『アウディRS Q e-tron』が始動。2022年のダカールに挑む電動ラリーカー

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2021年07月26日 12:31  AUTOSPORT web

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2022年1月のダカールラリーに向け、テストを開始したアウディRS Q e-tron
来年1月に開催される2022年のダカールラリーに電動パワートレイン搭載車で挑戦するアウディが、新型ラリーレイドカー『アウディRS Q e-tron』のテストを開始したと発表した。

 既報のとおり、フル電動フォーミュラカーシリーズのABBフォーミュラE世界選手権に参戦しているアウディは、現在行われている2020/2021年シーズンを最後に同チャンピオンシップから退き、活動の場をダカールに移す。

 電動化を推し進めるドイツのブランドは“世界一過酷”とも言われるダカールラリーに挑戦するにあたって、走行中に高電圧バッテリーを充電可能な革新的なドライブコンセプトを備えた未来志向のプロトタイプを製作。それが今回初披露されたアウディRS Q e-tronだ。

 すでに最初の走行テストが完了したこの車両は3基のモーターと重さ約370kg、容量約50kWhのバッテリーを搭載した電動車。

 1日最大800kmにも及ぶダカールのステージを走破するためレンジエクステンダー方式が採用され、発電を行うエンジンはDTMドイツ・ツーリングカー選手権で採用されてきたTFSIエンジンが用いられる。この内燃エンジンは、もっとも効率的な4500〜6000rpmの範囲で作動し、その燃料消費量はkWhあたり200グラムをはるかに下回るという。

 モータージェネレーターユニット(MGU)は最新のフォーミュラEマシン、アウディe-tron FE07に搭載されている『アウディMGU05』が備わり、前後のアクスルに配置された2基が駆動を担う。システムの最大出力は500kW(約680PS)だ。

 また、3基目のMGUはエネルギーコンバーターの一部として、走行中に高電圧バッテリーを充電するために使用される。アウディが開発したこれらのMGUは、わずかな変更を加えるだけでダカールラリーで使用することが可能となっている。

「バッテリーは、パートナー企業と共同で独自に開発した。私たちエンジニアは、基本的にすべてのコンポーネントに開発の余地が残されていると考えている」と語るのは、アウディスポーツ・モータースポーツプロジェクト開発担当責任者のステファン・ドライヤー。

「しかし、ドライブトレインシステムに関しては、フォーミュラEですでに97%を超えるシステム効率を達成しているので、これ以上の改善の余地はない。だが、バッテリーとエネルギーの管理では状況がまったく異なるんだ」

「これは、eモビリティの開発において、最大の可能性が秘めている分野だ。極めて過酷なダカールラリープロジェクトから得られたノウハウは、将来の市販モデルへとフィードバックされる。いつものように、我々はこのプロジェクトでも市販モデルの開発スタッフと緊密に協力している」

■「スケジュールは非常にタイトだが、その分やりがいがある」

 電動パワートレインを搭載する車両では珍しくないシングルギアがアウディRS Q e-tronにも採用された。

 フロントアクスルとリヤアクスルは機械的に接続されておらず、このためアウディは、前後アクスル間のトルク配分を制御し、自由に設定可能なバーチャル・センターディファレンシャルとして機能するソフトウェアを開発した。これによってプロペラシャフトや機械的なディファレンシャルを省くことができ、重量とスペースを削減できるという2次的なメリットも生み出されている。

 ルーフ上に配置された巨大なエアインテークが目を引く外観は、従来の内燃エンジンを搭載したダカールプロトタイプと大きく異なっている。アウディ・モータースポーツデザインのチームリーダー、フアン・マヌエル・ディアスは、RS Q e-tronのデザインについて次のように語った

「このクルマは未来的な外観を備え、アウディならではの多くのデザインエレメントが採用されている。私たちの目的は、“Vorsprung durch Technik(技術による先進)”および未来のアウディブランドを象徴するデザインを生み出すことだ」

 ドイツ車メーカーによるダカールラリーへの参戦は、Qモータースポーツと強力して実施される。同チーム代表のスヴェン・クヴァントは、「アウディは、つねにレースで新しい大胆な道を選んできた」とコメント。

「今回のクルマは、私がこれまで見た中でもっとも高度なクルマの1台だと思う。電動ドライブトレインは、多くの異なるシステムが相互に通信する必要がある。ダカールラリーでもっとも重要な信頼性に加えて、これは今後数カ月における私たちの最大の課題となるだろう」

 7月初旬に行われた初回のテストでは、DTMとWorldRX世界ラリークロス選手権でシリーズチャンピオンを獲得したマティアス・エクストロームがステアリングを握ったアウディRS Q e-tronのプロトタイプは今後、年末までの間に集中的なテストプログラムと、クロスカントリーラリーへの最初のテスト参戦が計画されているという。

「このプロジェクトのスケジュールは非常にタイトだが、その分やりがいがある」と語ったアウディスポーツ・ダカールプロジェクト責任者のアンドレアス・ルース。

「プロジェクトが正式に開始されてから、まだ1年も経過していない。我々は代替エネルギー車に関するレギュレーションがまだ確定していない段階から開発を始めなければならなかった。そして、開発の途中で新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生した。この影響を過小評価してはいけない」

「私たちのチームは、類まれな開発作業を達成したのだ。そのため、このクルマで走行テストを開始できたことは、チーム全員にとって特別な瞬間だったと言えるんだ」

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