ゲーム実況から卒業発表まで……乃木坂46がYouTube「乃木坂配信中」を持つ意義と、他chとの差別化について考える

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2021年07月26日 07:01  リアルサウンド

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(画像=YouTubeより)

 乃木坂46のYouTubeチャンネル「乃木坂配信中」が開設から2ヶ月を過ぎ、冠バラエティ番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)の見逃し配信をはじめとしたコンテンツが順次公開されている。乃木坂46としては、2012年のデビューに先駆けて開設されていたYouTube上の公式チャンネル、昨年6月にスタートした定額制動画配信サービス「のぎ動画」に続いて、Web上に新たな映像発信の拠点を加えたことになる。


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 「乃木坂配信中」チャンネルは、なによりまずグループを代表するテレビコンテンツである『乃木坂工事中』に関して、居住地域による視聴環境のギャップや、放送終了分の違法アップロードが繰り返される状況への、ひとつの対応策としての機能が大きい。他方で、放送終了分の番組配信以外のオリジナル動画も6月以降、頻繁にアップロードされるようになった。それらを概観すると、そのつどコンテンツとしての性格を変えながら、いくつもの試みを投じる場として模索しているさまがうかがえる。


 ソロキャンプやゲーム実況など、既存のYouTube文化と相性の良い企画や、マネージャーによるオフショットや舞台裏密着型の映像、楽曲MVのスピンオフ作品や『乃木坂工事中』由来のロケ番組ふうのコンテンツまで、この一ヶ月余りだけでもアップロードされる映像の性質は幅広い。あるいは直近の投稿への反応を受けて追記的に短尺のコメント動画をアップしたり、「乃木坂46分TV」と題してTVバラエティに準じた体裁の生配信を行ない、またその中で7月22日の配信にあったように、メンバーの卒業という大きな発表の機会を設けるなど、さまざまな水準の発信をフレキシブルに行なう場として、同チャンネルは性格を確立しつつある。


 こうした新チャンネルの遊撃的な活用により、既存のYouTube公式チャンネルや「のぎ動画」の位置づけは、より明確になったといえるかもしれない。


 以前からの公式チャンネルは、シングルリリースを中心として、グループの基幹的な活動から生まれるアウトプット――楽曲MVや個人PVの予告編など――を置いておく場として活用されてきた。柔軟な発信の場として「乃木坂配信中」が随時使用されるならば、もともとの公式チャンネルは従来以上に、グループのリリース作品に直接紐付いたコンテンツを時系列的にストックしておく場として特化させることができ、相互のすみ分けも明快なものになる。


 一方、定額制のサービス「のぎ動画」はその性格上、より既存ファン向けのアーカイブとして位置づけられる。現在のところ「のぎ動画」では、既発シングルに収録されたMVや特典映像のほか、過去のコンサート映像、久保史緒里がMCとなった「久保ちゃんねる」のようにメンバー自身によるライブの副音声的な解説動画、「乃木坂あそぶだけ」のようなバラエティ企画等が順次配信されている。また、デビュー1年目の2012年にテレビ東京で放送され、乃木坂46初期におけるもうひとつの個人PV的な模索でもあった『乃木坂浪漫』が、まとまった形で視聴できるようになったことは、資料性の点でも小さくない意味を持つ。


 昨年6月の「のぎ動画」サービス開始時は、新型コロナウイルスが感染拡大していった時期と重なり、各種エンターテインメントの先行きが見通しづらいタイミングと同期した対応策としての趣もあった。とはいえ、本来的にこの施策は、ひとつのグループが独自に有料プラットフォームをもち、それを持続的なサービスにできるかという試みでもある。メディアの形式は異なるが、宝塚歌劇団の「タカラヅカ・スカイ・ステージ」のように、ひとつの組織が既存ファンに向けた有料チャンネルを継続できるならば、それは長期に渡って強いファンダムを獲得しえたことの証左にもなるだろう。


 もとより、乃木坂46はデビュー時から膨大な映像コンテンツを制作し続け、その質・量が大きなアドバンテージになってきた組織である。独自のプラットフォームとして、サイトの操作性なども含めていかにアーカイブとしての存在感を高め、グループの強みである映像を発信する拠点として定番化していけるかに期待がかかる。


 もっとも、それぞれに特色がみえてきた各チャンネルだが、必ずしも相互干渉のない、ただのすみ分けである必要もない。乃木坂46の映像コンテンツを振り返れば、複数のメディアをクロスオーバーしながら映像作品が作られる例を見出すこともできる。山下美月にとって初の個人PVとなった「山下美月の二重奏」(監督:山田篤宏)では、YouTube公式チャンネルの予告編と、CD付属の個人PV本編(現在は「のぎ動画」でも配信されている)の2つのメディアを同時再生することで、初めてダイアローグが成立する仕掛けを忍ばせていた。タイプの異なるチャンネルを多く持つからこそ、それらをいかに連関させていくかという想像力もまた広げることができる。


 さらにいえば、乃木坂46が個人PVをはじめとして大量の映像作品を制作してきたのは、所属メンバー個々に表現者としての機会を持続的に確保するためでもあった。平素のマスメディア露出や楽曲選抜とは異なる回路を用意し、外向きの場に頻繁に立つメンバー以外にもクリエイティブを投入して活路を拓く、乃木坂46はそうした豊かさを持ちうるグループである。Web上に設置された複数の映像発信の拠点が、メンバーそれぞれにスポットを当てるための場としても定着できれば、その意義はいっそう大きくなるはずだ。(香月孝史)


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