重症者が減っても…感染者急増で医療崩壊の危機 都医師会会長「感染の嵐」を懸念

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2021年08月04日 08:00  AERA dot.

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写真尾崎治夫(おざき・はるお)/1951年、東京都生まれ。順天堂大学卒、医学博士。東京都医師会副会長を経て、2015年から現職。東京都東久留米市で「おざき内科循環器科クリニック」を開業 (c)朝日新聞社
尾崎治夫(おざき・はるお)/1951年、東京都生まれ。順天堂大学卒、医学博士。東京都医師会副会長を経て、2015年から現職。東京都東久留米市で「おざき内科循環器科クリニック」を開業 (c)朝日新聞社
 オリンピック開催中の東京を中心に全国で感染拡大が止まらない。尾崎治夫・東京都医師会会長は「重症患者が増えなくても感染急増で医療崩壊」と警告する。AERA 2021年8月9日号から。

【写真】五輪中止を求めるデモの様子

*  *  *
――東京都の新規感染者数が過去最多を更新し続けている。7月29日までの1週間平均は2224.1人で、その前週の平均の1.6倍以上になった。これまでにないスピードの増え方だ。

 4度目の緊急事態宣言が出ているにもかかわらず感染が急拡大しているのは、ウイルスがより感染力の強い変異株に置き換わりつつあるのに、人の流れが十分に減っていないからです。

 変異株「デルタ株」の感染力は、従来のウイルス株より2倍近く、第4波で流行した「アルファ株」より1.5倍程度強いとされています。都内では少なくともウイルスの半数がデルタ株に置き換わっています。

 それに対し、人流は今回の緊急事態宣言の前に比べ2割程度しか減っていません。デルタ株の感染力を考えれば5割以上減らないと感染拡大は防げません。

 人流が十分に減らない原因はオリンピック開催と、政治家の発言です。

 これまでの努力を結実させているアスリートの方たちをみれば、開催にも良い面はあったと思います。しかし、新型コロナウイルス対策にとっては負の側面ばかりです。都民をはじめ国民は、自分たちの盆踊りやイベントも中止になっているのにオリンピックは開催されている現状をみて、「オリンピックが開けるなら出歩いてもいいだろう」という心境になっている方が少なからずいると推測できます。

■現場を丹念に見て

 しかも、菅義偉首相や小池百合子都知事は、「人流は減少している。心配はない」「高齢者のワクチン接種が進んでおり、(都内が医療崩壊寸前になった)第3波の時とは状況が異なる」などと発言しています。それを聞けば、国民がますます「ならば自粛しなくていい」と思っても仕方ないでしょう。

 確かに高齢者のワクチン接種は進んでいます。しかし、40代や50代も重症化します。都のモニタリング会議や政府の分科会の専門家は皆、医療体制の逼迫の危険性を訴えています。政府や都の責任者は専門家の声にきちんと耳を傾けるべきです。

――吉村憲彦・都福祉保健局長は27日、「医療提供体制がにっちもさっちもいかなくなる現状はない」と記者団に説明した。

 現場を丹念に見てほしいと思います。数字だけ見れば、新型コロナウイルス患者の受け入れベッドが5967床あるのに対し29日の入院患者は3039人、うち重症患者受け入れベッドは392床、入院は81人ですから、余裕があるようにみえます。

 しかし、かつてない勢いで感染者が急増しているために入院の受け入れが間に合わなくなっています。感染者用ベッドが30床あってうち15床空いている病院が、今日1日で新規に15人受け入れられるかといえば、それは難しい。医師や看護師ら医療従事者が足りないからです。

■都は方向転換したよう

 政府や都は、重症者が減ってきているから医療提供体制は逼迫しないと言いますが、そんなことはありません。

 最近、中等症の患者が増えてきています。中等症でも酸素投与の必要な人がいて、容体が悪化すれば人工呼吸器などで対応しなければならないために医療従事者は目を離せず、中等症とは言え、医療機関への負荷は小さくありません。

 都内では入院先が見つからない感染者が増えています。入院先や、宿泊療養施設での療養を調整中のため、自宅で待機している人が29日現在、5575人に達しています。

――都は医療機関に対し、救急医療や一般診療を縮小したり手術を延期したりするなど通常医療を制限することも視野に入れて、新型コロナ感染症患者の受け入れが可能になるような医療提供の確保を要請した。

 都は少し前まで都医師会と一緒に、都内の医療体制を守り、新型コロナウイルスにも他の医療にも対応しようとしてきたのに、都は最近、方向転換したようにみえます。

 医療は新型コロナウイルス感染症の治療だけのために必要なのではありません。今の季節、高齢者を中心に熱中症で具合の悪くなる人が増えています。早く適切に対処しなければ命にかかわりますが、通常医療を制限すれば、熱中症患者の受け入れができなくなる恐れがあります。

 都内では実際に、救急搬送が必要な患者さんについて、救急隊が5カ所の医療機関に受け入れを要請するなどしても搬送先が決まらない件数が急増しています。20日には過去7日間の平均で62.0件だったのが、28日には同93.3件と1.5倍になりました。

■医療政策は科学的判断

 また、かなり進行した状態でがんが見つかる患者さんも増えてきています。昨年来、検診を受けるのを控えていた人が少なくないからです。こういった方たちも、早く治療をしなければ手遅れになります。

 糖尿病や高血圧といった生活習慣病などはふだんからきちんとコントロールしておかないと、新型コロナウイルスに感染した時に重症化しやすくなります。

 医療政策は目先のことだけをみてとるのではなく、幅広く総合的に目配りし、科学的に判断した上で決めるべきです。

――内閣府によると65歳以上の高齢者のワクチン接種率は30日現在、2回終了が73.1%、1回接種は85.7%に達した。

 若者も含めた接種対象者全体でみれば2回終了した人は3割、1回も4割程度にすぎません。

 国民が広くワクチン接種を終えたのでかなり安心できる、という話ができるのは早くても10月か11月でしょう。今はそんな話ができる状況ではありません。それなのに、高齢者のワクチン接種が進んだから第3波とは違う、といった誤ったメッセージを政治家らは出している。

 今は安心できるどころか、全国に感染の嵐が吹き荒れるのを防げるかどうかの瀬戸際です。

(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年8月9日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • とキチパヨが申しております���ޥ��� 東京医師会長の政治的スタンスが発掘されネットで話題に www http://seikeidouga.blog.jp/archives/1079244947.html
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  • もう心配なさそうだね。利権団体の「医師会」もそろそろ限界だな。感染拡大しても熱が出るだけなら解熱剤で終わり。中等症でも治療薬投与で終了。騒ぐだけ馬鹿らしい。 https://mixi.at/acYUvRT
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