やましい人ほどよくしゃべる?不評だったバッハ会長の東京五輪開会式あいさつが表すこと

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2021年07月27日 16:00  AERA dot.

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写真IOCバッハ会長(c)朝日新聞社
IOCバッハ会長(c)朝日新聞社
 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「国際感覚」について。

【写真はこちら】東京五輪の表彰式衣装は「居酒屋のユニホーム」? ドン小西が苦言
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 日本は外圧に弱い、と言われてきた。特に性に関して外圧は効いてきた。

 たとえば、明治時代の公娼制度が最初に問題になったのは、人身売買に関する外圧があったからだった。結果、女性を家畜のように売り買いしてはならない法律ができて、女性自らが「自由意思」で働くのだと設定されたが(1982<明治5>年)、結局それも国外向けの建前にすぎず、女性たちの苦難は戦後、GHQが公娼制度廃止を決めるまで続いた。

 公娼制度は実際に「外圧」が働いた例だが、外圧がなくても、「外圧風」を感じることで動いた例はいくつもある。例えば2019年、ほぼ全てのコンビニから消えたエロ本も、五輪という外圧が大きかった。男性の射精用雑誌が堂々と24時間どこにでも売られている国は日本くらいだよ! という批判は長年国内の声としてあったが聞き入れられず、五輪を翌年に控えた年に渋々という形でコンビニからエロ本がなくなったのだ。

 また、2019年に大阪で開催されたサミット期間中、飛田新地が一斉休業したのは、あからさまだった。飛田新地は無数に並ぶ古い日本家屋の入り口に、強い照明を当てられた女性が一人座布団に座って、まるで商品のように陳列されている巨大な買春街だ。海外から「閉じろ」という要求があったというより、事前に空気を読んで閉じた可能性は高い。

 日本で女性として生きていると、「国際社会頼み」というような気分になることが少なくない。国内で、「少女との真摯な恋愛はある」とかいう中年男性に、それ、国際舞台で主張できる?と問いたくもなる。例えば2年前、オーストラリアの税関で児童ポルノを保存していたスマホの所持で日本人男性が摘発された。オーストラリアでは日本では合法とされる二次元ポルノや、着衣の児童が性的なポーズを取るような表現物であっても児童ポルノと認定され、最長で10年の禁錮刑、日本円で数千万円の罰金が科されることもある。日本の性の景色が、女性や子どもたちの人権を犠牲にしたものである現実を、私たちはもっと知るべきだと思う。

 そう、「国際感覚」は、フェミにとっての頼みの綱なのだ。だからこそ東京五輪・パラリンピック誘致に是非はあったとしても、五輪をきっかけに、国際基準で性的マイノリティーや女性の人権を守る法律をつくれるのではないかと考え、実際に動いた人たちの思いはとてもよくわかる。それほど、この国の家父長制が根強いからだ。
 
 とはいえなのだった。今回、多くの人が不安を声にし、中止や延期を求めた東京五輪の強行開催を目の当たりにして思うのは、IOC自体も実は「国際感覚」などではなかったという現実だった。
 
 先日、IOC副会長のコーツ氏の発言が性差別的だと問題になった。2032年に五輪が開催される豪クイーンズランド州の首相(女性)に対し、恫喝とも取れるような発言を公衆の面前でしたのだ。州首相は東京五輪の開会式参加を拒否しており、そのことに対する叱責だったと見られている。実際コーツ氏は長々と開会式にいくらかかるのかとか、放送権がどうだとか、見なくちゃわからないことがあるんだよ!と苛立っていた。

 もしかしたらIOCは、全く国際感覚も現代的感覚もない、高齢男性たちの声が大きく、視野の狭い、利権にまみれた家父長なホモソーシャル組織だったのかもしれない。ジェンダー平等や多様性を標語にしてはみるが実はよくわかっておらず、自分に刃向かう女には思わず声を荒らげたり、意見を言う女には「わきまえない」と苛立ったりしてしまう習性を変えられない人たちの集団。だからこそパンデミックの最中に、日本の医療や人々の命や生活を犠牲にしてまでも五輪を強行するという蛮勇が可能になったのだろう。JOCとIOCはとても相性の良かったのだ。

 考えてみれば東京での開催が決まってから、IOCやJOCの問題がかなり大きく露呈した8年間だった。競合国だったトルコに瀬直樹都知事(当時)が差別発言をしたことなど、問題だらけだったのに、なぜ東京が選ばれたのか。フランス検察が調べていた2億円以上の賄賂の問題はどうなったのか。誘致時に汚染水や気候について明らかにうそをついたことは、なぜ問われないのか。昨年はコロナを理由に延期されたが、昨年よりも感染者数が較べものにならない状況で、なぜ強行されたのか。責任者は誰か。
 
 東京五輪に関する検証はこれから本格的に行われるべきなのだと思う。と書いていて不安になる。いったい誰がまともな検証をしてくれるのだろう。IOC以外の善良な国際社会か、またはこの国の私たちが諦めずに政治を変えていくことで、厳しい検証が行われ、その結果、責任者が適切に問われる国にしていけるのか。
 
 それにしても橋本聖子氏とバッハ会長の開会式あいさつは長くて意味なくて不評だった。やましい人ほどよくしゃべる、ということだと思う。

■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

このニュースに関するつぶやき

  • 枝野幸男への強烈な皮肉wwww���å��å�
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  • え、つまり枝野の魂の3時間演説()は真っ黒も真っ黒、ドス黒いと?また仲間割れですか?www
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