動物愛が炸裂! 人気動物漫画家・佐倉イサミさんと類さんが語る「小さな家族」を描く意味

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2021年07月25日 15:11  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真『姫ばあちゃんとナイト』(佐倉イサミ/KADOKAWA)
『姫ばあちゃんとナイト』(佐倉イサミ/KADOKAWA)

 近ごろは、動物と人間の温かい交流を描いた動物漫画が話題になることも多いもの。中でも、おてんばな愛猫との日々を描いた「茶トラのやっちゃん」(類/KADOKAWA)シリーズとピクシブエッセイ主催の「とある日常マンガ賞」大賞に輝いた『姫ばあちゃんとナイト』(佐倉イサミ/KADOKAWA)は、世の動物好きを笑顔にしている大注目のほんわかコミックエッセイ。著者である佐倉さんと類さんのリモート対談が実現! その胸にある熱い動物愛や作品に込めている想いなどを語っていただきました。

(取材・文 古川諭香)


『茶トラのやっちゃんとちーちゃん』(類/KADOKAWA)

人気作品の裏に秘められた深い動物愛

――はじめに、おふたりの経歴を教えてください。

佐倉イサミさん(以下佐倉) 私は2013年に『ねこぱんち』(少年画報社)という猫専門の漫画雑誌でデビューし、以降、猫や人間を題材にした創作漫画やご飯漫画など、色々な作品を描いてきました。犬も描きますが、どちらかというと猫を描くほうが多かったように思います。

類さん(以下類) 私は2020年に愛猫との日々を描いた『茶トラのやっちゃん』という作品で、漫画家デビューしました。現在はマンガ配信サービスの「GANMA! 」で、実録エッセイ『マンガ家 “類”の人間やめても..』を、Twitterでは『がんばれ!コッペパンわに』という作品を配信しています。

姫ばあちゃんとナイト
一人暮らしの姫ばあちゃんと彼女を守る“ナイト”の日常を描く創作漫画『姫ばあちゃんとナイト』

茶トラのやっちゃん
著者類さんと愛猫たちの日常を描くコミックエッセイ 『茶トラのやっちゃん』シリーズ

――佐倉さんは創作系動物漫画、類さんは実録系動物漫画を描いておられますが、実際これまでにはどんな動物と暮らしてきたのでしょうか?

佐倉 小学生の頃は金魚を飼っていました。社宅住まいが長かったので、なかなか動物を迎えられませんでしたが、大学生になった頃、実家に豆柴がやってきました。そして、4年前にキジトラの女の子を保護したので、今は猫と暮らしています。愛猫はすごくマイペース。姫みたいな性格です。

――ちなみに、佐倉さんの『姫ばあちゃんとナイト』のナイトくんは昔、一緒に暮らしていた愛犬の司くんがモデルになっているとのことですが、実際の司くんはどのような性格でしたか?

佐倉 帰宅しても、お出迎えしてくれないようなツンデレさんでした。家族内の順位は、私が一番下(笑)でも、悲しい時や調子が悪い時などには空気を読み、寄り添ってくれていました。

――まさにナイト(騎士)ですね!類さんもウッチャンという愛犬を飼われていたそうですね。

類 ウッちゃんは、里親募集されていたラブラドール・レトリバーの男の子です。私が小学校高学年から中学生くらいの頃にお迎えしました。生後間もない頃に迎えたので初めは吠えまくっていて、少し大変な思いもしました(笑)

――名前がちょっぴりユニークですね!

類 本名は「ウッディー」です。お迎えした時にトイ・ストーリーが流行っていたからか、父親が考えた名前候補の中に「ウッディー」があって、それに決まりました。すごく賢い子で、佐倉さんが描かれたナイトくんに似ているところもありました。

姫ばあちゃんとナイト
『姫ばあちゃんとナイト』あとがきより 佐倉さんの心の支えになっていた愛犬の司くん

茶トラのやっちゃん
『茶トラのやっちゃん』より 先住犬ラブラドールのウッちゃんと初めて会ったときのやっちゃん

――他にはどんな動物と暮らされてきたんですか?

類 金魚やジャンガリアンハムスターとも暮らしてきました。現在はやっちゃんやちーちゃんの他に、クサガメののこちゃんもおうちで暮らしています。

――やっちゃんを迎え、初めて猫飼育を経験されたそうですが、猫という動物のイメージは何か変わりましたか?

類 私はこれまで猫に懐かれたことがなく、近寄っても逃げられていました。だから、猫はクールで気まぐれな生き物だと思っていたのですが、やっちゃんは私自身が猫に懐かれるように努力したこともあったからなのか、すごく甘えん坊になってくれて…。犬と同じくらい感情が豊かで、鳴き声も「ニャー」だけではないことに驚きました。

――懐いてもらうためにどんな努力をされたのでしょうか?

