陸上男子400mリレー 頂点へのカギは「信頼関係」と「バトンパス」

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2021年07月27日 11:30  AERA dot.

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写真6月25日の日本選手権男子100メートルでは多田修平が優勝、五輪代表に内定した (c)朝日新聞社
6月25日の日本選手権男子100メートルでは多田修平が優勝、五輪代表に内定した (c)朝日新聞社
 陸上男子400メートルリレーで日本は北京五輪で銀メダルを獲得して以来、メダル常連国になっている。東京五輪では金メダルの期待がかかる。勝利のカギは、信頼関係とバトンパスだ。AERA 2021年7月26日号から。

【表】男子400メートルリレー メダルの歴史

*  *  *
 今季の世界の状況を見ると、米国が圧倒的に速い。

 今季世界最高で、世界歴代7位の9秒77をマークしているトレイボン・ブロメルをはじめ、リレーは全員が今季9秒9を切った選手で組むことができる。このほか、今季9秒84の自己新をマークしたアカニ・シンビネを擁する南アフリカ、ロンドン五輪銀メダリストのヨハン・ブレークが軸となるジャマイカなど強敵は多い。

 日本陸連の土江寛裕・五輪強化コーチも「アメリカが完璧なバトンパスをしてきたらなかなか勝てない」と話す。ただ、リレーにはバトンミスといったアクシデントはつきものだし、日本にはお家芸の「アンダーハンドパス」がある。

「オーバーハンドパス」に比べて、いまだ世界でも少数派の「アンダー」を日本が取り入れたのが01年のエドモントン世界選手権から。今年でちょうど20年になる。

「アンダー」の導入を決めた当時、日本陸連の短距離部長だった高野進・現東海大教授は「選手やコーチ陣から反対にあえば、そこまで押し通す気もなかったんだけど。意外にやってみようか、という声が多かった」と振り返る。「その後もいつやめてもいいって言ってきたんだけれど」

 そんな言葉とは裏腹に当時のエース朝原宣治、末続慎吾らを軸としたメンバーに「アンダー」は浸透し、08年北京五輪のメダル獲得につながった。

■精度が浮上のカギ

「アンダー」と「オーバー」を改めておさらいすると、次走者が下に向けて出した手のひらに前走者がバトンを下から上へ渡すのが「アンダー」で、「オーバー」は次走者が後方に高く上げた手のひらに前走者が上から下へバトンを渡す。一般的に「アンダー」は確実性はあるが、走者が接近して渡すため距離を稼げないという短所がある。

 日本のバトンパスは世界一、というデータがある。

「アンダー」の導入と時を合わせるように日本陸連の科学委員会がバトンパスに関するデータを、合宿や試合のたびに集めてきた。特に1走から2走、2走から3走、3走から4走と、3区間あるバトンを渡す40メートルの区間タイムを重視。37秒60で銀メダルを獲得したリオ五輪では3区間の平均が3秒76だったのに対し、37秒43の日本記録をマークした一昨年のドーハ世界選手権では平均3秒72まで縮まった。この大会では米国、英国に敗れて3位だったが、この区間タイムは他国と比較して最も速い記録だった。バトンパスのスムーズさは世界一というわけだ。

 バトンパスでのタイムの短縮は限界がきているという見方がある。一方で、今季のように調子の上がらない選手がいる状況では、やはりその精度が浮上のカギになるだろう。ドーハ世界選手権以来この2年間、コロナの影響もあり、トップ選手でリレーの実戦がないのも不安材料だが、デーデー・ブルーノ(東海大)をのぞけば世界大会でのリレー出場経験がある。

「リレーは信頼関係」。土江・五輪強化コーチは言い切る。そういう意味では経験者の多い、今回のメンバーは心配無用だろう。

 桐生祥秀(日本生命)は100メートルの代表になれなかったが「完全に吹っ切れている」と言う。「ここで(敗戦を)引きずっていたらチームの雰囲気が悪くなる。リレーは雰囲気が大事。今回はリレーで最高のパフォーマンスをするために呼ばれているので、しっかりリレーに集中したい」。一番輝くメダルを目指し、チームの牽引役を担う。(朝日新聞スポーツ部・堀川貴弘)

※AERA 2021年7月26日号より抜粋

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