脳ドックで見つかった「くも膜下出血」リスク 医師が語る治療しなくていい条件とは?

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2021年08月01日 09:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
 くも膜下出血の主な原因は脳動脈瘤の破裂だが、脳ドックの普及で未破裂の脳動脈瘤が発見されるようになっている。破裂前に治療できれば発症を未然に防げる。治療技術の進化でカテーテル治療が可能なケースも拡大している。

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 くも膜下出血の主な原因となる未破裂脳動脈瘤。脳ドックや別の病気で実施した検査で未破裂脳動脈瘤が見つかるケースが増えているという。

 通常、脳ドックでおこなわれるのは、脳の断層写真を撮れる「頭部MRI(磁気共鳴断層撮影)検査」と、脳の血管を立体的に映し出せる「頭部MRA(磁気共鳴血管撮影)検査」だ。この頭部MRA検査で未破裂脳動脈瘤が発見できる。

 これらの検査で未破裂脳動脈瘤が発見されたら、どんな場合に治療が推奨されるのだろうか。横浜新都市脳神経外科病院院長の森本将史医師はこう話す。

「すべての未破裂脳動脈瘤に治療が必要というわけではありません。見つかる動脈瘤の半分以上は2〜3ミリで経過観察になることが多い。4ミリ以上の場合に、家族性、個数、形状、部位、健康状態なども加味して治療の妥当性が判断されます。5ミリ以上で年齢が70歳以下であれば治療が推奨されますが、最終的には本人の希望を優先します」

 未破裂脳動脈瘤が経過観察になったら、どのぐらいの頻度で検査が必要なのだろうか。昭和大学藤が丘病院脳神経外科教授の津本智幸医師はこう説明する。

「2〜3ミリの未破裂動脈瘤であれば、まずは半年後に頭部MRIと頭部MRA検査を実施します。そこで大きさや形状を確認し、とくに大きな変化がなければ1年後と、その後は年に1回のペースで検査します」

 5ミリ未満でも、形状がいびつであったり、破裂しやすい場所にあったり、と破裂リスクが高い場合には治療が検討されることもあるという。

■場所によっては開頭術も有利

 未破裂脳動脈瘤の主な治療法は、くも膜下出血発症時(脳動脈瘤破裂時)の治療と同様に、頭を開いて治療する開頭術とカテーテルによる血管内治療だ。

 開頭術の「開頭クリッピング術」は、脳動脈瘤の根元部分をチタン製などの金属のクリップで挟んで破裂を防ぐ治療法だ。根治性が高く、再発リスクの低い治療とされている。

 血管内治療の「コイル塞栓術」は足の付け根の太い血管からカテーテルを入れ、X線透視画像を見ながら、脳の血管にまで到達させ、動脈瘤の中に極細のコイルをくるくると詰めていく。これにより、動脈瘤内の血液が血栓化して血液が流れ込まなくなり、脳動脈瘤の破裂を防ぐ。

 この血管内治療のデバイスや技術の進化は近年目覚ましく、からだに負担の少ない血管内治療で未破裂脳動脈瘤のほとんどが治療できるようになってきている。森本医師は血管内治療のメリットについてこう話す。

「開頭手術は一回の処置で根治性が高いのがメリットですが、頭を開くため、からだへの負担も大きい。血管内治療は開頭術よりも傷が小さく、からだの負担が少ないため、治療後の回復も早いです。後者は比較的高齢な患者さんでも治療が可能ですし、入院日数も開頭術の場合は約1週間ですが、血管内治療なら約4〜5日と短めで済みます」

 血管内治療技術の進歩に伴い、開頭術は減少傾向にあるものの、治療法として確立されていることもあり、脳動脈瘤の場所によっては開頭術のほうが有利な場合もある。

「血管の末梢の動脈瘤やこめかみ付近の中大脳動脈の動脈瘤では、カテーテルで血管内からたどるよりも開頭したほうが届きやすい。“ネック”と呼ばれる脳動脈瘤の入り口が広い場合も、コイルが正常血管に逸脱しやすいため、開頭術が選択されることがあります」(津本医師)

■持病の治療が優先な場合も

 動脈瘤と正常血管の境界が広い動脈瘤の場合、正常血管に金属の筒状の“ステント”を留置してコイルの逸脱を防ぐ「ステント併用コイル塞栓術」も登場している。

 また、境界部分の広い大きめの動脈瘤の治療で新たに普及し始めているのは「フローダイバーター」だ。動脈瘤の入り口を覆うように正常血管に特殊な細かい網目構造のステントを留置し、動脈瘤内への血液の流入を防ぐことで動脈瘤を血栓化できる。

 ただし、フローダイバーターは主に血管全体が膨れる紡錘状動脈瘤に適した治療だ。細い血管では血管内に血栓ができて詰まってしまう恐れがあるため、比較的太い血管に留置する必要がある。「10ミリ以上」という動脈瘤のサイズの適応制限もあったが、2020年以降は5ミリ以上でも実施可能になった。

「留置したステントは治療後約半年で内皮細胞に覆われ、血管と一体化し、動脈瘤は完全に閉塞されます。根治性が高い治療です」(同)

 ただし、フローダイバーターには高い技術と専用の設備が必要なため、治療できる病院は全国にまだ約80施設しかない。

 また、こうした金属製のコイルやステントには血栓が付きやすく、血栓症の予防のために術後は数カ月〜1年ほど血液をサラサラにする抗血小板薬の内服が必要だ。ステント併用コイル塞栓術やフローダイバーターの場合は1年以上、内服できることが治療条件のひとつとなる。

「他疾患の手術を控えている人や子宮筋腫や胃潰瘍などで出血しやすい人など、抗血小板薬の内服が長期にできない場合、持病を治してからの治療になります。医師と相談して、最適な治療を選択してください」(同)

 脳動脈瘤治療については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイト「手術数でわかるいい病院」で無料公開しているので参考にしてほしい。https://dot.asahi.com/goodhospital/

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(文・石川美香子)

※週刊朝日2021年8月6日号より

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