高校野球史上初の東京ドーム開催。選手たちは何を思い、監督たちはどう対策を立てたのか

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2021年08月02日 11:31  webスポルティーバ

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 屋外球場よりも、明らかに音が大きく反響する。東京ドームで金属バットの「キィン!」という打球音を聞くこと自体、新鮮に感じられた。

 2021年夏の高校野球・東西東京大会は、東京五輪の影響で神宮球場が使用できなかった。そのため、7月31日からの準決勝以降で高校野球として初めて東京ドームを使用することになった。

「(準々決勝の)狛江戦で勝った時に『やった、これで東京ドームが決まった!』って、夢のような感覚でした」

 そう語ったのは、16年ぶりに準決勝進出を決めた世田谷学園の主将・石郷岡一汰である。東京の高校球児にとって学生野球の聖地・神宮球場でプレーするのは、ひとつのステータス。だが、神宮球場が使えない今夏に限っては、東京ドームという非日常空間で野球ができる喜びがあった。

 甲子園常連校の日大三も、東京ドームで試合をするのは初めて。百戦錬磨の小倉全由監督は言う。

「やっぱり天井が見づらいので、『みんな、気をつけてやろうな』と声をかけました。自分なんか、フライが飛んで上を見るとボールが見えなくなっちゃうなぁ......と感じていました」

 東京ドームの天井は白っぽい色をしており、快晴のデーゲームでは天井近くまでフライが上がると打球を見失いやすい。プロ野球、社会人野球、大学野球と東京ドームのデーゲームで野手がフライを見失うシーンは珍しくない。平凡なフライが試合の結果を左右しかねないだけに、各校とも試合前にはフライ対策に注力していた。

 とくに入念な準備をしていたのは、西東京の優勝候補・東海大菅生だ。試合前のシートノック終盤になると、どのチームもフライを何本も打ち上げる時間帯がある。東海大菅生はなんと28本ものフライを打ち上げ、打球の見え方をチェックしていた。若林弘泰監督は言う。

「自分も外野で見てみましたが、こんなに見づらいんだな......と。ノック時間が(従来の7分間から10分間に)増えた分は、全部フライに費やしました」

 東海大菅生と世田谷学園が戦った準決勝第2試合は、14時27分試合開始。15時から16時にかけて、東京ドームの天井付近がもっとも見づらい時間帯になる。実際に、世田谷学園の野手が高いフライを見失うシーンもあった。

 日大三を破って決勝戦に進出した國學院久我山では、野手の間である約束事が立てられたという。右翼手の内山凛が説明する。

「これまでは正面のフライならそのポジションの選手に任せていましたけど、今日は正面のフライでも周りの野手が追っていくことにしました。もし選手が打球を見失っても、周りがカバーする意識を持とうと」

 そんな内山だが、冷や汗をかくシーンがあった。4対3と1点リードで迎えた9回表二死一塁、内山はライトに飛んできたフライを「一瞬見失った」という。

「途中で見失ったんですけど、最初に落下点だと思った位置まで追ってきたところにボールが落ちてきたのでキャッチできました。ホッとしましたね......」

 もし内山が落球していれば、試合はさらにもつれたに違いない。まさに紙一重のプレーだった。

 東京ドームのポイントは天井だけではない。現役時代に日立製作所や中日の投手として東京ドームのマウンドを経験した、東海大菅生の若林監督は言う。

「私たちの頃よりマウンドの土が硬くなっています。教え子の高橋(優貴/巨人)は『投げやすい』と言っていましたが、実際に見てみたら、こんなに硬いんだなと」

 東海大菅生は世田谷学園に8対0とリードした7回表、コールド勝ち寸前でエースの本田峻也を投入している。本来なら8回から継投する予定を前倒しした理由を、若林監督はこう説明する。

「本田は初めての球場が苦手なので、マウンドを経験させてやりたかったんです。硬いマウンドは本田のフォームに合うとは思いますが、やはり勝手が違うでしょうから」

 東京ドームならではのさまざまな注意点はあるとはいえ、それも球場の特性と思えば大きな問題ではない。選手の健康面だけを考えれば、夏の大会を東京ドームで開催することはメリットが大きい。

 真夏の太陽にさらされることなく、空調の効いたドーム球場でプレーできれば、故障や熱中症のリスクが軽減される。観戦者の体力的な負担も小さくなる。

 神宮球場が使える来年以降も、東京ドームを活用できるなら理想だろう。たとえば準々決勝、準決勝で東京ドームと神宮球場を併用し、決勝を神宮球場で開催してはどうか。選手の疲労軽減だけでなく、東京大会の新たな魅力開発にもつながるはずだ。

 ただし、疲労に関してはこんな声もあった。世田谷学園のエース右腕・建守伯は7月28日の準々決勝・狛江戦では屋外の府中市民球場で延長13回を投げ切り、中2日で迎えた準決勝は東京ドームで6イニングを投げた。だが、試合後に疲労感を尋ねると建守はこう答えた。

「狛江戦のあとは疲労感が全然なかったんですけど、今日は正直言って疲れました。(東海大菅生の)打線の圧もあったのかなと思います」

 選手にとっては、チームの勝利が何よりも大きな栄養剤になるということだろう。

 8月2日には、東西東京大会の決勝戦が同日に行なわれる。初めて東京ドームで優勝の喜びを爆発させるチームはどこなのか。歓喜の瞬間は間もなく訪れようとしている。

このニュースに関するつぶやき

  • オリンピックが炎天下で高校野球がドームてどないなっとんねん(笑)
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  • あれっ?観客入れて試合してんの? https://mixi.at/acWoxna
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