元気に生きる「健康寿命」を延ばすには――江戸時代の健康本『養生訓』から学ぶ、体に無理をさせない生き方

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2021年07月25日 21:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『わがまま養生訓』(鈴木養平:著、上田惣子:作画/フォレスト出版)
『わがまま養生訓』(鈴木養平:著、上田惣子:作画/フォレスト出版)

 日本人の平均寿命は世界の中でも長いとされているが、近年では「寝たきり」や「認知症」などにより自立した生活ができなくなる期間を除いた「健康寿命」の長さが注目されている。厚生労働省の資料によれば2019年の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳となっており、民間企業では同年の健康寿命を男性が72.68年、女性が75.38年と試算していることからすると、約10年は「健康」の外の期間のようだ。

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 大病をしなくとも、足腰が衰えたり目鼻や耳が不自由になっていったりすることを考えると、今からもう気が滅入るばかり。もっと気合を入れ頑張って生きなければ、と自分に活を入れようと思ったら、表紙に「自分の元気はケチケチ使う」とか「無理して人づき合いしない」なんて書いてある、『わがまま養生訓』(鈴木養平:著、上田惣子:作画/フォレスト出版)を見つけた。

 本書は、徳川吉宗が活躍するよりも前の時代、正徳3年(1713年)に本草学者である貝原益軒が出版した健康本『養生訓』を、薬剤師にして日本漢方養生学協会理事長の著者が漫画も交えつつ分かりやすく解説している。益軒が没したのは翌年(出版を正徳2年とする資料もある)のことで85歳というから、当時の平均寿命が短いのは子供の死亡率が高かったという理由を差し引いても、生涯現役だったと言って良いだろう。

江戸時代は飽食の時代? 1日4食の人もいた

「どうすれば一生元気で長生きできるか」がテーマの本書は、いわばハウツー本でもあるから呼吸法やストレッチなども載っている。しかし、『養生訓』が書かれた当時の江戸の周辺情報が面白い。『養生訓』には繰り返し「食べすぎは短命のもと」と出てくるそうで、漠然と江戸時代の食事は質素なものと思い込んでいたから驚いた。1日2食だった初期の江戸時代と較べると、この頃には文化も成熟して飽食の時代を迎え1日3食となり、なかには朝昼夕晩の1日4食という人もいたのだとか。そのため、「江戸肥満」なる言葉が流行ったほど。『養生訓』が当時のベストセラーになったのも、人々が食べることに困らずに、かえって体の調子を悪くしてしまうという背景があったからかもしれない。

 また、夜の読書や人との語らいは深夜零時を限度として就寝するよう戒めているのも意外に思えた。菜種油の生産が盛んになって夜の灯りにも困らなくなり、夜更けまで読書をする人が多かったそうだ。

40歳を過ぎたらスマホを見るべからず?

 思った以上に現代に通じる内容で、40歳になったら早めに眼鏡をかけて視力を養うようにともある。そして『養生訓』には益軒の経験から基づく話ばかりではなく、明(みん)代の李挺が著した総合医学書(1575年発刊)からの引用もあり、それこそ「40歳を過ぎたら、用事がないときは、いつも目を閉じておきなさい」というのは、なにやらスマホを手放せないのを戒められているみたいだ。単なる偶然か、私の感じ方が飛躍しているのか。いや、そうではない。「悪口をいいつづけるのは、養生の道に反しています」とか「奇怪なものや実態のないものを無闇に信じるな」なんていうのは、どうしたってSNSや様々なメディアのことを連想してしまう。著者によると、漢方では「心(しん)は君主の官」とも云われているそうで、からだ全体を統括する心が乱れると他にも影響を及ぼし、心を落ち着かせれば病気にかかりにくくなると解説している。

唾液は最高の名薬である

 さて、食事の話に戻ろうかと思ったのに、そこにも「禍(わざわ)いは口より出(い)で、病は口より入(い)る」ゆえに「口の出し入れ、常に慎むべし」とあって、失言やらSNSへの投稿をきっかけにした炎上を考えたりしてしまう。本書では、病気は口から入るから飲食に気をつけなさいという意味だと述べられているとはいえ、SNSへの投稿が災いになるように、得る情報にも気をつけなければ、心が乱されて健康に良くないという解釈が頭をよぎる。

 益軒は、「唾液は飲み込むべきで、吐き出してはいけません」と説き、漢方での唾液は「元気のもとであり、うるおいのもとと考える」という。現代医学における唾液の役割は、消化酵素による消化の手助けの他に、殺菌作用があり、ホルモンも含んでいて、著者は「からだから出される名薬」に喩えている。よく「しっかり噛んで食べましょう」と云われるのも、単に食べ物を噛み砕くというだけではない。唾液に含まれている酵素の一種アミラーゼが糖質(炭水化物)を分解してくれるうえ、噛むことによりアミラーゼの分泌が促進し、噛むこと自体が運動となってカロリーが消費されるから、それらはダイエットにもつながるという。

 読む前には、江戸時代の偉い先生が書いた本を偉い漢方の先生が解説する教訓めいた内容かもと身構えていたけれど、最初に表紙で抱いた印象に間違いはなかった。無理をしないというのは心に対してもだが、暴飲暴食をしたり深夜までスマホを見ていたりと、身体にも無理をさせないことが健康の秘訣だと学んだ。ただ、この原稿は深夜に書いているのだが。

文=清水銀嶺

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  • 「奇怪なものや実態のないものを無闇に信じるな」←実験や観測等で存在が証明されたもの、そしてそれを理論で演繹的に予言した理論しか信じません。脳筋反知性主義者には分かるまい。笑
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