「紀州のドン・ファン」捜査の山場で女性の盗撮 逮捕された和歌山県警刑事の呆れた動機

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2021年07月30日 10:00  AERA dot.

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写真紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さんと殺人容疑で逮捕された須藤早貴容疑者
紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さんと殺人容疑で逮捕された須藤早貴容疑者
 和歌山県警の大金星と言われる「紀州のドン・ファン」事件の立件に暗雲が垂れ込めている。

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 警視庁に傷害容疑で7月28日、逮捕されたのは、和歌山県警捜査1課の巡査部長、讃岐真生容疑者(35)。今年4月18日夜、讃岐容疑者は東京都大田区の京浜急行天空橋駅前で、20代の女性を盗撮しようとしてケガをさせたという。和歌山県警の讃岐容疑者は東京に出張中、事件を起こしたが、捜査していたのは、あの大事件だった。

 2019年7月、和歌山県の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さん(享年77)が殺害され、今年4月末に元妻の須藤早貴容疑者(25)が殺人容疑で逮捕された。和歌山県警は当時、野崎さんに覚せい剤を投与して殺害した疑いが持たれていた須藤容疑者が住んでいる東京に捜査員を派遣。その1人が讃岐容疑者だった。

 讃岐容疑者は天空橋駅近くのビジネスホテルに宿を取り、捜査をしていたという。

「讃岐容疑者は天空橋駅のエスカレーターに向けて歩いている女性に目をつけた。スマートフォンを取り出して、女性のスカートから手を伸ばすように盗撮しようとした。女性はそれに気づき、エスカレーターで上がったところで、讃岐容疑者に『警察に電話しますから』と携帯電話で110番通報しようとした。すると、讃岐容疑者は女性の携帯電話を奪おうとして、もみ合いになった。讃岐容疑者は女性の手から携帯電話をとりあげ、最後は投げ捨てて、その場から脱兎のごとく走り去った。女性の通報を受けて、捜査をしたところ、讃岐容疑者の犯行であることがわかった」(捜査関係者)

 なんと、紀州のドン・ファン事件を捜査中に女性を盗撮し、ばれて逃亡したというから驚きだ。和歌山県警の幹部はこう怒る。

「須藤容疑者を逮捕したのは、4月28日や。讃岐容疑者が盗撮したのは、その10日ほど前やろう。捜査の山場で、一番、緊張が走り大変な時期や。みんな、須藤容疑者のことで必死、頭がいっぱい。そんなときに盗撮するような暇があったんか」

 さらに苦悶の表情を浮かべ、ため息をついた。

「いったい、何を考えているんや。東京は和歌山の田舎と違う。防犯カメラがあちこちにある。バレたら簡単に捕まることがわからんのか。田舎もん過ぎる」


 讃岐容疑者は天空橋駅近くのビジネスホテルに宿泊していたが、ホテル周辺にも、防犯カメラがいくつもある。追跡されると、すぐに犯行がばれてしまうのは、「どんな刑事でも、すぐに察しがつく」(同前)という。

 前出の和歌山県警幹部は讃岐容疑者に厳しい処分を示唆しながらこう続ける。

「讃岐容疑者の処分より心配なのは、須藤容疑者の裁判や。その影響を考えれば、この盗撮はえらいことをしてくれた」

 須藤容疑者は野崎さんの殺害について否認を続けている。その後、札幌市の男性から多額のカネをだまし取った詐欺容疑などでも再逮捕されたが、そちらも否認。すでに殺人で起訴されているので、裁判員裁判で裁かれることは確定的だ。裁判でも須藤容疑者は否認するとみられる。そこで争点になるのは、和歌山県警の捜査だ。

 讃岐容疑者のようなでたらめな刑事が捜査し、裁判で証拠を提出したとなれば、須藤容疑者に反撃されかねないという。和歌山県警には苦い経験がある。

 野崎さん怪死事件は「密室の犯行」という見立てで、消去法で須藤容疑者以外に犯行に及ぶものはいなかったという立証となった。同じような立証は1998年7月に起こった和歌山カレー事件でも行われた。死刑判決が確定している林眞須美死刑囚の公判で重要な証拠になったのが、カレーに混入されたヒ素の鑑定だ。ところが、2013年6月、和歌山県警科学捜査研究所の元男性主任研究員が証拠品の鑑定結果を捏造した虚偽公文書作成・同行使と有印公文書偽造・同行使の疑いで有罪判決を受けた。

 元男性研究員は和歌山カレー事件の最大の焦点である、毒物が混入されたカレーの鑑定試料を運ぶなど、重要な捜査に関与。その後、林死刑囚の弁護団は、ヒ素鑑定に疑いがあると再審請求を起こし、争った。

「元男性主任研究員のようないい加減な捜査員がやった捜査は信用できない。毒物が混入されたカレーの鑑定もおかしいと疑ってかかるのは当然だ」(当時の弁護団)

 元男性主任研究員は起訴された以外に鑑定の偽造が複数あったが、時効で起訴されなかったという。

「讃岐容疑者も余罪があるかもしれない。須藤容疑者は裁判で徹底的に否認するだろう。カギになるのが和歌山カレー事件と同様、周辺捜査や消去法の捜査だ。それに関わった讃岐容疑者が盗撮で逮捕となれば、その信用性がゆらいでしまうと心配している」(前出・和歌山県警幹部)

 警視庁は讃岐容疑者の和歌山県内の自宅なども捜索。讃岐容疑者は、警視庁の調べに対し、「好みの女性だったので、盗撮した。女性にばれてしまったので、犯行に及んでしまった」と容疑を認めている。

 讃岐容疑者の犯行が須藤容疑者の裁判の行方に今後、どんな影響を与えるのだろうか。
(AERAdot.編集部 今西憲之)

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