大坂なおみの聖火点灯後に海外記者が受けたショック。ネガティブコメントに違和感を抱いた理由

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2021年07月30日 07:01  webスポルティーバ

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『ザ・ワシントンポスト』紙のアヴァ・ワレス記者は、「大坂なおみ3回戦敗退」の報を、埼玉のバスケットボール会場で知った。

 ツイッターのタイムラインに流れてきた速報を見て、慌てて公式サイトをチェックする。そして事実を確認したあと、自らの考えを整理した。

 1−6、4−6のスコアは、いささか意外ではある。だが、対戦相手のマルケタ・ボンドロソワ(チェコ)が今季好調の実力者であること、そしてなにより、大坂が背負ってきただろう重圧を思えば、十分に理解できる結果でもあった。




 大坂が開会式の聖火最終ランナーとして現れた時、ワレス氏の口からは「ワオ!」の声が漏れたという。ただ、その「ワオ」に込められた色調は、多彩にして複雑だ。

「まずは純粋に、うれしかった。ナオミが大役を務めることに、おめでとうという気持ちでした。

 ただ同時に、心配でもあったんです。日本開催のオリンピックで、しかも『注目を集めるのが苦手だ』と言ってしばらく人目から遠ざかっていた彼女が、とてつもない期待と重圧を背負うことになったのだから」

 ワレス氏が「大坂の聖火ランナー就任」を確信したのは、開会式が始まる2〜3時間前。当初、開会式翌日の第1試合に予定されていた大坂の試合が、急遽変更になると聞いた時だった。

「私は普段、NBAのワシントン・ウィザーズを取材しているので、ルイ(八村塁)が旗手をやると知った時は、すごくうれしかったんです。一方で、なぜ女性の旗手はナオミでないのだろうと、少々不服にも思っていました。

 そこに来て、ナオミの試合スケジュールの変更があったのだから、彼女が開会式で何かするに違いないと思ったんです。すると日本の記者たちの間で、ナオミが聖火ランナーらしいと噂になっていた。まず間違いなく、そうだろうと思いました」

 ワレス氏が大坂に対し、そこまで強い関心を抱くのは、大坂がアメリカテニス界で長く待ち望まれていた「マイノリティの星」であることも影響しているようだ。

「私が最初にナオミに注目したのは、2018年。マイアミオープンで3回戦に勝ち進んだ時でした」

 ワレス氏の目を捉えたのは、まずは純粋に、当時18歳だった大坂の将来性。加えて、大坂が有するカラフルなバックグラウンドやユニークな人間性が、スターの資質の照光として映った。

「アメリカのテニス界では、黒人女性は注目と期待を集めやすい状況にあると思います。白人のスポーツと見られがちなテニスにおいて、既存の概念を打ち破るスター選手の出現を求める機運があるからです。

 もちろん、ビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹の後継者が待ち望まれる風潮もありました。私自身、父が黒人で母は白人なので、ナオミに共感を抱いてもいます」

 どこかで自己を投影するかのように、大坂に温かい視線を向けてきたワレス氏。だからこそ、大坂の最終聖火ランナーを報じる日本の記事に、少なくない数のネガティブなコメントが寄せられたことに、ショックを受けたとも明かす。

 今大会が始まる前から、大坂と八村を注視したいと思っていたワレス氏は、あらためてこのふたりを介して東京オリンピックを見つめていきたいのだと言った。

「ナオミが聖火台に火を灯した時は、姪っ子の成長した姿を見るような気分になりましたよ」

 感慨深げにそう語るのは、英国『ザ・ガーディアン』紙のテュマーニ・カラヨル記者である。今大会では体操やサーフィンもカバーするが、最も取材歴が長いのがテニス。大坂のことは、彼女が16歳の頃から注目していた。

「若い頃のナオミは、ユーモアがあり、正直で、でもメディアや周囲に対して怯えたようなところもありました。そんな彼女が、時の経過とともに自分の意見をしっかり言うように変わっていった。

 彼女はいずれテニス界のトップ選手になるだろうと、以前から思っていました。ただ、スポーツの枠を超えて世界中が注目する、オリンピックの最終聖火ランナーになるとは......うれしい驚きです」

 ただ、聖火が照らす華やぎのなかに、不吉な影もよぎったという。

「自国開催のオリンピック出場は、おそらく彼女のキャリアで一度しか訪れないチャンス。その大会に彼女は、全仏オープンでの会見拒否で注目を集め、2カ月間試合をせずに挑んだ。理想とは程遠い状況です」

 カラヨル氏がそのような危惧をより強めたのは、大坂が初戦で快勝したあとの、ミックスゾーンを見た時だった。

「テニスは毎週のように大会があり、毎日のように会見が行なわれますが、メディアの顔ぶれはほとんど同じ。それがオリンピックでは、顔ぶれはガラリと変わり、会見の形式も違います。

 ナオミの初戦後のミックスゾーンでは、大量のテレビカメラや記者たちが久々にメディアの前に姿を現す彼女を捉えようと、待ち構えていました」

 大坂が自身の行為の帰結と真の意味で対面し、事の重大さに気づいたのは、この時だったのではとカラヨル氏は推察した。

 3回戦での敗戦後。一度は回避したミックスゾーンに現れた大坂が「1回戦で負けないでよかった」と口にした時、カラヨル氏は、はたと我に返ったという。

「この大会が始まる前は、置かれている状況が厳しくても、きっとナオミは成功するのではと思っていました。これまでにも、重圧を力に変える彼女の姿を何度も見てきましたから。

 ただ、今こうして振り返ると、その考えは非現実的です。2カ月間試合に出ず、批判の声にもさらされ、とてつもない注視と重圧を背負ったなかで優勝したら、それはまさに奇跡です。3回戦での敗戦こそが、ありえる"現実"でした」

◆大坂なおみが投じた一石。外国人記者が会見で感じた違和感とは何か>>

 もちろん今も、大坂が世界最高の選手のひとりであることは間違いなく、今大会の結果はそれを棄損するものではない。

「ただ、人生で一度切りのチャンスを、こんな形で逃す彼女を見るのは、とても残念だった」

 それがカラヨル氏の、率直な思いである。

 ここに登場したふたりの記者は、いずれも大坂の動向とともに、自分の心の動きも含め、世間がどう反応するかをも見てきた。

 聖火台に火を灯した時、大坂は自らの姿を世界中に示した。それは同時に、世界の人々が大坂というファインダーを介してスポーツを、このオリンピックを、そして日本を見たということでもある。

このニュースに関するつぶやき

  • 擁護派のアヴァ・ワレス記者は彼女が16歳の頃からメディアや周囲に対して怯えたようなところもありましたと言ってる・・・全米を優勝する以前から人との接触障害があったんだ。やはりうつ病ではない
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  • さっきからCordae(大坂なおみの彼氏)の曲がずっと自動再生されている。なかなか良き。涼やかで耳に心地よい。https://youtu.be/wdrmK0DtztU なおみ、彼氏とゆっくり過ごして心を癒してね。
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