スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキング Vol.9 吉田広樹さん

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2021年07月29日 23:20  AUTOSPORT web

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写真今回のお悩み相談ショッキングは、埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹さんに突撃しました。
今回のお悩み相談ショッキングは、埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹さんに突撃しました。
 2021年も、ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす新企画をスタートしちゃいました! 今回はTeam LeMans w/MOTOYAMA Racingの本山哲選手から急に振られた(?)埼玉トヨペット Green Braveの吉田広樹選手に突撃です。

 しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークのようなものができないか……? という企画が編集部内で出てきたのが2月。第1回の石浦宏明さんから阪口晴南さん、新田守男さん、高木真一さん、さらに片岡龍也さん、柳田真孝さん、星野一樹さん、本山哲さんと繋がっています。

「GT300で上位を走る吉田さんにどうすれば成績が上がるかアドバイスを」というGT500三度のチャンピオンからのオーダーに、取材前から狼狽していたという吉田選手に話を聞いてみました。

* * * * *

──そんなこんなで、前回の本山さんの話を読んでいただいたと思うんですが、今日はよろしくお願いします!
吉田広樹さん(以下、吉田さん):いや〜、もう驚きましたよ。なんでオレなんですかって。鈴鹿でスポーツ走行に来ていた本山さんと会って、僕が『嘘ですよね!?』と聞いたら、本山さんがニヤニヤしながら『何かうまくやって』と言われました。もうまさかの展開で……困った(苦笑)。

──ではその流れから聞いていきたいのですが、前に本山さんの会社にいたの?
吉田さん:はい。2年いました。

──割と長いこといたのね。
吉田さん:実際は2年と言っても、2年目は本山さんのところから出向して、伊達公子さんの運転手をしていたんです。

──へえ! それは知らなかった。
吉田さん:所属は本山さんの会社だったんですが、当時、本山さんとミハエル・クルムさんがフォーミュラ・ニッポンでアラビアンオアシスカラーで走っていたんです。服部尚貴さんが監督で、本山さんとクルムさんがアラビアンオアシス号に乗り、僕はFCJ(フォーミュラチャレンジ・ジャパン)をやっていたんです。

 FCJもJRP(日本レースプロモーション)が運営で、いつも一緒のレースウイークだったから、僕も服部さんのところに顔を出していて(※)。それで本山さんとクルムさんも知っているというところから『東京に来て本山さんの事務所で働かない?』ということになり、服部さんと本山さんたちが話してくださり、事務所で働くことになりました。

 1年間は運転手をしていたり、本山さんのマネージャーさんともうひとり先輩がいて、マネージャーさんとその先輩と僕とで本山さんのグッズを物販したり、事務所の仕事をしたりしていました。

※吉田広樹選手は服部尚貴さんの『Team NAOKI』出身。先輩に石浦宏明選手、後輩に白坂卓也選手がいます。

──事務所仕事ということは、パソコンいじったりとかもしたり?
吉田さん:それもしていました。で、本山さんがスーパーGTでニスモに乗っていたので、女性のスタッフさんがドリンクを出したりしていたのですが、2008年から本山さんはフォーミュラ・ニッポンではTeam LeMansに移籍して石浦さんとチームメイトになったんです。

 そのときは本山さんがピットに帰ってきたときには僕がモニターを出したり、ドリンクを渡したりタオルを出したりして、身の回りのお世話みたいなことをさせてもらいながら運転手もしていました。でもその頃はめっちゃ怖かったですよ。

──怖かったというと?
吉田さん:本山さんが尖りに尖っていた頃なので……。シーズンオフのときはめちゃくちゃ優しいし面白い冗談を言ったりしている感じでしたが、特にフォーミュラ・ニッポンはスーパーGTよりもひとりで乗っているピリピリ感がすごくて……。石浦さんが『本山さんがあんな感じだと俺は控室に帰れない』とか言っていて、服部さんと石浦さんとサインガードで『誰が控室の扉を開けますか?』というようなやり取りをするくらい、本山さんは打ちこんで走っていましたね。

──あの頃の本山さんのオーラはすごかったもんね。
吉田さん:すごかったです。チャンピオンをずっと獲得しているときだったので、怖かったですね。その流れで、2年目は伊達さんがテニスで現役復帰されたので、そのときの運転手をクルムさんが本山さんに相談して『行ってみる?』みたいなことになって、1年間伊達さんの運転手をしていました。