類 威嚇が激しかったので、まずは自分が害のない人間であることを示そうと思い、「極力目を合わせない」「突然動かない」「動く時はゆっくりと」を心がけました。小さい声で優しく話しかけるようにもしていました。

茶トラのやっちゃん
やっちゃんを保護した当時の話。類さんの努力の甲斐あり少しずつ威嚇が減っていき…

誰も傷つくことがない「優しい動物漫画」を

――そもそも、動物漫画を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

佐倉 私はもともと趣味で同人誌を描いていて、「コミティア」という同人誌即売会で猫耳がついた子たちが活躍する漫画を販売していました。そんな時に『ねこぱんち』の編集者さんが「佐倉さんは動物そのものを描ける方なので、うちでぜひ」と声をかけてくださり、猫や犬を描くようになっていきました。

――類さんは、やはりやっちゃんと出会ったことが大きなきっかけになりましたか?

類 はい。猫の魅力を伝えたいと思いました。最初は友人など周囲の人に伝えていましたが、愛猫はすばしっこく、スマートフォンが苦手だったため写真を通して面白かったポージングやイタズラを見せることが難しくて…。だから、漫画を描いて伝えようと思い立ちました。

――漫画を描こうと思った際、影響を受けた作品などはありましたか?

佐倉 私は月刊少女漫画雑誌『なかよし』に漫画を掲載しておられた、ふくやまけいこ先生がすごく好きで、模写もしていました。絵本のようなタッチなのに漫画としてもしっかり楽しめるところが凄くて。他には、林明子さんの『こんとあき』(福音館書店)という絵本も大好きです。リアリティがあるのに不思議な世界も描かれているこの絵本にも、大きな影響を受けました。

類 佐倉さんの作品が柔らかいのには、そんな理由もあったのですね!私は影響を受けた作品などは特にありませんが、漫画家になる前はデザイナーをしており、手書きのようなイラストや温かみのある絵本が好きだったので、そうした好みが作品に反映されていると思っています。

――動物漫画を描くには、動物を深く観察することも重要になると思うのですが、おふたりはどのように観察されてきましたか?

佐倉 私は描けば描くほど思い出が色々蘇ってきて、それが段々と整理されていき、ひとつの作品になっていく形です。もちろん、一緒に暮らす中で写真は撮影していたので、それを見て、共に過ごした日をより鮮明に思い出し、作品を完成させることもあります。

類 私は漫画を描く前から猫を観察し、自分が抱いていたイメージと違っていたところやかわいいと思うところなどをTwitterに載せたり、絵日記に描いたりしていました。それがどんどん形になっていって、今に至ります。その日かわいかったところや、面白かったことなどを思い出として残すためにも描いていました。

――作品を描く時は、どんなことに気を付けておられますか?

佐倉 平面上のイラストでも触りたくなるようなもふもふ感が出るように意識しています。あとはリアルティを感じさせつつ、デフォルメも入れ込むようにしています。

類 私は、基本的にはやっちゃんとちーちゃんを描く時はコロコロとした描写になるようにしているのですが、臨場感を出したい時にはリアルな描写にしています。また、実録系であるため、これまで自分がしてきた飼育法が合っているのか答え合わせをしながら描いています。私自身、まだまだ猫飼い歴が浅いのでアドバイスという大それたものではなく、一個人の体験談として楽しんでいただけたら嬉しいです。

姫ばあちゃんとナイト
他の犬の匂いが移るのを嫌がるナイトのためにハグすることにした姫ばあちゃん。 知らぬ間にドッグランの中でブームに…

――動物漫画は日常漫画でもあると思うのですが、「日常を描く」という点ではどんなことに気を付けておられるのでしょうか?

佐倉 目をそむけたくなるような話や読者から怒られそうだと思うことでも描かなければリアリティが出ないことがあるので、そうした部分もちゃんと描くようにしています。でも、どんな話でも必ず希望が感じられるようにと。例えば、『姫ばあちゃんとナイト』は、お年寄りと大型犬という組み合わせであることから、一部の読者の方から「高齢者が犬を迎えるなんて」というご意見をいただいたこともありましたが、本作にはおばあさんとナイトを支える人たちがちゃんと登場するので、安心して読んでいただけると思っています。日常漫画でもある動物漫画は、日常に寄り添うもの。だから、辛いままや悲しいままで終わらせず、しっかり希望を描き、動物漫画で癒されたいという読者の方々の気持ちが満たされるように心がけています。

類 私は登場人物が実在するので、まずはその方たちに漫画化の許可をいただくようにしています。登場する方々のプライベートを傷つけることなく、読者の方にクスっと笑っていただける作品になるようにしています。

姫ばあちゃんとナイト
日常漫画にはときには目をそむけたくなるような現実的なエピソードも入れる。ただし、明るく希望のある終わり方を心掛けていると佐倉さん。

ひとつとして同じものがない「動物漫画」の奥深さ

――おふたりは作風が異なるため、それぞれの作品には違った良さがあると感じたのですが、お互いの描写で「これは…!」と思われた点はありますか?

