メーカーの新ジャンル参入はサポートに要注意? 既存製品と同じようにいかないワケ

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2021年07月30日 17:22  ITmedia PC USER

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 前回紹介したように、メーカーが異業種に参入することはよくある。異業種とまでは行かなくとも、これまでの製品ラインアップから外れた新規ジャンルの製品が発表されると、そのメーカーのファンの間では期待が大いに膨らむ。



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 ところがいざこうした新規ジャンルの製品が発売されてみると、製品自体は悪くないのに、サポート面の問題を抱えているケースが散見される。問い合わせても返信が遅い、回答があっても要領を得ないなど、同じメーカーとは思えないサポートに、がくぜんとした経験はないだろうか。



 もっともこの背景には、新規事業にありがちなメーカーの内部体制が大きく関係している。今回はそうした状況を引き起こしがちな、メーカーの裏事情についてみていこう。



●新規事業のジャンルは極めて属人的に決定される?



 メーカーが新規事業を立ち上げるに当たって、具体的にどの事業に参入するかは、至って属人的な要因で決定されることが多い。よくあるのは、かつて別メーカーで該当の事業に携わっていた担当者が中途入社してきたことがきっかけで、新たにその事業に参入することになるパターンだ。



 一般的にIT系の製品の場合、仕入元である外部企業の協力があれば、最初からそこそこの製品を作れてしまうので、新規事業への参入のハードルは、そう高いわけではない。難しいのはむしろ、その業界特有の力関係やビジネス上のルールだ。



 こうした部分の前知識がないと、製品は十分な競争力があるにもかかわらず、量販店に並べてもらえなかったり、メディアで全く取り上げられなかったりという状況に陥りがちだ。しかし過去に別の企業でその事業に関わっていた経験者が社内にいて、ノウハウをフィードバックできるとなると、成功の確率はぐんと高くなる。



 もっとも実際によくあるのは、たまたま中途入社してきたスタッフが、想定していた配属先でフィットせずに中ぶらりんとなり、結果的に、当人がもともと別の会社で行っていたビジネスの知識を生かして、新規事業を立ち上げるという、後ろ向きなパターンだ。早い話「使い物にならなかったので、何か新しいことでもやらせておけ」というわけだ。



 こうしたことから、メーカーが新規参入するジャンルを先に決め、そこから立ち上げのための社員を新たに採用するパターンはあまりない。仮に業界に詳しい経験者が応募してきたとしても、事業部を任せるに値するのか、それともその下で実務を任せたほうがよいのか、採用の時点では判断がつかないからだ。



 従って、その新規事業向けにスタッフを中途募集するとしても、ある程度コアメンバーが固まり、事業の軌道が乗ってから、その補助メンバーを募るという流れになる。もっとも、立ち上げメンバー以上の力量および人脈を持った中途応募者が来たせいで、立ち上げた初期メンバーの居場所がなくなりモメるというのも、これまたよくある話である。



●新規事業の実行部隊には問題児が投入されがち?



 ところで、こうした新規事業で新たに事業部を立ち上げる場合、コアメンバーの下につく営業職や事務職は、社内の飽和しているスタッフが回されることも少なくない。社運を賭けたプロジェクトともなると話は別だが、そうでない場合は、使い物になるスタッフはもとの部署に残し、そうでないスタッフが新規事業に回されがちだ。



 例えば、行動力はやたらとあるが他のスタッフと協調性がない一匹狼など、社内で手を焼いている問題児がいれば、新規事業に突っ込んでみようという話が出やすくなる。問題のあるスタッフは、上司が異動にすんなりとOKを出すので、結果そうしたパターンにつながりやすい。



 結果的にそうした新規事業は、ある程度経験はあるものの、別の事業にフィットしなかったコアメンバーに加えて、他の事業から放出された問題児で構成されるパターンが少なくない。つまるところ、社内で既存事業のスリム化を行った際、そこで出たぜい肉に、見た目のよいリーダーシップを取れる人材を乗せて、体よく事業部に見せるというパターンになっていたりする。



 その結果として、同じメーカーでありながら、サポートや販売体制などで、既存の事業部と差が出やすくなる。もともと社内でうまく行っていない人材が集まっているせいで、各部署との連携がうまくいかなかったり、他部署と連携しなくてはいけないトラブル解決でも、リソースを回してもらえなかったりする。



 こうした事情を知らないユーザーの側から見ると、そのメーカーは長らく使っていて信頼していたのに、新しく立ち上がったジャンルの製品はサポートに問い合わせても返事がなかなか返ってこないとか、返事は来たものの要領を得ていないという問題が発生することになる。



●新規事業にありがちなアウトソースで自滅するパターンも



 これに加えてもう一つ、近年ありがちなパターンがある。それは、新規事業の立ち上げに伴って、新しいソリューションを試してみたものの、それがなかなかフィットせず、結果的にユーザー対応にしわ寄せがいくケースだ。



 具体的には、これまでサポートは社内スタッフが行っていたのを、日本語対応をアピールする海外企業にアウトソースして、サポートの品質が著しく低下するパターンが挙げられる。



 メーカーとしては、サポートを外注することでコストを減らすことにかねてより興味があるが、既存のサポート部門を切り捨てていきなり切り替えるのはリスクもあるし、既存部門の反発もある。それ故、新しくできた事業部で、試しにアウトソースを行ってみようというわけだ。



 こうしたアウトソース先は当たり外れがあるので、一概に全部が悪いとはいわないが、結果的に、これまで円滑なコミュニケーションを取れていたメーカーのサポートが、新しい事業部では製品に対する質問の答えがすぐ返ってこないのはおろか、日本語の受け答えもカタコトで、伝わっているかどうかあやふや……といった状況に陥るケースはよくある。



 この他にも、新しいシステムを試験導入した結果、業務フローとマッチせずに大混乱を引き起こしたり、電話窓口を廃止したことでクレームが殺到したり、といったトラブルは新規事業につきものだ。むしろ新規事業の存在自体、コスト改革を目指す経営層からすると、新しい試みの実験台となっている節すらある。



 ユーザーとしては、お気に入りのメーカーが新規事業を始めた場合、それに期待するのは構わないが、サポート面については慎重に見極めた方がよい。例えば、サポートの問い合わせ窓口が他の製品と別になっていたりするのは、その典型例といえるだろう。注意してかかるに越したことはない。



著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)



IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら


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