東海大相模、星稜がまさかの辞退 現場の本音は?「教育者として失格かもしれないが…」

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2021年07月26日 12:35  AERA dot.

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写真選手のコロナ感染で地方大会を辞退した東海大相模の門馬監督 (c)朝日新聞社
選手のコロナ感染で地方大会を辞退した東海大相模の門馬監督 (c)朝日新聞社
 新型コロナウイルスが高校球児の夏を振り回している。

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 出場辞退校が続出する一方、世論の後押しによって辞退が撤回されたケースも出た。

「出場か?辞退か?」

 誰も正解がわからない状況下、現場からは生々しい声が聞こえてくる。

「この度は、本校野球部で新型コロナウイルス感染によるクラスターを発生させてしまいましたこと深くお詫び申し上げます」(門馬敬治・東海大相模監督)

 7月24日、神奈川県高野連から東海大相模が地方大会の準々決勝の出場を辞退することが発表された。同校は春の選抜甲子園で優勝、春夏連覇の偉業達成を目指している最中だった。春夏4度の全国制覇を達成した同監督は、今夏限りでの退任を発表していたことでも注目を集めていた。また石川県の星稜も21日、同様に地方大会出場辞退を発表したばかりだった。全国でも有名な強豪校が選手のコロナ感染で予選を辞退し、高校球界を騒がせている。

「東海大相模、星稜とも全国大会で結果を残せる学校。毎年プロ予備軍を抱えており注目度は高く関係各位も出場させたかったはず。しかし部員に複数感染者が出てしまったので出場辞退は回避できなかった。両校ともクラスター感染だったので管理責任の観点からもしょうがない。両校監督とも責任を感じているはずです」(スポーツ新聞アマチュア野球担当)

 一方で、米子松蔭(鳥取)は一度は出場辞退が決定されたが、白紙撤回され出場を認められた。野球部以外の学校関係者が感染しての辞退だったため全国から疑問、批判が殺到。世論の声に後押しされる形で同県高野連が一転して出場を認める騒ぎとなった。

「各校関係者は出場させてあげたい気持ちが強い。高野連など主催者側としてはリスクを最小限に抑えたい。どちらの考えも理解できる。今回は早急に動いた鳥取県高野連のファインプレーとも言えます。しばらくコロナ禍が続きそうですから他競技を含め、(選手、関係者にコロナの感染が判明した場合)大会出場を認めるかどうかの線引きが難しくなります」(スポーツ新聞アマチュア野球担当)

 出場辞退の判断をめぐっては多くのところで議論されている。「日本高野連が一律のルールを定めていないから」という声も聞こえる。しかし各県によって感染状況はまったく異なる。学校数や部員数なども違い、各選手によって高校野球そのものへの考え方も異なる。全国すべてを同一のルールで縛ることは現実的ではないだろう。

 とはいえ、現場はとにかく出場したいのが本音。既に今年の地方大会で敗退している高校の監督に今回の問題について聞いたところ以下のような答えが返ってきた。

「感染者、濃厚接触者が離脱してでも出場したいのが本音ではある。甲子園に行けなくとも1つでも多く試合をして、学校名を露出、宣伝する必要がある。少子化で各校とも生徒集めに苦労している中、私学の場合は出場辞退そのものが学校の死活問題にもなる」(茨城県の私立校監督)

「エースで4番の大黒柱がいて、その選手の調子が良ければ勝てる可能性が高い時もある。教育者としては失格かもしれないが、もし彼以外の選手がコロナウイルスに感染した場合、他に選手もいるので出場したいのが正直な気持ち。県立校が甲子園へ行けるチャンスは少ない。可能性があるなら試合を行い、戦って甲子園を目指したい」(神奈川県の公立校監督)

「弱小校の選手は最後の夏、多くの人たちの前でプレーするのを目標にしている場合もある。甲子園出場だけでなく、これも高校野球の1つの形。静岡は声出しはダメだがブラスバンドもスタンド応援に参加できた。打席に立った時に応援歌を歌ってもらえるのは嬉しいこと。初戦敗退だったが子供たちは一生の思い出が作れたはず」(静岡県の私立校監督)

 私立と公立では野球部の存在意義も異なる。かつて高校球界を席巻したPL学園(大阪)は暴力問題の不祥事により休部状態なのを見れば、現実のシビアさがわかる。私立の場合は学校のイメージや知名度をアップする目的が部活動にあり、出場辞退はその機会も失うことも意味する。

 また甲子園の出場可能性がある限り試合をしたいと思うのは純粋な気持ちだ。そしてブラスバンドの応援が一部許可された地区では、最後の夏を楽しんだ球児も少なくなかったはず。コロナ禍の高校野球、離れた場所から見ているだけの人間にはわからない現実もある。

「選手自身は現実的です。ベンチ入りできない選手は地方大会前から髪の毛を伸ばし始める。負ければ引退なのですぐに遊ぶため。もちろん1つでも多く勝ちたい。試合に負ければ悔しいし涙も出る。でも気持ちを切り替え夏を楽しむことを考える。コロナ禍で出場辞退した高校は試合できなくて悔しいだろうけど、時間が経てばそれも忘れられない思い出になる。僕たちもそうだった。高校生は案外ドライで前向きなんです(笑)」(神奈川県の元高校球児)

 昨年はコロナ禍の影響で夏の甲子園大会が戦後初めて中止となり、各地方大会も独自大会へ変更となった。今でもやりきれない気持ちを引きずっている選手もいるだろう。しかし前向きに歩き始めている者も少なくない。前出の元球児は笑いながら語ってくれた。これも青春の1つなのだろう。

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