侍ジャパン・岩崎優のすごさを大学時の恩師が解説。決して速くない直球が打たれないワケ

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2021年08月02日 11:21  webスポルティーバ

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 岩崎優(阪神)といえば、学生時代、神宮第二球場のマウンドで、地を這うような重心の低いフォームで黙々と投げ込んでいた姿が目に浮かぶ。

 当時、東都大学2部リーグだった国士舘大の岩崎の"仕事場"といえば、神宮第二球場がほとんどだった。そのネット裏に、国士舘大の試合になるといつも目を凝らして岩崎のピッチングを見ている人物がいた。阪神の中尾孝義スカウト(当時)だ。

「左腕は必ずしもすごいピッチャーじゃなくていい。タイミングが難しいとか、球筋が見えにくいとか、"打ちづらい"っていう要素とコントロールがあれば十分戦力になるんです。その代表格のようなピッチャーが岩崎です。今は135キロ前後ですが、アベレージで140キロ出せるようになったら、誰も打てないですよ」




 2013年の秋、阪神は岩崎をドラフト6位で指名した。

 入団から3年間は先発ローテーションとして経験を積み、プロ4年目からは中継ぎの一角を担って毎年40試合以上に登板。とくに2019年、2020年は防御率1点台という圧倒的な存在感を放ち、東京五輪の日本代表入りにつながった。

「球持ちがよく、打者寄りのギリギリの位置でボールを放てるメカニズム......あれはもう天性としか言いようがないですね」

 そう語るのは、当時、静岡の無名左腕だった岩崎を見いだし、大学4年間指導した永田昌弘監督(現・国士舘高校監督)だ。

「清水東にちょっと面白そうな左ピッチャーがいますよ」

 そう教えてくれたのは、現在、ノースアジア大学明桜高校(秋田)の野球部監督・輿石重弘氏だったという。ちなみに、永田監督と輿石監督が知り合ったのは教え子の結婚式で、この出会いがなければ岩崎はプロまでたどり着けたかどうかわからない。

「高校3年の夏が終わって、国士舘大の練習会に岩崎が来たんです。その日、たまたま一緒だったのが、帝京五高(愛媛)の平井諒という速い球を投げるピッチャーだったんです」

 その年、平井はドラフト4位でヤクルトに指名され入団。11年間在籍して5勝を挙げ、今季からは四国独立リーグの愛媛マンダリンパイレーツでプレーしている。

「岩崎と平井がブルペンで並んで投げたんです。平井は最速149キロだったのですが、岩崎は130キロ前後。でも、キャッチャーのうしろやバッターボックスに立つ、どう見ても岩崎のほうが速いんです」

 そういえば、ボールの回転数など、いわゆる"ボールの質"を計測して数値化する「トラックマン」によると、今の岩崎のストレートは、実際は140キロ程度だが、「体感スピードは150キロ台」になると以前聞いたことがある。岩崎のボールについて、永田監督が説明する。

「体を沈めるようにして、大きく足を踏み出し、体重移動に時間をかける。左手に持ったボールが体に隠れる時間も長く、バッターは出どころがわからない。そこから最後の最後で体を一気に切り返して投げてくるから、バッターはタイミングが取りづらく、差し込まれてしまう。すごく速く見えるのは、この球持ちのよさがあるからです」

 初めて対戦する外国のチームに、岩崎のボールがどこまで通用するか楽しみだと永田監督は言う。

「大学の時はいろいろありましたからね。2年の時にチェンジアップを覚えて、三振をたくさん奪えるようになったんですけど、緩急差を出そうとして腕の振りが緩んでしまって......。『それだと一部に上がった時に通用しないよ』とダメ出ししたこともあったし、3、4年の時はチーム事情もあってなかなか勝てなくてね。それでも岩崎の持ち味を生かしていけば絶対プロでも活躍すると、ずっと思っていました」

 岩崎が指名された年、阪神がドラフト1位で指名したのが同じ大学生左腕の岩貞祐太(横浜商科大)だった。

「岩貞くんもいいピッチャーですけど、先に戦力になるのは岩崎のほうかもしれないって、ずっと思っていました」

 確固たる根拠はなかったが、永田監督はそう感じていたという。

「マウンドに上がればポーカーフェイス。普段もそんな感じで、シャイで、マイペース。投げる前の日にはひとりでグラウンドの周りを散歩していて、『どうしたんだ?』って聞いても、ボソッと『気分転換です』としか言わない。人によっては無愛想と思われるかもしれませんが、それがあいつなんです」

 そんな人柄はプロ野球選手になっても変わらないと、永田監督は語る。

「人気チームの中継ぎの切り札ですから、チヤホヤされることもあるんでしょうけど、学生の頃とまったく変わらないです。オフになるとグラウンドに来てくれて......こっちが激励の言葉をかけても『ありがとうございます』とか『よろしくお願いします』とか、単語が返ってくるだけで大きなことは言わない。地味だけど、浮ついたところもなく、地に足がついている感じがします。彼のピッチングそのままって思いますね」

 永田監督は岩崎に対して、こんな思いを抱いている。

「気のせいかもしれないけど、今年の岩崎を見ていて、ボール1個分ぐらいゾーンが高くなってないかなって......そこだけが心配なんです。この4年間で200試合以上投げて、そのほかにもブルペンで投げているでしょ。実際に投げている球数はすごいはずです。蓄積疲労でなければいいんだけど......」

 まさに、育ての親ならではの視点。そして最後にこうエールを送る。

「自分から弱音を吐くようなヤツじゃないし、壁にぶち当たっても自分で乗り越え、次の目標に向かっていける強さはあると思います。そういう意味でも、今回のオリンピックという機会を大きなチャンスにしてほしいですね」

 コツコツと地道にグレードアップしてきた左腕が、30歳の節目を迎えた今、新たな関門に挑もうとしている。

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  • 見た目は優男なんだけどね。プロ入りしてから年俸のダウンがない、いかに安定してるかだよ。
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