、あの頃なに考えていたんですか?」と聞いたら「あ? なんも考えとらん」と即答されましたよ。「あの時のあのシーンは」と聞いても「わからん。覚えとらん」ですからね(笑)。

 点を取るためにいろんな努力をしてきた人たちを、度外視するような存在だったと思います。今回のランキングを考える時に、1位はすぐに決まりましたね。

番外編 エメルソン(元浦和レッズほか)

 今回は僕の対戦相手ということでランキングには入れなかったんですが、練習で対戦した経験だけでも、エメルソンはタツさん以上の存在でした。

 高いテクニックと爆発的なスピード、駆け引きの巧さは、今回のランキングのなかでも一番でした。単純なスピードでも敵わなかったし、裏に抜けても、足元で受けてもどんな形からでも点が取れるので、どうにも止めようがなかったです。

 エメは練習を真面目にやるタイプではないんですけど、試合形式だったり、1対1だったり、ゴールが関わってくる練習は真剣なんですよ。だから相手をするDFとしてはものすごく勉強になりました。

 あの当時は、ハンス・オフト監督でしたけど、僕はいつもエメとペアを組んでフィジカルトレーニングをやったり、紅白戦では絶対に敵チームでした。彼とやることで、僕もどんな相手が来てもやれると、自信を与えてもらえたと思いますね。

 逆に味方としたらこれほど頼もしいFWもいませんでした。細い要求はなく、とにかく俺に預けてくれたら大丈夫という選手で、僕らは守っていればエメが点を取ってくれる安心感がありました。

坪井慶介
つぼい・けいすけ/1979年9月16日生まれ。東京都出身。四日市中央工業高校、福岡大学を経て、2002年に浦和レッズ入り。俊足を生かしたDFとしてチームの数々のタイトル獲得に貢献した、日本代表としても国際Aマッチ40試合出場。その後、湘南ベルマーレ、レノファ山口でプレーし、2019シーズンを最後に現役引退。現在はタレントとして活躍中。

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