“大往生”は長野、婚姻は北海道勢…“生き残れる”市区町村はどこだ!

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2021年08月02日 11:30  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (GettyImages)
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 超高齢化時代に突入し、その地域で安心して暮らし続けられるのか。そこで今回、将来の担い手である若い世帯や子どもが誕生して“生き残れる”市区町村ランキング100を独自集計した。がんや心疾患で亡くなる人が少なく“大往生”しやすい自治体もまとめた。

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 少子高齢化の加速は、地域の人口構成をがらりと変え、活力を失うばかりか、将来的な行政サービスの存続すらも危うい。だからこそ逆に、若い世帯や子どもたち、つまり「将来世代」が増えている自治体はどこか。

 本誌編集部はそれを探るため、総務省統計局による全国1741市区町村のデータをもとに独自に集計した。まずは、死亡者に対して生まれる人が多い割合をはじき出した。参考までに、この割合を10年前(2009年度)とも比べてある。

 上位で目立つのは、離島や東京都心部だった。 

1位は東京都小笠原村の2.556。人口約2600人の島では「出生数は毎年そんなに大きく変わらない」(村担当者)。11年には世界自然遺産に登録。観光業に携わる人も目立ち、移住する若い世代も少なくない。島のため高齢化が進むイメージもあるが、都内の市区町村で、平均年齢40歳前後という若さはトップ級だ。

 2位も離島の沖縄県北大東村。「“Iターン”や“Uターン”によって19年度は出生数が例年に比べ多かった」(村担当者)というが、「そもそも死亡数が少ない」(同)事情もある。島に老人ホームなどがなく、入所したい人は島外へ出て住民票も移してしまうのだ。3位は沖縄県南風原町。那覇市に隣接のベッドタウンとして人が増える。

 4位は東京都中央区。10年前の1.3倍だ。交通アクセスの良さからマンションが相次ぎ建設され、人口も急上昇。「新しいマンションの購入層は20代、30代が多く、これから子どもを産む世代が増えている」(区担当者)。日本の65歳以上の人口比率は19年で28.4%だが、中央区は「15%を下回る水準」(同)という。

 5位の愛知県長久手市は名古屋市のベッドタウン。15年の国勢調査では、平均年齢38.6歳で“全国一若いまち”に。今年6月末でも40.5歳といい、「人口は昨年6万人を突破。ずっと増えている自治体はあまりない」(市担当者)。

 新しい世帯の誕生も見逃せない。将来的に家族が増える可能性も大きい。そこで、19年度の婚姻件数から離婚件数を差し引いた数値を出し、さらに10年前(09年度)と比較した。

 上位は北海道勢が占めるなど地方が多かった。離婚が少ない事情もあるが、子育て支援が充実している点も注目したい。

 1位は北海道比布町。人口約3500人で、旭川市に隣接する“スキーといちご”の町だ。移住や定住のための支援をはじめ、最大150万円の子育て支援金制度や、高校生まで実質無料の医療費助成制度などがある。

 2位は旭川空港がある北海道東神楽町。15年の国勢調査では人口増加率10.1%と道内トップ、全国でも有数だった。「北の子ども王国・東神楽」を掲げ、子育て支援などに力を入れる。

 北海道以外の上位では、5位に福島県昭和村、6位に福島県新地町、奈良県天川村がランクインした。

 大都市圏は当然ながら婚姻件数こそ多いものの、増えた割合となると下位に沈みやすい。それでも81位の東京都墨田区、84位の東京都千代田区はそれぞれ約1.5倍に増えて“健闘”した。

 ちなみに、19年度の転出者数における転入者数の割合では、1位が愛知県飛島村で1.969。19年度の財政力指数もトップで日本一リッチな村でもあり、子育て支援などが充実する。

 2位は長野県川上村の1.9155。ベトナムなどから外国人の農業実習生を受け入れているのが背景だ。3位は大阪府島本町の1.8085。大阪市や京都市へもアクセスが良く、「もともと水がきれいで、日本名水百選の一つ」(町担当者)。4位は滋賀県多賀町の1.7515。彦根市に隣接し、近年は新興住宅街も整う。町は固定資産税を一定額助成するなど支援もしている。