──なるほど。あと本山さんの運転手を始めてすぐに本山さんのシーマをコスったという話を聞いたのですが。
吉田さん:はい(泣)。それはみんなに、『当時の本山さんを乗せて運転するという緊張』がどれほどのものかというのを分かってほしいです! 僕なんてまだFCJのドライバーで、かたや現役バリバリで日本のレース界を引っ張っている方の運転手をする緊張感で、もう大変でしたよ。本当に、いまのレースの何倍も緊張してクルマに乗っていました。

──気持ちはわかる(笑)。
吉田さん:本当に怖かったです。だけど、オフのときはふだんどおり優しく冗談交じりで接してくれていました。とはいえ、こちらが今みたいな感じで接することができるわけでもなく……といった感じでしたね。

■「もう勘弁してくださいよ〜」
──そんな本山さんのお悩み相談ですが、オートスポーツwebに掲載したものは読みましたか?
吉田さん:読みました(苦笑)。

──『いまGT300で輝いている吉田さんに、GT300で活躍する方法を教えてほしい』ということでした。
吉田さん:もう怖いよ〜! そんなの分からないですもん(泣)。答えられないですよ〜。

──え〜、本山さんは『ぜひご教授頂ければ光栄です』とも言っていました。
吉田さん:そんな……え〜(泣)! 変な話、僕は本当にタイミングが良かっただけなんで。今のパッケージで埼玉トヨペットさんがブリヂストンに変わるタイミングだったこともありますし、マークXも僕がチームに来て3年目で、さらにはGRスープラも初年度からトラブルなく、メカニックの皆さんもマークXで相当鍛えられていました。なのでGRスープラにマシンが代わっても、いろいろな部分もしっかり分かってくれているからノートラブルでずっときていたので、僕は本当にいいタイミングで乗せてもらっただけですね。

──じゃあ本山さんは『流れに乗れ』ということですかねぇ。
吉田さん:そんなこと本山さんに言えないっす! 流れ乗っていますし(笑)。そういう本山さん、服部さんという先輩たちを見てきてこうなったわけですから。いやいや、もう『運』です。『めぐり合わせ』と『運』です!

──では、今の吉田広樹は『めぐり合わせ』と『運』がノッていると。
吉田さん:年齢を重ねていって、少しずつですけど僕が良くなったことももしかしたらちょっとあるかもしれません。あとはパッケージですね。GAINERに乗れたことも大きかったですし、もちろんその前のTOMEI SPORTSでいつも予選を行かせてもらって、そこからPACIFIC Racingでも乗って、チャンピオンを獲ったこともあるGAINERに移籍して、チームメイトの平中(克幸)さんたちとクルマも2年目から一緒になりました。

 そこでデータが共有できるようになり、(星野)一樹さんと組むことですごく勉強をさせてもらって、次に埼玉トヨペットGreen Braveで(脇阪)薫一さんと組むことができました。本当にいろいろタイミングが良かったです。スーパー耐久では服部さんとも組めました。いろいろ教えてもらっていましたけど、一緒に組んでレースウイークの流れだったり運び方というのを、服部さんと一緒にやれたことは大きかったと思います。

──本山さんも若い頃はそうだったわけですしねぇ。
吉田さん:たぶん……。いや、実際僕が見たわけじゃないですけどね(笑)。僕が知っていたときにはもうレース界のトップで、業界を牽引していた側だったので。僕はレースのスタートが遅かったぶん、カートをやっていたわけでもないので。

──そうか、吉田選手はレーシングカート出身じゃないんですね。
吉田さん:そうです。僕は20歳で免許をとってからレース界に来ているので、その頃には服部さんも本山さんも、もうフォーミュラ・ニッポンやGT500でバリバリ活躍されていたときでした。当時は本山さんがF1のテストをしていたくらいです。

 僕は良い環境だったんでしょうね。今も良い環境なのはもちろんあるんですけど、ここに来る過程もいろいろなレジェンドや実績ある先輩たちを見てきました。石浦さんもそうですし、いままで組んだチームメイトの先輩、一樹さんや平中さん、薫一さんたちと組んで、すべてが良い方向にきています。運と巡り合わせとタイミングですね。

──じゃあ、本山さんに教授できることなどないっつうことですね。
吉田さん:いや当たり前じゃないですか(笑)。もう勘弁してくださいよ〜。あ〜もう恐ろしいです〜(泣)。

