マトリの士気が落ちているわけ ドラッグストアの薬剤師に転職する麻薬取締官も

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2021年07月26日 17:05  AERA dot.

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写真麻薬取締官=厚生労働省地方厚生局麻薬取締部のホームページから
麻薬取締官=厚生労働省地方厚生局麻薬取締部のホームページから
 覚醒剤などの違法薬物犯罪を取り締まる厚生労働省麻薬取締部、通称「麻取(マトリ)」。芸能人や有名人の検挙でメディアに取り上げられることも多く、名前はよく知られた存在だ。そのマトリで現在、職員の士気にかかわる“問題”が起きているという。薬物の取り締まりのプロに何が起きているのか。

 最初に、マトリの組織の概要を説明しておこう。マトリは全国地方厚生局の一部門として、北海道から沖縄まで支局や分室も含めて12の部署に分かれており、違法薬物を取り締まっている。花形部署は関東信越局と「キンマ」と呼ばれる近畿厚生局だ。

 なかでも東京にある関東信越局は、違法薬物を扱う警視庁組織犯罪対策五課(以下、組対五課)と同様に、著名人の検挙の際に出てくる。有名人や芸能人の逮捕が取り締まり当局の使命ではないが、芸能人などであれば、それがメディアに大きく取り上げられることによって、違法薬物の危険性などが取り上げられるので意義はある。

 しかし、関係者によると、関東信越局に限れば現在、職員の士気は落ちているという。

 ここ最近でいうと、有名芸能人の逮捕は組対五課が多く、マトリは一昨年の5月にアイドルグループKAT―TUN(カトゥーン)の元メンバーの男性を検挙して以降はない。そして、この逮捕後に、マトリはある“事件”を起こしている。

 この元メンバーの裁判で、判決の日程がある理由によって変更されたのだ。その理由とは、マトリの職員が、元メンバーの自宅を捜索し、逮捕する場面の映像をテレビ制作会社の依頼に応じて流したことにより、捜査の適法性や疑義を生じさせて公判延期を招いたのだ。

 元メンバー側の弁護人は「重大なプライバシー侵害」として、マトリの幹部2人を国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで東京地検に告発。不起訴処分となったが、厚労省内では昨年2月に処分が出ていた。次長を1カ月減給10分の1、上司である部長を訓告、部下の課長2人に対しては注意・指導処分としている。

 提供したのは当時の次長とのことだが、この一件がマトリの捜査官の士気が低くなっている理由の一つと関係者は語る。

「この当時の部長は今年の3月に退任しましたが、再任用で新たにポストを作って調査官という肩書で人事権を掌握しました。一番重い処分を受けた次長は一度地方に飛ばされ定年になりましたが、同じく再任用されて捜査官になっています。また、処分された課長も異例の出世をこの春にしました」

 この異例の出世は、当時の部長をかばった論功行賞人事と内部でささやかれた。当時の部長の時にマトリは、先の情報漏洩(ろうえい)問題のほかにもいくつかの“大失態”を犯している。

 一つは横浜第二合同庁舎にある関東信越麻薬取締部横浜分室の火災だ。赤レンガ造りの分室から燃え上がる火の粉の映像が流れていたので、ご記憶の読者もいると思う。

 この分室がある横浜第二合同庁舎は歴史的建造物として知られ、多くの観光客が見学に訪れるほか、他の役所の分室なども入っている。大事な建造物での失火はもちろん、この火災で多くの機材や備品などが焼失した。保管されていた証拠も影響を受けているのでは、との声も聞こえてくる。原因についてもはっきりとしていない。

 また、昨年10月には外国人による薬物事案の摘発の際に、「慣れない指揮官の誤った指示」(マトリ幹部)のせいで、現場の捜査官が外国人の乗ったクルマにひかれそうになり、容疑者には逃げられた。捜査官もけがをしたという。前出の関係者は、「外国人が車から降りてくる前に『GOサイン』が出たために招いた失態だ」と指摘する。

 マトリの広報担当に確認したところ、横浜分室の火災については、「県警と消防の発表で充電中のバッテリーからと報道されていますが、この件についてはマトリは発表していません」とし、正式な原因解明には至っていないとしている。また、外国人容疑者の逃亡については、「捜査上のことなので、発表は一切しない」とのこと。

「現場の捜査官はマトリの精鋭300人と言われている猛者ぞろいですが、現在のマトリの部長や指揮官が厚労省からのキャリアが多く、現場を知らないのが理由です。仕事ができる現場の捜査官は上司に煙たがられて冷遇され、能力が無い人間が上司との関係性で上に立つ。このような状況に若い捜査官はやる気を失う一方です。どれだけ頑張って過酷な張り込みや捜査をしても報われることがありませんから」(前出の関係者)

 違法薬物犯罪と日夜戦っているイメージのマトリだが、組織としてはうまく回っているとは言い難いのが実態のようだ。

 マトリの捜査官は薬剤師としての資格を持っている。現状の組織のあり方に不満を持つ捜査官の中には、大手のドラッグストアなどで薬剤師として勤務し、それなりの収入を得た方がいいと考え、離れていくケースも少なくないという。

 大麻をめぐっては、これまで大麻取締法で規制されていなかった「使用」についても罰則が設けられる方向で法改正の準備が進められている。しかし、肝心の取り締まる側のマトリが、内部のゴタゴタで捜査官の士気に影響しているようでは、容疑者の逮捕に力を発揮できるのかひとごとながら心配にもなる。

 組対五課といい意味で争っていた時代はもう来ないのであれば、残念なことだ。(花田庚彦)

※週刊朝日オンライン限定記事

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このニュースに関するつぶやき

  • 仕事ができないくそな上司に冤罪仕掛けて追い出したらよくね?
    • イイネ!6
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  • 外国の反社は日本のマトリを潰そうとしているだろうからね。アメリカで今何が起こっているかを見たらよくわかるよ。水面下の攻防は激しいだろうね。
    • イイネ!31
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