金沢発のあやかしバディミステリー、第3弾! 明るくておひとよしな汀一と、堅物妖怪・時雨のコンビが今回で解消?

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2021年07月30日 17:41  ダ・ヴィンチニュース

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写真『金沢古妖具屋くらがり堂 夏きにけらし』(峰守ひろかず/ポプラ社)
『金沢古妖具屋くらがり堂 夏きにけらし』(峰守ひろかず/ポプラ社)

 加賀百万石の城下町として知られる石川県の金沢市。旅行地として人気の街だが、そんな金沢を舞台にした人気あやかしミステリーの第3弾『金沢古妖具屋くらがり堂 夏きにけらし』(ポプラ社)が大好評発売中だ。

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 金沢に引っ越してきた高校1年生の葛城汀一(かつらぎ・ていいち)は、クラスメイトで実は妖怪の堅物系クールビューティ、時雨と友人になる。従業員や関係者がみんな妖怪である古道具屋の蔵借(くらがり)堂を主舞台に、1話完結の連作短編形式で紡がれるストーリーだ。

 著者の峰守ひろかずさんは『絶対城先輩の妖怪学講座』(KADOKAWA)をはじめ、数々の妖怪や怪異、超常現象をテーマにした作品を発表してきた。その豊富な知識はこのシリーズでも存分に発揮されて、誰もが知っているメジャーどころからちょっぴりマニアなものまで、たくさんの妖怪が登場してきた。

 今回のゲストキャラは、流浪の妖具(*妖怪の道具のこと)職人の美女、魎子(りょうこ)。そして、表紙で汀一からかき氷を食べさせてもらおうとしている姿が愛らしい、カワウソの男の子、小抓(こつめ)だ。

 幕開けとなる第1話は、寒さの凍てつく2月。金沢の城下を流れる犀川に、ふしぎな鈴の音と共に奇妙な少年が現れるという噂からはじまる。その真偽を確かめようとする汀一と時雨は、宙に浮かぶ大きな白い箱に追いかけられるカワウソ少年と遭遇。その箱“ハコツルベ”は、あらゆるものを取り込んで消滅させるおそろしい妖怪だった。

 危機一髪のところを、さっそうとやってきた魎子に救われる。赤いコート姿もあでやかな魎子の正体は、妖怪界では名だたる存在である塵塚怪王(ちりづかかいおう)だった。そんな大物の魎子から、「わしの弟子にならないか?」と時雨はスカウトされる……。

 今巻では、汀一と時雨の心が大きな変化を迎える。

 妖具職人を目指す時雨にとって、魎子の申し出はまたとないチャンスだ。だけど、弟子となったら金沢を出なければならない。今までの時雨なら悩むことなく即決していたはずだけど、今の彼には汀一というかけがえのない友だちがいる。

 将来の岐路に立ち、迷う時雨と、そんな親友にどんな言葉をかけたらいいのか、やはり迷う汀一。蔵借堂の新入りとなった小抓を弟よろしく面倒みたり、明るくやさしいヒロインの亜香里が人知れず抱えていた苦悩にふれたりと、汀一はかつてなく能動的に動いている。

 友情を知ったことで悩み、迷い、心の機微が豊かになった時雨と、蔵借堂の面々との交流を通して、少しずつ成長してゆく汀一。2人のドラマを軸として、魎子が旅を続ける理由が次第に明らかになっていき、それは妖怪全体の存亡にかかわる一大事へ発展する。

 クライマックスの背景は、毎年6月に行われる金沢最大のイベント、百万石まつりだ。華やかなお祭りと同時進行で、汀一&時雨のコンビがシリーズ最大の勝負に挑む。

 他にも金沢城公園や犀川の桜橋、子来町緑地といった金沢のすてきなスポットがごく自然に、かつ重要な舞台として出てくるのも楽しさのひとつだ。

 旅に出かけることが難しい状況がまだまだ続いているけれど、金沢と、そこで生きる魅力的なキャラクターたちの活躍がたっぷり堪能できる本書を読むと、まるで自分もそこにいるかのような気分がしてくるからふしぎだ。

 観光小説としても妖怪小説としても、いよいよ脂が乗ってきた感がある。

文=皆川ちか

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