■吉田広樹さんの深刻な悩みとは
──そんなこんなで、最近お悩みはありますか?
吉田さん:この企画の『お悩み』の温度感はどのくらいなんですか? 一樹さんはかなりマジメな内容でしたが、本山さんは本気なのか笑いに走ったのかよく分からなくて……。

──真剣に悩みをぶつけてくれてもいいし、ネタに走ってもどうぞ。
吉田さん:みんなは馬鹿にして笑ったりするかもしれないんですけど、僕のけっこう真剣な悩みとしては『レーシングカーに乗っているときに、汗をかきすぎる』ことなんですよ。それが不安だということもあって、トレーニングもかなりしている方なんですけど、いずれ自分も体力が落ちてきたときに、暑さで汗がいっぱい出て脱水症状や熱中症になることがきっかけで大きなミスをやらかすかもしれない……と思うとけっこう心配なんです。

──それは悩ましいですな。
吉田さん:人によると思うんですけど、今まで見てきたなかだと、平中さんや蒲生(尚弥)ちゃん、井口(卓人)もマシンを降りた後にそこまで汗をかいているようには見えなかったんです。

──うん。人によるよね。そもそもレース中、埼玉トヨペットGB GR Supra GTは暑い?
吉田さん:GRスープラはそこまで暑いかと言われると、めちゃくちゃ暑いわけではないと思います。2019年までのマークXのほうがマザーシャシーなので暑かったですね。それにさかのぼると、スーパー耐久でPETRONAS SYNTIUM TEAMのBMW Z4Mクーペで谷口(信輝)さんや片岡(龍也)さん、柳田(真孝)さんと組んでいたときも汗がすごくて。やっぱりミスしたりしたときも、息が上がったり心拍数が上がったりしたのが関係があったのかも……ということで、『グローブに“呼吸”って書いて貼って、見て思い出せ!』ということを谷口さんや先輩たちがアドバイスしてくれました。

 それと、僕は昔事故で鼻の骨を折ったことがあるんです。よく見たら鼻が曲がってしまい、曲がって何もしなかったのでそのままくっついて、片側の鼻の通りが悪いと。それで鼻呼吸ができなくて息が上がって汗がで出たり、心拍数も上がってしまう悪循環なんじゃないかと思って。

 GAINERで乗っているときに、大学病院の先生に相談して手術をしたんですよ。レントゲンを撮ってもらい、鈴鹿1000kmの前のお盆くらいに骨を削る手術をしたんです。

 もちろん1000kmもふたりで交代で乗っていたので、『ちょっとでもそれで良くなるかもしれないと思って先生に相談したら『たしかにそれはあるかもしれません』と言うから、『じゃあやります!』と言って入院をして手術をしたんですけど、なんら変わりもなく……(笑)。

──変わらないんかい(笑)!
吉田さん:相変わらず何年経っても汗は出続けますね。だから今は汗は出るものだという体で、トレーニングでカバーするしかないと思って、走ったりランニングしたりというのを増やしています。

──ドリンクは飲むほう?
吉田さん:飲みます。汗が出るから飲むのか、飲むから汗が出ているのかはちょっと分からないですけど。結局、汗が出たら飲まなきゃいけないということはトレーナーさんだったりお医者さんなど、誰に相談してもそうで、脱水の原因になるからこまめに水分を摂ることが大事だと。柳田さんの弟さん(※)もそういう研究をされていたこともあったので、当時相談していたこともあります。それで飲むので(ドリンクボトルは)かなり空っぽになります。

※本郷予防医学センター柳田亮医師。柳田真孝選手の弟で、日本大学医学部でスポーツ医学・予防医学を研究し、スーパーGTのレーシングドライバーの心拍数に関する論文を発表したこともある。

──谷口さんなど、ぜんぜんドリンクを飲まないドライバーもいるよね。
吉田さん:そうですよね。それで汗もそんなにかいていないじゃないですか。じゃあ、僕が普通の街中の運転とか高速の運転で汗をかくかといったら、それはかかないわけじゃないですか。だから谷口さんや平中さんはその延長線上くらいの雰囲気で運転しているのかなとは思うんですけど、だからといって、さすがにGTのときにそんなふうに僕はできないので。GTだけじゃなく86レースやスーパー耐久もすごく汗をかいてしまうんです。

──たぶん、本来は汗をかいたほうがいいんだとは思うけどね。
吉田さん:そうですよね。汗をかくことで体温も下がるわけですし。人としては健康体である以上良いことだと思いますが、マシンに乗っているときはそれがきっかけで脱水や熱中症になることは嫌なので……、その答えがあるかも分からないですが。

