五輪より大谷翔平?二刀流で5勝目も「大谷ロス」でファン嘆き 米国メディアは結果に一喜一憂

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2021年07月27日 14:10  AERA dot.

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写真7回1失点と好投した大谷翔平(写真/Gettyimages)
7回1失点と好投した大谷翔平(写真/Gettyimages)
「大谷ロス」そんな言葉がSNS上をにぎわすようになったのは7月下旬のことだった。東京五輪が始まり、それまで大谷の出場試合のほとんどを中継していたNHKは五輪の試合放送にシフト。大谷の試合をテレビで観戦する機会は激減した。

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 五輪開始以降、ツイッターでは「五輪より大谷翔平」「大谷の笑顔をみせてくれ」という悲鳴にも似たつぶやきが投稿された。スポーツ紙の報道によると、NHKは五輪期間中にもBS1で数試合を放送すると明らかにしたようだが、大谷の熱狂的なファンからすれば、以前のように大谷の活躍を生で見たいというのが本音だろう。

 大谷は26日(日本時間27日)、本拠地でのコロラド・ロッキーズ戦に先発投手、2番DHとして出場。第一打席に先制点となるタイムリー安打を放ち、投手としては7回5奪三振無四球、5安打1失点と好投。エンゼルスは6-2で勝利し、大谷は5勝目をあげた。

 そんな大谷ではあるが、オールスター後はいまいち調子が上がらないようだった。事実、オールスター後の6試合で14三振を喫してしまっている。翌23日の試合でも、球宴後では初めて先発メンバーから外れ、現地からは「不調なのでは」という心配の声も上がりはじめている。

 だが、後半戦はまだ始まったばかり。25日(日本時間26日)のツインズ戦では「2番・DH」で出場し、35号を放った。エンゼルスの地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』のジェフ・フレッシャー記者は自身のSNSで、「サンプル数が少なすぎて取り乱すには早すぎるが、注視はすべき」と述べ、注目はすれど騒ぎ立てるほどではないとくぎを刺すが、同記者の言う通りである。

 たしかに、前半戦の特に終盤は、打撃も絶好調でホームランも連続で放っていた。だが一方で、前半戦でもホームランが何日も出なかったこともあり、今が特別悪いということは一切ない。また、投手としては、後半戦で初めて登板した19日のアスレチックス戦では、6回3安打無失点、8奪三振という見事な投球を披露しており、「大谷は不調だ」と断言するにはまだ早い。

 それでも大谷が、このように少しでも調子を落としただけで、現地のファンやメディアがすぐさま反応してしまうのには、全米から寄せられる大谷への関心の高さにその理由がある。

 記憶に新しいのは、6月末にニューヨークで行われたヤンキース戦での出来事だ。このヤンキースとの連戦前、ニューヨークの複数のメディアは大谷の活躍を伝える特集を組んだ。敵地のメディアが相手チームの選手の特集を組むのは異例のことだ。そして、その動きはオールスター後にもさらに加速している。7月22日からの敵地ツインズ戦の前には、ツインズの地元紙『スター・トリビューン』が、「ショータイムが街にやってくる」という記事を掲載している。この様に、大谷の人気が全米で非常に高くなっているため、今の様なちょっとした低迷でも大々的に報じられてしまうのである。

 また現地では、大谷の活躍で生まれる経済効果にも大きな注目が集まりはじめており、それも現地メディアが大谷の不振を騒ぎ立てる理由の一つになっている。

 例えば、現地メディア『AXIOS』が、22日に掲載した大谷翔平のビジネス面での価値を特集した記事によれば、「大谷はまさにMLBが欲していたスターであり、球界に注目と金を集めるゲートウェイになっている」という分析がされている。

 大谷はMLBでもトップとなる年間600万ドル(約6億6000万円)相当のスポンサー契約を結んでおり、オールスターでのグッズ売り上げのうち28%を占め、さらに7月20日には公式ライセンススポーツグッズの最大手であるファナティックスとの独占契約を結んでいる。同紙はこういった動きに対し、「ショー(Sho=翔平とShowをかけている)は始まったばかりだ」と述べ、今後も同じ様な動きが加速していくことを予想する。そうなれば、その成績によって経済的な影響が出てきてしまうため、どうしても今のような状態には敏感になってしまうのである。

 また、現地のコレクター達も同様だ。例えば、今回MLB公式チャリティーオークションに出品された大谷のサイン入りユニフォームが、13万210ドル(約1430万円)という驚くべき金額で落札されている。同時に出品されていた、今回のオールスターでMVPを獲得したウラジミール・ゲレーロJr.のユニフォームは8520ドルとなっており、大谷はその約15倍と桁違いの人気を誇っている。これに限らず、大谷のサイン入りであればトレーディングカードや試合実使用帽子、ボールなど、ありとあらゆるものが高額で落札されている。

 つまり、成績が良ければ大谷の価値は高まるが、不振になればもちろんその価値も下がるため、商業に関わる一部の人間が慌てふためいているだけなのかもしれない。なんとも現金な話である。

 だが、アメリカにも純粋に大谷に活躍し続けてほしいと願う者もいる。それはアメリカのスポーツ界関係者だ。大谷の代名詞である「ツーウェイ(二刀流)」という用語が、野球界以外にも広まってきていることはご存知だろうか。

 例えば、アメリカのスポーツで一番人気を誇るNFL(アメリカンフットボール)では、9月9日から始まるシーズンを前に、「NFLにおいて大谷のような二刀流選手は誰になるか」という話題で盛り上がっている。NFLの公式ニュース、『NFL.com』が7月16日に掲載した、「大谷のような可能性を持つ五人の選手」という記事では、「NFLにはいまだ真の二刀流はいないが、大谷の活躍によって、あらゆる競技で複数ポジションの選手が活躍できるかもしれないという可能性と影響を与えくれた」とも述べられている。

 また、現地メディア『ファイブ・サーティー・エイト』は、23日からの東京オリンピックで3大会ぶりに実施されるソフトボールの特集の一つとして、「リサ・フェルナンデス(元アメリカ代表選手)はソフトボール界の大谷翔平だ」という記事を出している。同選手は大谷同様、投打で優秀な成績を残しており、大谷の活躍によって同選手の価値が改めて評価されている。

 このように大谷が二刀流として活躍し、メディアが盛り上がれば盛り上がるほど、過去の選手が再評価され、そしてこれからの選手達の未来を切り開くことにもなる。だからこそ、アメリカのスポーツ界は、この「二刀流」の先駆者である大谷の成功を心から願っているのである。

 大谷の不振が長く続けば、アメリカの球界関係者やファン、さらに他のスポーツ界関係者が再び騒ぎ立てるかもしれない。だがそれは、それだけアメリカのスポーツ業界の大谷にかける期待が高いということに他ならない。アメリカでは今後も、大谷の一挙手一投足に注目が集まっていきそうだ。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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