女子も女装男子も信長も「野球」が大好き? オリンピック競技を小説&ライトノベルでも楽しもう

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2021年07月31日 10:01  リアルサウンド

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女子も女装男子も信長も「野球」が大好き

 北京五輪から13年ぶりにオリンピックに帰ってきた野球と女子ソフトボール。ソフトボールは、北京に続いて日本代表が金メダルを獲得して存在をアピールした。


 日本ではずっと人気のスポーツ。『キャプテン』や『ドカベン』といった漫画だけでなく、ライトノベルやティーン向けの小説にも描かれ、その面白さと奥深さを読む人に感じさせている。


暗殺者の少年が女装で野球? 石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』

「死にゆく者の罪なら許してしまえるように、試合中のチームメイトのことならばどんな重荷も背負ってやりたくなる。打者の孤独はそうした憐憫の情を引き起こすほどに深い」



石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』(スーパーダッシュ文庫)

 『シューレス・ジョー』のキンセラによる小説か、『菊とバット』のホワイティングが書くコラムに出てくるような、野球に関する深い洞察を含んだこの言葉が書かれていると聞けば、信頼に足る小説だと思えるだろう。たとえ主人公が女装して後宮に潜入した暗殺者の少年で、その後宮では妃たちが皇帝の目を引きたいと、野球のチームを率いてリーグ戦を繰り広げている設定だとしても……。


 石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』には、打者の心理描写から強打者相手にシフトを布く戦術描写、グラブやバットといった道具の描写にいたるまで野球の真髄が詰まっている。読めば野球の醍醐味をとことん味わえるはずだ。


女子だって野球をしたい 樺薫『ぐいぐいジョーはもういない』
樺薫『ぐいぐいジョーはもういない』(講談社BOX)

 不世出の大打者、ジョー・ディマジオの不在を嘆く言葉がタイトルとなった樺薫『ぐいぐいジョーはもういない』は、プロ野球やオリンピックとは未だ無縁の、女子野球における熱くて激しい描写が詰まった作品だ。


 ダスティン女学院の野球部を訪ねた新入生の小駒鶫子が出会ったのが、長身の美少女・城生羽紅衣。速球にも変化球にも優れた彼女の球を鶫子だけが受けられるとあって、2人はバッテリーを組む。そこから漂う百合シチューションも麗しいが、試合となれば1球1球、1打席1打席のすべてに意味を持たせ、言葉で綴って野球というスポーツの奥深さを読者に感じさせる描写も良い。オリンピックには野球とソフトボールともうひとつ、女子野球も必要だと思わせてくれる作品だ。


挫折した野球少年を野球女子が立ち直らせる 柏葉空十郎『ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様』
柏葉空十郎『ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様』(メディアワークス文庫)

 大学野球では実現した、女子が男子に混じって試合に出ることが、高校野球でも可能になった世界が舞台の柏葉空十郎『ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様』。


 綾音とは幼馴染みで野球仲間だった巧也が、同じ高校に進学したものの野球部に入ってこない。どうやら中学時代に挫折したらしい。そこで綾音は巧也を野球部に引っ張り込み、弱小野球部ともども立て直そうとする。


 スピードは遅いものの球種は多彩な綾音が強豪校を手玉に取る様子など、プレーに関する描写はエキサイティング。男子だ女子だといった区別なく、同じスポーツをひとつのチームでプレーできる時代の訪れを、願いたくなる夢に溢れた作品だ。


信長チームで武田信玄やナポレオンと戦え りょくち真太『戦国ベースボール』
りょくち真太『戦国ベースボール』シリーズ(集英社)

 これまで20冊を刊行しベストセラーとなっているシリーズがりょくち真太の「戦国ベースボール」。


 小学校6年生の山田虎太郎が交通事故に遭って地獄に行き、織田信長が率いる野球チームに入って武田信玄らのチームと対戦する……。なかなかぶっ飛んだ設定だが、対戦相手に坂本龍馬や諸葛孔明、ナポレオンらが出てくるともはや一種の歴史偉人小説。野球も歴史も学べるところが子供たちに人気の秘密なのかもしれない。


 著者は、つるみ犬丸名義で元エリート会社員が統計を使い高校の弱小野球部を立て直す『逆転ホームランの数式 転落の元エリートと弱小野球部が起こす奇跡』も刊行。スポーツを面白く読ませる書き手として注目したい。


■書誌情報
『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』(スーパーダッシュ文庫)
著者:石川博品
出版社:集英社


『ぐいぐいジョーはもういない』(講談社BOX)
著者:樺薫
出版社:講談社


『ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様』(メディアワークス文庫)
著者:柏葉空十郎
出版社:KADOKAWA


『戦国ベースボール』シリーズ
著者:りょくち真太
出版社:集英社


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