 この世に生まれれば、やがて訪れる死。長寿国・日本でまさに“生き残り”のヒントとして、死因別からも市区町村をランキング化した。もちろん、生活習慣や体質など個人の事情に左右される部分は大きいが、地域性なども知っておきたい。

 厚生労働省が6月発表した人口動態統計(概数)によると、20年の日本人の死因は「悪性新生物(腫瘍[しゅよう]」(全死亡者の27.6%)、「心疾患(高血圧性を除く)」(同15%)、「老衰」(同9.6%)などの順に多かった。

 このため、全国状況をまとめた厚労省データから、直近13〜17年の5年間の平均値を用いて「がん(悪性新生物)」「心疾患」は亡くなった人の割合が少ない順に、「老衰」は反対に多い順に、それぞれ独自集計。誌面の都合上、男女上位50とした。なお、各死因の死亡者が5人未満と少ない市区町村は、もとのデータでも省かれているので対象からは外した。

 がんで亡くなる人が少なかったのは、男女ともに東京都小笠原村がトップ。男性は2位が富山県舟橋村、3位が三重県朝日町、女性は2位が愛知県長久手市、3位が石川県川北町だった。

 小笠原村の担当者は好成績だった理由について「住民向けの健康診断事業に力を入れている」(医療課)と分析する。

「離島なので最先端の治療ができるわけではない。しかし、40歳以上の住民を対象に、無料健診をしたり、医師や看護師ら健診団の来島のタイミングに合わせて企業関係者向けの職域健診を実施したりするなど、多く健診を受けられるように努めてきました」

 がんは早期発見・早期治療が大事だ。村の健診は胃カメラなど最初から項目を増やして実施する。医療のハード面の不利を逆手にとった態勢が奏功しているようだ。

 心筋梗塞(こうそく)や心不全など心疾患で亡くなる人が少なかったのは、男性トップが福岡県新宮町、2位が同県粕屋町、3位が愛知県みよし市。女性は1位が宮城県富谷市、2位が福岡県新宮町、3位が愛知県長久手市。

 女性トップの富谷市は仙台市に隣接するベッドタウンだ。富谷市は「政策として『これだ』という決め手があるわけでなく、地道な取り組みの積み重ねによるもの」(健康推進課)としつつ、「この地域は血圧の高い市民が多い傾向がありますので、職員が出向く介護予防教室や、行政と市民のパイプ役を担う健康推進員を増やすなどして、健康づくりや病気の予防に努めています」。同市は、がんの項目でも上位に食い込んだ(男性10位、女性12位)。

 老衰を多い順で集計したのは、死因となる病気がなく“大往生”を遂げたと、とらえることができるからだ。寿命を市区町村別に詳しく分析できないものの、天寿を全うしたとみなしてみた。

 老衰で亡くなる人が一番多かったのは、男性が長野県根羽村、女性が同県泰阜村だ。根羽村は「介護予防の充実」(住民課)、泰阜村は「在宅福祉を支える態勢の強化」(住民福祉課)に力を入れている。

 長野県南部、天竜川沿いの山間にある泰阜村は女性1位に輝きながら、男性でも2位だった。長年、在宅福祉を重視し、村内の高齢者は月4回まで1回あたり500円で自宅で診療が受けられるといった独自策を展開。“福祉の村”として定評がある。

 ランキング上位には長野県勢が目立つ。同県は国勢調査などをもとにした厚労省の「都道府県別生命表」(15年)で平均寿命が女性1位(87.67歳)、男性2位(81.75歳)。“ご長寿県”を裏付けた形だ。

 とくに県南西部にあり、愛知や岐阜と接する根羽村は、村おこしのため医療や福祉だけでなく、林業や酪農の振興、「山村留学」や「オンライン婚活」の支援といった住民サービスの向上にも取り組む。村外への情報発信も積極的で、移住を考える人も増え、20年には年間を通じて転入数が転出数を上回る「社会増」を30年以上ぶりに実現した。

 超高齢化や過疎化で、市区町村も生き残りをかけて待ったなしの対応を迫られる。今回のランキングも終(つい)のすみかさがしの一助にしてほしい。(本誌・浅井秀樹、池田正史)

※週刊朝日  2021年8月6日号

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