五輪における日本の天敵!? NPB組3選手擁するアメリカはどんなチーム?

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2021年07月30日 11:44  ベースボールキング

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◆ メジャー不参加も五輪で強さ見せる母国

 言わずと知れた「野球の母国」アメリカだが、プロ参入後のオリンピックの舞台での「日米決戦」は、意外なほど少ない。

 2000年シドニー大会では、プロアマ混成の日本代表はシーズンを終えた (このオリンピックは9月開催)マイナーの有望株を集めた名将トミー・ラソーダ監督率いるアメリカ代表に延長戦の末2対4で敗れ、メダルも逃している。これがきっかけとなって次のアテネ大会ではオールプロの「長嶋ジャパン」が結成されたが、この時は、アメリカが予選でよもやの敗戦。カナダに五輪切符を奪われ、出場が叶わなかった。

 2008年北京大会では、予選リーグではシドニーと同じ2対4のスコアで敗戦。銅メダルをかけた3位決定戦で再戦するも、現在も語り継がれているG.G.佐藤 (当時西武)の失策などもあり、4対8で敗戦。再びメダルなしに終わっている。0勝3敗。これがプロ参加以降のオリンピックでの「日米決戦」の成績だ。

 公開競技時代の1984年ロサンゼルス大会以降の5大会でアテネ大会以外の4大会に出場。金メダル2回、銀と銅それぞれ1回を誇る野球大国・アメリカだったが、出場権のかかった2019年のプレミア12では、3位決定戦でメキシコによもやの敗戦。アメリカ大陸予選に回ることになったが、今年6月に行われた同大会では4戦全勝で見事五輪切符を手にした。

 MLB機構が各球団40人のメジャー契約者のオリンピック出場を認めない方針のため、代表チームのロースターはマイナーリーガーで構成されることになったが、2年前のプレミア12の際の代表メンバーが「メジャー予備軍」の若手で構成されていたのに対し、今回のメンバーは「元メジャー」のベテラン中心となっている。実に13人がメジャー経験者だ。 

 一方、24人中13人がアメリカ大陸予選からメンバー入りしており、チームワークという点で結束は固いと思われる。


◆ 投手陣の手駒は豊富

 まず投手陣から見てみると、先発陣は人材が豊富だ。今シーズン、日本ハムからソフトバンクに移籍して絶好調のニック・マルティネスを筆頭に6人が名を連ねる。このうちメジャー13シーズンで108勝を挙げているスコット・カズミアー (ジャイアンツ3Aサクラメント)は今シーズンもメジャーで2試合に先発している。

 実績という点では、メジャー17シーズンで107勝のエドウィン・ジャクソン (独立アトランティックリーグ・ハイポイント)が十分な経験をもっているが、大陸予選の起用を見る限りではセットアップに回る可能性が高い。となれば、今シーズン2Aと3Aで12試合すべてに先発しているシェーン・バズもしくは3Aでの同僚、ジョー・ライアン (ともにレイズ3Aダーラム)らの若手が3、4人目の先発候補として名が挙がるだろう。

 抑え役は、プレミア12では元オリックスのブランドン・ディクソン (カージナルス3Aメンフィス)が務めたが、今回のメンバーには、メジャー通算12シーズンで137セーブのデビッド・ロバートソン (元ホワイトソックスなど)が適任か。彼の調子いかんによっては、ヤクルトの守護神、スコット・マクガフがこのポジションを務めることも考えられる。

 メキシカンリーグでプレーしている元日本ハムのアンソニー・カーター (サルティージョ・サラペロス)は今シーズン、クローザーとして18試合に登板して8セーブを挙げているが、ディクソンとともにセットアップに回ることになるだろう。

 面白い存在は、左のワンポイントを期待されるアンソニー・ゴース (インディアンス3Aコロンバス)。5シーズンのメジャー経験は全て外野手として。タイガース時代の2015年にはセンターのレギュラーとして123安打を放っている。今シーズンは投手専任のようだが、ベンチ入り人数の少ないオリンピックでは二刀流の復活も考えられる。


◆ クリーンナップは要警戒?

 一方、打撃陣に目を転じると、クリーンナップは他国の脅威になるだろう。

 メジャー11年で通算1059安打、218本塁打のトッド・フレージャーは、35歳で迎えた今シーズン、パイレーツのスプリングトレーニングに招待選手として参加。開幕後にメジャー契約を勝ち取ったものの、打撃不振でリリースされるが、オリンピックのアメリカ大陸予選のメンバーに選出されると、打率4割、2本塁打5打点で優勝に貢献した。その後、五輪に備えて独立系フロンティアリーグのチームと契約し、ここでも本塁打を放っている。

 4番には3Aで17本塁打を放っているパトリック・キブレハン(パドレス3Aエルパソ)が有力だ。彼は現在マイナー契約となっているが、今シーズンもメジャーの舞台に立っている。DeNAで2年目を迎え日本の野球に精通しているタイラー・オースティンもいるが、打席に立つ機会を増やすため3番での起用がベターではないだろうか。

 打線全体を見ると、この3人で形成されるであろうクリーンナップ以外は、それほど怖くない印象だ。指名打者には2018年ドラフト1巡目指名でレッドソックスに入団したトリスタン・カサス (2Aポートランド)、もしくは外野登録ながら内野のどのポジションもこなすユーティリティプレーヤー、ジャック・ロペス (レッドソックス3Aウォーセスター)あたりが務めると思われるが、日本のトップレベルの投手にとっては手強い相手ではないだろう。

 いずれにせよ、パワーという点では脇役と言えども侮れないところはあるが、そもそも夏場を迎えてチームを離れることができるということは、メジャーとの入れ替えの可能性が低い選手が集まっているということでもある。クリーンナップの前にランナーをためることがなければ、侍ジャパンの投手陣が大量失点を喫することはないだろう。

 ただ、予選の戦いぶりを見る限り、細かい継投でブルペン陣を次々と投入してくることが予想される。日本にとっての最悪のシナリオは、投手陣が抑えているのに得点できず、ワンチャンスをモノにされて、そのまま継投策にやられるというパターン。どの試合にも言えることではあるが、より一層どんな形でも先取点をとることが最重要課題となってくるのではないだろうか。


<投手>
16 スコット・マクガフ(31)
22 ニック・マルティネス(30)
28 ライダー・ライアン(26)
30 デビッド・ロバートソン(36)
31 アンソニー・ゴース(30)
32 ブランドン・ディクソン(36)
33 エドウィン・ジャクソン(37)
35 シェーン・バズ(22)
40 ジョー・ライアン(25)
43 スコット・カズミアー(37)
44 シメオン・ウッズ・リチャードソン(20)
48 アンソニー・カーター(35)

<捕手>
8 マーク・コロスヴァリ(25)
34 ティム・フェデロビッチ(33)

<内野手>
2 エディ・アルバレス(31)
10 ニック・アレン(22)
12 ジェイミー・ウェストブルック(26)
25 トッド・フレイジャー(35)
26 トリストン・カサス(21)

<外野手>
5 エリック・フィリア(29)
7 ジャック・ロペス(28)
18 パトリック・キブルハン(31)
23 タイラー・オースティン(29)
24 バッバ・スターリング(28)


文=阿佐智(あさ・さとし)

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