『コード・ブルー』は「共感ポイント多い」! 『TOKYO MER』『Night Doctor』放送の今振り返る、医療ドラマのヒット作

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2021年08月01日 23:01  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 連日、各局で東京オリンピックの生中継が行われる中、今期も個性豊かな連続ドラマが放送されている。初回の世帯平均視聴率ランキングを見ると、女優・天海祐希が主演を務める人気作『緊急取調室 第4シリーズ』(テレビ朝日系)が14.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を獲得し、今期第1位の成績を収めた。

 続く第2位は、鈴木亮平主演『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)で14.1%、第3位は波瑠が主演を務め、田中圭、King&Prince・岸優太、岡崎紗絵、DISH//の北村匠海がメインキャストに名を連ねる『Night Doctor』(フジテレビ系)で13.4%という結果に。『TOKYO MER』は救命救急チーム「TOKYO MER」の奮闘を描き、『Night Doctor』は夜間救急専門の医師「ナイト・ドクター」にスポットを当てていて、どちらも医療現場が舞台となっている。

 そのため、ネット上では「『Night Doctor』より『TOKYO MER』のほうが面白い」「『TOKYO MER』は好みじゃなかったから『Night Doctor』だけ見てる」などと2作を比較する声も上がっているが、どちらも共通して、山下智久主演の人気医療ドラマ『コード・ブルー』(フジテレビ系)と比べられ、「二番煎じ」「劣化版」といった苦言が漏れているようだ。

 『コード・ブルー』は2008〜17年に第3シーズンまで放送されたほか、スペシャルドラマや劇場版まで展開されるほどの人気作。現在もファンから続編を望む声が上がるなど、数ある医療ドラマの中でも圧倒的な存在感を放っている。

 サイゾーウーマンでは過去に、同作に影響を受けて救命救急医になったという中島侑子さんが、作中の“共感ポイント”や、実際の現場エピソードをつづっていた。医療ドラマがしのぎを削っている今、『コード・ブルー』の面白さを再確認することで、『TOKYO MER』『Night Doctor』にも新しい発見があるかもしれない。
(編集部)

(初出:2017年7月17日)

月9『コード・ブルー』はリアル? “現役救急医”が語るドラマより厳しい現場

 7月17日から始まる、山下智久主演の月9ドラマ『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)は、7年ぶりに続編が制作される救急医療を題材とした人気医療ドラマ。新シーズンの放送開始に合わせて、現役の救命救急医である中島侑子さんに、現実にはありえないドラマの演出や、沖縄で救急ヘリに乗った経験について綴ってもらった。

『コード・ブルー』の影響を受けて救命救急医に

 職業を聞かれて「救命救急医」と答えると、「コード・ブルーみたいな感じ?」「救急に新垣結衣ちゃんみたいな女医さんいるの?」とよく聞かれる。

 『コード・ブルー』のファーストシーズンが放映された2008年は、ちょうど私が研修医の頃。医師になりたてだった私にとって、ドラマに出てくる医師たちは、「少し先輩」にあたる設定だった。彼らの一喜一憂や気持ちの機微に「うんうん」と強く共感したり、すごいスピードで成長する彼らに憧れを感じるとともに、自分と比較して一種の焦りを覚えたりもした。

 毎回、胸が熱くなるストーリーやドラマチックな展開にワクワクし、時には涙しながら見た。そして翌日は、研修医部屋(研修医だけの待機室のようなもの)で「昨日見た?」と同僚とのドラマ談義に花を咲かせたりもした。

 あれから約10年。まさか自分が救急医の道に進もうとは、あの頃は想像もつかなかったが、15年4月から12月まで沖縄で働いていた時は、彼らのように救急ヘリにも従事していた。ドラマでは災害時の出動の様子がよく描かれているが、私も国際緊急援助隊の医療チーム(海外で災害が起き、被災国から派遣の要請があった時に派遣される救急医療を行う日本のチーム)に登録し、災害時に備えて研修を受けている。

 私のこれらの選択は、少なからず『コード・ブルー』の影響を受けているようにも思う。「どんな状況下でも何かができる」彼らを見て「かっこいい!」と思ったからだ。

 一方で、「医療系のドラマを見てて『これないわー!』と思うことある?」という質問をされるのも日常茶飯事。正直に言うと……ある。研修医の頃は、ドラマを見ても「これはある、これはない」と言えるほどの現場経験がなかったが、今はドラマを見ながら、時々ツッコミを入れたりしている。