■次に繋がるのは仲良しのあの人
──そしてここまで聞いてきましたが、この悩みは『人に相談できる悩みなのだろうか?』というね。
吉田さん:……(笑)。これはたぶん、みんなそこまで意識していないことですもんね。

──『俺は別に』で終わっちゃう気がする。
吉田さん:そうですよね。『ああそう』ってなっちゃいますもんね。難しいな〜。

──その流れになるとこのコーナーが終わってしまうので……。もしくは、最終的に誰かを紹介してほしいのですが『このドライバーは悩んでそうだな』という人でもいいですよ。
吉田さん:なるほど。まだ本人たちには聞いていないのですが、今は井口か蒲生ちゃんを考えていて、ふたりのどちらかかなと。井口は悩んでいるかどうか分からないですけど、こういう相談をキャパ広く受けてくれるタイプで、蒲生ちゃんは『え〜、俺分からないですよ〜』とか言うかもしれないけど、ふたりともライバルでチャンピオンを狙えるチームでずっと走っている人たちで、僕らもライバルだけど、目指しているところは一緒で似たような環境で走っています。なので次にこのコーナーを振るとしたらどちらかかなと思っていました。それか松井(孝允)。

──じゃあその中から誰か決めてくだされ。
吉田さん:誰がいいかな〜。何か面白さの具合とかあるんですか? メーカーがバラけたほうがいいとか?

──メーカーはあまり気にしなくていいかな。いちばん仲が良いのは誰?
吉田さん:井口か蒲生ちゃんですね。最近プライベートで遊ぶのは蒲生ちゃんで、井口はやっぱり家族がいて、なかなか自由に動けないので蒲生ちゃんとカートに行ったりゴルフをしたりというのが多いです。カート練習は一生懸命していて、レースの合間に試合に出たりとかは結構しています。

──じゃあ蒲生ちゃんかな。
吉田さん:ちょっと『え〜』ってなるかもしれないですけどね。でも、蒲生ちゃんは環境が似ているかもしれないです。僕が(川合)孝汰と組んでいて、彼も(菅波)冬悟と組んでいる。

 なんというか、これが本当の悩みかもしれないですけど、自分が理想としていた乗り方、走らせ方が孝汰と違うんですよ。『そこでそんなライン通る?』みたいな、いままでそういう走り方はダメだと思ってきた走り方を結構しています。

 でも、実際富士とかではけっこう速かったんです。でも全部が速いかと言われると、データロガーを見ると『そうかな?』とも思うけど、富士は本当に速くて2020年の最終戦ではコースレコードでポールポジションも獲っています。なので、もしかしたら世代的に蒲生ちゃんと冬悟で走らせ方の差があったりして、僕と孝汰があるのと同じような差があるのかもしれないです。

 もちろん、僕も孝汰の良いところを取ろうと思って、その走らせ方を真似しようともしています。ただそれができるところと、なかなか簡単にはいかないところがあって。走り方を変えることが、一発タイムを出すためにはその走らせ方をしたほうがいいなと思うのと、あとはロングランで特に蒲生ちゃんたちはタイヤ無交換をするじゃないですか。

 僕らもタイヤ無交換をするので、無交換をするにあたってはどっちの走らせ方がいいかとか、ただ予選で一発いくにはこっちの走らせ方がいいとかがあるんじゃないかなとは思っています。それで、蒲生ちゃんと一緒にカートを走ったり、レースでも開幕戦や第2戦で同じような位置を走っていて、片輪交換や無交換など似たようなシチュエーションでやっているので、そういう意味では状況が似ているかもしれないですね。

 蒲生ちゃんとはカートもよく一緒に行っているなかで、僕がこう走りたいなと理想とする走り方をするんですよ。しっかりとマシンを止めて向きを変えるみたいな。それをうしろから見ていると『僕もこうしたいな』と思います。もちろんGTではクルマが違うからできないかもしれないけど、そういう風に思うんです。

 それでいちばんのライバルであるチームメイトに、どういう感じでやっているのかなと。もちろんチームメイトなのでいいとこ取りをしていくのが良いのですが、いちドライバーとしては負けたくないところです。なので次は蒲生ちゃんですね。

* * * * *

 というわけで、たっぷり話してくれた吉田広樹選手でした。次回は蒲生尚弥選手に繋がりました。すでに吉田選手と私から「取材に行くから」と伝えたところ、返ってきたセリフは「え〜、イヤです」でした(笑)。でも問答無用で取材してきます!
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