佐倉 付箋を貼ってお伝えしたいほど、たくさんあります!(笑)特に、同じ漫画家としてハっとさせられたのが、類さんが意識されているとおっしゃってもいたリアルな描写とデフォルメ的な描写の使い分け方。個人的には、お父さんとお母さんのお顔の描き方も大好きです! 日常を描いているのに、しっかり笑えるポイントがある…。それが凄くて、いちファンとしても楽しみながら、何度も読み返しています。

類 ありがとうございます…! 私はまず、ナイトくんのキャラクターがすごく素敵だと思いました。私も大型犬と暮らしてきたので、大きい子ならではの優しさや頼もしさなどに共感もして。そして、あの優しい世界観が大好きです。先ほどもおっしゃられていましたが、「おばあちゃんと大型犬」という組み合わせは一緒に暮らすことが難しいのでは…と思われることもやはりあるとは思うのですが、耳が聞こえにくい姫ばあちゃんと元気よく返事をしてくれるナイトの相性がばっちりで、この2人にはやっぱりお互いが必要なのだと感じ、ほっこりしました。

茶トラのやっちゃん
デフォルメしたイラストばかりでなく、ここぞというシーンではリアルなタッチで猫たちの表情を再現する。

――客観的に見ても魅力満載の作品に、ご自身はどんな想いを込めておられるのでしょうか?

佐倉 実は『姫ばあちゃんとナイト』は、コロナ禍でSNSがギスギスしていることに心を痛め、定期的に流せる柔らかい4コマ漫画を…と思い、描き始めた作品でした。私自身が感じていた「癒されたい」という想いも詰まっているので、読んでくださった方が柔らかい心になってくだされば嬉しいです。

類 私は描くことで思い出を残すと共に、愛猫たちに感謝の気持ちを伝えたいとも思っています。なぜなら、私は闘病中にやっちゃんを迎え、すごく救われたと感じたから…。自分を頼りにしてくれる存在がいるというのは、元気の源になります。

姫ばあちゃんとナイト
寄り添って生きる一人と一匹を描くことで、著者の佐倉さん自身も癒されているそう。

茶トラのやっちゃん
以前、パニック障害になってしまった類さん。 守るべきやっちゃんの存在はとても大きく、2年かけて病気を完治させた。

――ちなみに、今後チャレンジしてみたい作品などはあるのでしょうか。

佐倉 海外の絵本『くまのパディントン』(マイケル・ボンド:著、ペギー・フォートナム:絵、松岡享子:訳/福音館書店)のような、二足歩行して人間みたいに生活する動物とリアルな人間が一緒に暮らしている世界観を描きたいという野望があります!

類 私は、学生時代のバイト経験や介護職・デザイナー経験など、これまでに自分がしてきたことを、愛くるしいキャラクターと絡めた作品を描きたいと思っています。

――今後のご活躍がますます楽しみです! では、最後に読者やいつも応援してくれているファンの方たちにメッセージをお願いします。

佐倉 類さんと対談させていただけて、すごく嬉しかったです。類さんとは描いている動物が違ったり、実録系と創作系という描き方の違いもあったりするのですが、動物との家族愛を感じられる作品であるという点は同じだと思っています。元気になりたかったり笑いたかったりする時は類さんの漫画を、落ち着きたい・癒されたいと思った時は私の作品を読んでいただけたら嬉しいです。

類 今回、初めて漫画家さんとお話させていただき、同じ「動物漫画」というジャンルであっても全く違った作風になるというのは面白いことだと改めて感じました。だから、私自身これから、より色々な動物漫画を読んでいきたいと思いましたし、読者の方にも色々な動物漫画を楽しんでいただきたいです。似たような題材であったり、同じ動物が描かれていたりしても、作風の違いを楽しんでもらえたら…と思いました。

 私は漫画家としても猫飼いとしてもまだまだ未熟な部分がありますが、私の作品で笑ってくださったり泣いてくださったりする方がたくさんいてくれ、ありがたいと感じています。これからも、私とやっちゃん、ちーちゃんの成長を見守っていただけたら嬉しいです。

佐倉イサミ(さくらいさみ)
東京在住のまんが家。お酒、手ぬぐい、動物が好き。
主な著書に『姫ばあちゃんとナイト』『農業男子とマドモアゼル イチゴと恋の実らせ方』(コミカライズ)、『春風ふるさと観光協会』全3巻(KADOKAWA)、『おかわり自転車』全1巻(芳文社)、『またたび古書店』全3巻(少年画報社)などがある。cakesにて『もふっとキャンプ』連載中。

類(るい)
新潟県在住の漫画家。茶トラのやっちゃん(やち/♀/推定4歳)、ちーちゃん(ちよ/♀推定1歳)と出会い、猫なしではいられない身体になってしまった。任侠ゲームと特撮が好き。
著書に『茶トラのやっちゃん』『茶トラのやっちゃんとちーちゃん』がある。
GANMA!にて『マンガ家 “類”の人間やめても..』を連載中。


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