 例えば、爆発の危険があるトンネルの中で医療行為を続けるシーン。実際の災害現場では、現場の安全が確認されてから医療スタッフが中に入るはずだし、途中で安全が脅かされれば、一旦撤退するはずだ。ドラマ的には“感動的なシーン”なのだと思うけれど、1人の命を救うために複数人の命が消えるなんてことは、現実にはあってはならないことなのだ。

 そうは言っても、『コード・ブルー』は共感ポイントが多いドラマだった。例えば災害時のトリアージ問題。

 災害時など、たくさんの傷病者が同時に出た場合、傷病者の緊急度や重症度に応じて治療優先順位を決める。その時に使うのがトリアージタグで、通常、傷病者の右手首に巻きつける。赤色は最優先で病院に搬送する群、黄色はその次、緑色は軽症、黒色は死亡しているか救命不能と判断される群。

 医療スタッフも機材も限られる災害時は、できる限り多くの命を救うために、このトリアージがとても重要な意味を持つ。だが、実際目の前で「黒タグ」をつけられた人は見捨てられたように感じるだろうし、つけた側も見捨てたような気持ちになるかもしれない。『コード・ブルー』でもそのような場面が描かれていて、私はどちらの気持ちにも共感した。だが、もし同じような場面に遭遇したら、医者として、感情に流されずにきちんと判断しないといけないな……と改めて覚悟を決めた。

 また、「救急に新垣結衣ちゃんみたいな女医さんいるの?」という質問の答えは、「何ともいえない」だ。救急医の中で女医はかなり少ない。というのも、やはり「大変そう」というイメージが前面に出ているからだと思う。実際私が「救急医になる」と周囲の友人たちに告げた時も、「なんであえてそんな茨の道を選ぶの?」とか「本当に自分に厳しいね」と言われた。

 実際働いてみて、確かに「大変」な面はあるが、それ以上にやりがいがあり面白い。救急は1次、2次、3次と種類が分かれており、数字が大きいほど重症度が増す。3次救急(最重症)しか来ない病院もあれば、逆に3次救急は来ない病院もある。私は、東京のど真ん中の大学病院、沖縄の大学病院、沖縄北部の救急ヘリ、長野の病院と勤務経験があるが、「救急」とひとことで言っても地域や病院によって全然違う。1分1秒を争うような現場もあれば、病院まで歩いてきたお爺さんやお婆さんと談笑しながら診察することもある。

 全ての機器が揃った大病院での診察と、持っていける機器やスタッフが限られる救急ヘリでの医療も全く違う。ヘリの要請があってから現場に向かう時、患者さんの年齢も性別もわからないこともあれば、「浜辺に子どもが倒れている」という情報しかなかったこともある。ヘリに乗りこみ、息を飲むような美しい沖縄の海を眺めながら、あらゆる可能性を考え、対応をシュミレーションする。

 崖から落ちた外国人観光客の救出を、医療スタッフと救急隊と米軍海兵隊とみんなで力を合わせて行ったこともある。そうなると、医療スキルだけではなく、コミュニケーション能力、語学力、瞬発力、非日常的な空間の中で取り乱さない冷静さなど、さまざまなことが求められてくる。

 『コード・ブルー』サードシーズンには果たして、どんなドラマが待ち受けているのだろうか。私も楽しみにしている。

中島侑子(なかじま・ゆうこ)
救命救急医。旅行医学会認定医。1982年、東京生まれ。2007年3月、山口大学医学部医学科を卒業し、同年4月より東京都内で研修医として勤務。09年4月、研修医修了後、世界一周旅行に出発。12年8月の帰国後、全国の学校やホール等で講演会、写真展を多数開催。観光庁の依頼で「若旅プロジェクト」DVD作成にも従事。13年10月から東京の大学病院で救命救急医として勤務。15年4月からは沖縄で救命救急医として働きながら、日本初のNPO運営による救急ヘリに従事。16年1月からは長野の病院で救急立ち上げに従事。また、旅行医学会認定医として、原稿の執筆、海外赴任や旅行のためのアドバイスも行う。ブログ

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