小山田辞任で…2千万円超を投じた「ちびまる子ソング」お披露目当日の悲劇 かつてはピエール瀧“騒動”も

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2021年07月31日 09:00  AERA dot.

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写真「まるちゃんの静岡音頭」 (C)SAKURA PRODUCTION
「まるちゃんの静岡音頭」 (C)SAKURA PRODUCTION
 東京五輪で選手たちがめざましい活躍を見せる中、運営をめぐっては様々な不祥事が起き、"呪われた五輪”とまで称されてきた。その余波で、あまりにも不運な経過をたどっているのが「まるちゃんの静岡音頭」だ。この楽曲は、「ちびまる子ちゃん」の生みの親で2018年に亡くなった漫画家のさくらももこさんが作詞を手がけていて、ある思いも込められている。度重なるお蔵入りに、静岡市の担当者や関係者たちはどう思っているのだろうか。話を聞いた。

【画像】たまちゃん・友蔵が絶景の中で踊る「まるちゃん音頭」

*  *  *

「まるちゃんの静岡音頭」は、静岡市が市の魅力をPRするご当地ソングとして、作曲に細野晴臣氏、編曲に小山田圭吾氏、ボーカルに静岡県出身のピエール瀧氏らを迎えて制作。2013年3月に完成した。

 鳴り物入りで楽曲が披露されたものの、2019年3月、ボーカルを担当するピエール瀧氏の薬物使用による逮捕を受けて、公式使用を中断。約2年間の“お蔵入り”を経て、今月、まる子役の声優・TARAKOさんを新たなボーカルに迎えて新バージョンの完成にこぎつけた。19日がお披露目となったが、その当日の夜、音頭の編曲を担当した小山田圭吾氏がまさかの五輪開会式の作曲担当を辞任。公開まもなくして2度目のお蔵入りに追い込まれてしまった。

「まさにこれからというところでしたので、残念。静岡音頭はさくらももこさんが作詞をしてくださっていて、市の大きな財産です。音頭が市のためになればと思ったのですが、今回は非常に残念でした」

 お披露目イベント当日の急転直下に、市の担当者はそう落胆する。

 そもそもこの「まるちゃん音頭」は、静岡市の魅力を市内外に発信するシティプロモーション事業の一環で、2012年にプロジェクトが発足。楽曲の制作は、さくらももこさんとゆかりのある制作会社「Cherry Music」に委託した。13年の完成後は、市役所のエレベーターやYouTube動画などで活用。毎年7月に音頭を披露するコンテストも開催してきた。

 TARAKOさんをボーカルに迎えた新バージョンでは、お披露目と同時にラッピング電車が初運行するなど、音頭の復活を華々しく祝った。そんな矢先の小山田氏辞任。「小山田さんのした行為が許せない」「そのまま使い続けていいのか」といった苦情が12件寄せられたという(7月30日時点)。市はこうした声を受け、お披露目からわずか2日後に楽曲使用の停止を決めた。

 担当者は停止を決めた理由について、こう話す。

「音頭については、市民の皆さまに愛していただいて、初めて効果が上がる。皆さんに愛してもらえなければ意味がないと思っていますので、市民の声を考慮しながら進めていきたい」

 この音頭のプロジェクトでかかった費用の総額は2000万円を超えた。その額からも、市の気合いの入りようがうかがえる。市は一度目のお蔵入り前の楽曲の製作委託費に、約1260万円を投じた。その後、新バージョンの制作費用(TARAKOさんの歌唱の収録や吹き替え)に約200万円。CD制作費など普及啓発費に約240万円。

 ほか、静岡鉄道との提携事業(まるちゃん音頭のデザインを全車両にかたどったラッピング電車や駅のサイネージでの動画使用)に約720万円。ラッピング電車の出発式のイベントに30万円を使った。

 音頭を前面に押し出したラッピング電車は、「楽曲不在」の中、現在も走り続けている。市は運行の停止も含めて検討したが、「小山田さんが関わっている部分ではない」として生かすことを決めた。ただ、静岡鉄道の静岡駅と新清水駅の構内で流していた音頭のPR動画については楽曲付きだったため、使用停止を余儀なくされた。

 静岡鉄道の広報担当者は「TARAKOさんが歌ってくださって再出発したばかりの中でこうなったので、本当にびっくりしています。細野晴臣さんのような豪華メンバーで作られた楽曲なので、残念」と話した。

 市の担当者によれば、「どちらかといえば、ピエールさんの時には、『音頭が好きなので歌唱者を続けて残してほしい』『ピエールさんに罪はあっても音楽に罪はない』といった、存続を希望される声が多かった」という。

 小山田氏の騒動の際も、SNSでは「作品に罪はない」といった意見が散見された。実際に作曲を担当した細野晴臣氏の心境も気になるところだ。事務所を介して細野氏にコメントを求めたが、「ただいま、自身の制作が佳境の状況で、当面は制作以外に余裕がありません」との回答だった。

 音頭には、さくらさんの静岡への思いが込められている。2013年に音頭が完成した際、さくらさんは次のような喜びのコメントを残している。

「私の生まれ育った静岡の、おいしい物やおなじみの名所をいっぱい入れて楽しい音頭を作りたいと思って作詞いたしました。昔からの大ファンの細野さんに作曲をお願いし、友達の小山田君がアレンジをしてくれて、静岡市出身のピエール瀧さんが歌って下さり、パパイヤ(鈴木)さんが踊りの振り付けをして下さり、本当にうれしいすてきな音頭が出来ました!! 」

 小山田氏も完成時、「さくらさんに頼まれて、この曲のアレンジをしているうちに静岡県に行って、まぐろとしらすとモツカレーを食べてみたくなりました」とコメントを出し、抜擢にはさくらさんの意向があったことを明かしている。

 さくらさんはコミックスのおまけページや漫画『コジコジ』の作中に、「小山田君」や、小山田氏のソロユニット「コーネリアス」、ピエール瀧氏のバンド「電気グルーヴ」の名前をさりげなく登場させてきた。他にも小山田氏は、アニメ「ちびまる子ちゃん」のオープニングテーマ『ハミングがきこえる』の作曲を手がけており、さくら作品との縁は深かった。さくらさんが亡くなった際にも、コーネリアスとしてのツイッターアカウントで「さくらさん、あまりに突然でショックです…」と悲しみを表していた。

 さくらさんは小山田氏やピエール瀧氏らに期待をかけ、音頭が静岡のPRに寄与することを望んでいたはず。それだけに、このような経過をたどってしまったことは残念に思えてならない。

 小山田氏に代わって、新たな編曲者を迎える予定はあるのだろうか。市の担当者は、「再開の方針についてはまさに検討しているところです」と回答。再復活するか否かも含めて検討中という。

 記者も静岡で生まれ育ったため、静岡の自然や食を愛したさくらさんの思いに共感を覚えている。予算はほどほどに、なんとか復活の糸口を見つけてほしい。
(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)

このニュースに関するつぶやき

  • 確かにコレも呪われ過ぎてる…嘆息… https://mixi.at/abNmbzD
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  • 12件程度の意見でやめなさんな。貴重なご意見ありがとうございましたとだけ言っておけばいい
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